<韓国ドラマのリメイク>フジテレビ『グッドドクター』 は自閉症をどう描くか

7月18日(水)7時30分 メディアゴン

高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事]

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また、自閉症者を主人公にしたドラマが始まりました。フジテレビ木曜よる10時の『グッドドクター』です。

「自閉症者が社会で共生していくために、みんながよく分かっていない自閉症がどんなものか世の中に知らせるにはどうすればいいのか」を研究テーマとしている自閉症研究者の筆者にとっては嬉しい出来事です。嬉しくはあるが困惑することでもあります。

なぜなら、研究者にとっても自閉症者がどういう人なのかが完全には分かっていないからなのです。なんとなくの合意事項はありますが研究者それぞれでも、アメリカ(アメリカ精神医学会)とヨーロッパの研究機関(世界保健機構WHO)でも、全然違います。人(自閉症者本人)を観察すればこれがまた見事に違います。

草なぎ剛主演『僕の歩く道』中居正広主演『ATARU』篠原涼子山口達也主演『光とともに』ともさかりえ主演『君が教えてくれたこと』などが、これまでの自閉症者が主人公のドラマでしたが、皆視聴率は良かったです。

自閉症に関心は高いのならば嬉しいのですが、そうではなくて、自閉症という障害がドラマチックにしやすい要素を持っているからではないかと思います。役者に関する奇妙な符合はとくに気にしなくて良いと思います。

さて、日本で放送された過去のドラマのなかで役者が最も自閉症者像に迫っていたと思うのは二宮和也主演の『マラソン』だと筆者は思います。ご覧になられたでしょうか。

福祉施設に通う軽い知的障害のある自閉症の青年、彰太郎(二宮和也)。母は彰太郎が走ることだけには人より並外れた強い興味を持っていることを発見します。走る時だけは自閉症には見えない息子の姿。母は希望を持って彰太郎に粘り強くマラソンの練習を続けさせることにした、というお話です。実は、このドラマの原作が韓国で出版された「走れ、ヒョンジン!」というノンフィクションなのです。

【参考】<視聴率歴代ワースト2位>NHK大河ドラマ「西郷どん」の残念なスタート

という流れで話を続けると、7月フジテレビドラマ『グッドドクター』もまた、韓国で大ヒットしたドラマのリメイク。脚本家パク・ジェボム氏の オリジナル脚本で、韓国のNHKであるKBSで大好評を博しました。アメリカで先にリメイクされ、今回日本でリメイクされたのですが、筆者には実は気になることがあったのです。

以前見た韓国版『グッドドクター』では『自閉症は治る』障害として扱かわれていたのです。数々の見解がある自閉症ですが、唯一専門家の間で一致しているのは『いまのところ自閉症は治す方法がない』と言うことなのです。見る人にこういう誤解は与えて欲しくないのです。『治る』と主張する人は皆トンデモの範疇なのです。

はてさて、フジテレビ版『グッドドクター』で、主人公の山崎賢人(新堂湊・役)はどんな自閉症者に描かれているのか。

・新堂湊は先天的に知的障がいを伴なわない自閉症スペクトラム障害。
・驚異的な記憶力を持つサヴァン症候群。
・7歳の時にはすでに人体の器官をすべて暗記してしまう。
・さらにあらゆる緊急治療の実践記録などの論文も読み込み、その実際も暗記しているらしい。
・膨大な医学書すらすべて暗記してしまい、医学部を首席で卒業、医師国家試験に合格。
・しかし、自閉症でコミュニケーション能力に欠ける湊に小児外科医という難しい仕事が実地で勤まるのか。

見終わって、『自閉症は治る』とは言っていなかったのでほっと胸をなで下ろしました。

さて、ドラマチックにするための構造は自閉症ドラマの古典『レインマン』に則っていました。『レインマン」のときも、同じ批判がありましたが、瞬間像記憶や驚異的な記憶力というサヴァン症候群を強調するのは「普通の自閉症者」にとってはあまりありがたいことではありません。「普通の自閉症者」はたいていサヴァン的能力など持っていないからです。自分の興味の有ることに特にこだわり、プロ野球選手の名前を全員覚えている人なら筆者も知っています。

だだし、ドラマとしておもしろくしなければならないのだから、サヴァンの強調は許せる範囲です。と思うと、湊が自閉症である必要があるのかということ自体も気になってきました。自閉症ではないサヴァンの人はいます。自閉症でないと、コミュニケーション能力に欠けるという、演じやすくて分かりやすい芝居が出来なくなるということがあるのでしょうか。

それならば「自閉症は、コミュニケーション能力がないのではなく、コミュニケーションの仕方が定型発達者と違い独特である」という線に持っていくとドラマに厚みが出るのではないかと門外漢は思います。

それから、自閉症者には靴紐を結ぶなどの細かい作業が全くもって苦手な人と、逆に、ジグゾーパズルなどの細かい作業が得意な人がいることが知られています。(因みに筆者は前者に分類される自閉症者しか知りません)。湊は外科医なのだから後者ということに簡単にしてしまわない方法を考えれば、何かお話が生まれるでしょうか。

とにかく筆者は次回からも『グッドドクター』に注目します。

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