コロナ禍で「ハーレム」を謳歌する48歳資産家男性の成功思考

7月19日(日)16時5分 NEWSポストセブン

金持ちで無名なら選び放題

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 新型コロナウイルスの感染拡大で日本中がピリピリとした雰囲気に包まれていた4月下旬、ラジオの深夜放送でお笑いコンビ「ナインティナイン」の岡村隆史が、困窮した美女がお金を稼ぐために風俗の仕事を始めるのを楽しみにしようと発言して批判を浴びた。確かに彼の発言は「正しくない」のだろうが、現実はそれとよく似たことが起きているし、数年前から、貧困に苦しむ女性がパパ活や個人売春に手を染めている現実がある。俳人で著作家の日野百草氏が、今回は、自動車愛好家のミーティングで顔なじみとなった48歳地主男性が語る、コロナより選びたい「男の夢」についてレポートする。


 * * *

「このコロナのおかげで、金さえあればアイドルだろうがモデルだろうが選び放題です」


 高級スポーツカーが集う中、関東のとある地域の地主である上条さん(48歳・仮名)は自慢するでなく飄々と語った。彼は地主の子で、ロードサイドチェーンやマンションに土地を貸している。駐車場も含めれば大手サラリーマンの年収など軽く超える額が転がり込んでくる。本当に羨ましい身分で、好きな車やバイクも取っ替え引っ替え、平日の昼間にマニア向けのクラシックカーショップに行くとこういう金払いのいい不労所得者がいたりするものだが、上条さんはまさにそれだ。私が維持するだけでひいひい言っている中途半端に古いだけのサイドカーなど屁でもないだろう。ところでいつもの女性はどうしたのか。


「あれは年食ってるし、結婚しろとかうるさいから別れました」


 上条さんは甲高い声でそう言ってのけた。以前、上条さんは車の愛好家が集まるミーティングに綺麗な女性を連れてきていたが、また別れたようだ。上条さんはこれまでも独身貴族を謳歌してきた。


「いまはもっと若い女の子ですよ、毎日楽しくてしょうがない。車とかバイクよりそっち」


 ひととおりの女遊びはしてもストイックなのが上条さんだったが、最近は若い女の子を取っ替え引っ替えの毎日だという。


「風俗なんかバカバカしいです。いくらでも素人の女の子とつきあえるんです。わかってますよ、いまそういうのは叩かれるって。でもネットの話でしょ、現実は違う。有名人なら叩かれるんでしょうけど、金持ってるだけの一般人が女を取っ替え引っ替えしたって何も問題ない。自由恋愛です」


 そう言い切る上条さん。まるで昔のピカレスク小説の主人公みたいだ。スーパーカーやクラシックカーのマニアにはこのタイプが昔からいる。車の趣味と女の趣味は放蕩者のステイタスだ。趣味は個人の自由、他人の説教など知ったこっちゃない話だろう。


「いままで以上に若くて可愛い子ばかりですよ。もちろん売春じゃないです。恋愛ですよ」


こんな私が、ハーレム小説の主人公のようになった



 上条さんは詳しく話してくれなかったが、紹介してくれるサロンがあるらしい。「パパ活」的なところだろうか。デートをするだけで金銭的支援をしてくれる男性との疑似恋愛をするシステムだが、そうとも言えないという。


「本気の子が多いんです。美少女がよりどりみどり私と付き合ってくれる。もちろんやることやりますよ。まさかハーレム状態になるなんて」


 上条さんは普段から自嘲しているが背も低く頭髪も薄い。


「そんな私が女の子を取っ替え引っ替えだからいいんですよ、自分でもぞくぞくしますね」


 金で女が引っかかる、それも若い女性がよりどりみどり。


「コロナで困ってる女の子ですよ。相場が下がってるどころかこっちの言い値です」


 手っ取り早く稼げる市場に若くてかわいい女の子がなだれ込んで来たということか。


「夢追ってると金かかるし、疲れちゃうんでしょうね。劇団員やら地下アイドルはもちろん、オタクなんで若手声優、コスプレイヤーもウェルカムです」


 私はそちらの仕事も長かったので声優の名前を聞いてみたが、まったく知らない声優だった。上条さんは若手声優と言うが声優の卵、まだこれといった仕事の実績が無い「自称」の類だろう。


「でもね、何やってるかなんてどうでもいいんです。私がたくさんの女の子をよりどりみどりってのがいいんですよ、まさにハーレム小説です」


 ハーレム小説(俗に「ハーレムもの」とも)とは、さえない主人公がたくさんの美少女にもてまくる物語である。多くはライトノベルと呼ばれる若者向け小説だが、漫画でも昔から人気のあるジャンルである。要するに願望であり、ファンタジーである。古典文学ではモテる男が主人公だったのが、現代ではモテない男がモテる作品が主流となった。上条さんはリアルに「たくさんの美少女にモテまくる物語」を生きているということか。


「お金あっての話ですけどね。それはいいんです。資産も私の魅力でしょう。それにお金で愛は買えないとか言いますけど、お金で始まる愛もあったっていいでしょう、割り切りだけじゃなく、実際に恋愛してますよ、私」


 相手の気持ちはわからないが、お金を介在させているから愛がないとも限らない、確かにそんな恋愛もあるかもしれない。


「才能とかお金とか、それと容姿の違いってないと思うんですよ、女の子の好みはいろいろでしょう。才能に惚れたり容姿に惚れたりはもちろん、お金に惚れる女の子だっていますし、それがとっかかりで恋愛が始まったっていい」


 上条さんのポジティブ思考は生まれながらの富裕層ならではだ。その心の余裕は安定と成功を約束する。貧乏人の子は思考からして不安定で失敗を繰り返すとまでは言わないが、富裕層の生まれながらの成功思考にはかなわない。私見だが、年をとってくるとよくわかる。お金プラスそれも上条さんの魅力なのかもしれない。


「私なんかたいしたことないです。資産家の中にはもう女の子なんか飽きたって人もいますよ。だから有名アイドルグループとか、手が届かないくらいの女の子にチャレンジする猛者もいますし、実際に付き合ったりしてます。私は落ちてきた女の子を拾うだけですけど、とんでもない資産家はとことん上を狙います。本当の金持ちにはそういう話も降って来るんです」


 どこまで本当かわからないが、パトロンという意味では昔から存在する連中だ。私も某人気声優のパトロンくらいは知っている。かつての往年の女優とも旧知の仲だが、昔の映画界は「金持ってる男、見つけてこい」と事務所の社長や先輩女優から言われたり、そういう金持ちを紹介されたという。この辺はハリウッドを中心とした「MeToo」運動で批判された事柄そのものだが、是非はともかくエンタメ業界と性は切っても切り離せない、いや男女の仲とは金銭の介在も含めてそれ抜きに語ることは現実問題として無理だろう。そこに男女の違いはない。女の子を買い漁るおっさんも、男の子を買い漁るおばさんも —— 。


「もちろん素人もいますよ、学生が多いですね。お小遣い稼ぎより学費とか生活費かな。美少女ではないけど、素人の若い子ってのがいいんです。教え込むって感じがたまりません」


マンション1棟買って、女の子たちを住まわせようか



 下衆と言ってしまえばそれまでだが、これが現実だ。人間とは他人のことにはひどく道徳的になる生き物だが、誰も清廉潔白に生きてなどいないし、上条さんのような無名の資産家だったとして、欲望を抑え込めるかと言ったら自信はないだろう。口ではどうとでも言える。現にSNSの検索で「パパ活」とでも入れてみるがいい、悪名高い匿名掲示板でもいいだろう、全部が釣りや騙しではない。ネットどころかリアルの秘密サロンでは信じられない性の悪徳が繰り広げられている。それはコロナ禍でも変わらないどころか、より「上玉」が金で手に入り、フィクションのような行為が繰り返されている。お育ちよろしい大学のセンセが吠えてみてもこれは現実である。上条さんたち男はもちろん、少女たちとて肝心の金をくれないセンセの言うことなんか聞きやしない。


「今日の夜も会うんですよ、ワンルーム借りてあげてるんで、彼女の部屋に一泊です」


 上条さんは本当に嬉しそうだ。富豪というわけではない彼だが、ワンルームを借りてやるくらいはわけもないだろう。


「いっそワンルームマンション一棟買って、そこに私の面倒見てる女の子たちを住まわせたいと思ってますよ、冗談じゃなく、マジで」


 なんだか中国の後宮やモンゴル帝国のオルドのようだが、実現したらまさにハーレム、ただ女の子も思惑はいろいろ、上条さんが殺されたりしないことを祈るばかりと冗談めかして言ってみたが、上条さんは笑った。


「それで殺されたら本望ですよ、男の夢です、コロナで死ぬよりそっちを選びます」


 どこまでもポジティブ、羨ましいくらいに欲望を生きている。

 独特のオイルの香りを残して、上条さんの高級スポーツカーは去って行った。そのあとは私と残されたメンバーとで上条さんのヤバい噂話に花が咲いたが、彼ほどではないにしろ若い女の子と最近付き合い始めた男性はいた。性に貪欲かつ金に余裕のある男性にとって、コロナはある意味パラダイスなのかもしれない。


 終戦直後、経済的に困窮した旧華族の娘が成金に貰われた歴史があった。コロナ後もそこまでの社会変動ではないにせよ、市場における女の子の価値は大暴落している。男が悪いわけでもなく、女が悪いわけでもない。心とか愛とか、そんなものを必要としない人もいる。売春防止法や刑法にでも抵触しなければ自由恋愛の範疇だ。お育ちのよろしい方々や潔癖なご家庭の方々には理解できない世界で許しがたいだろうが、価値の暴落した女の子を富裕層がはべらせる世界が存在する。絶望的な敗戦後、美しく散るはずだった特攻隊員は闇屋となり、戦死した兵士の妻は新しい恋を求めた。安吾は「人間が変ったのではない。人間は元来そういうものであり、変ったのは世相の上皮だけのことだ」と『堕落論』に著した。そして「生きよ堕ちよ」と混迷の社会に魂の一石を投じた。このコロナ禍、まさに安吾の書いた世界が再現されている。


 私はそんな世界を嫌悪するが、それでも生きる人間を、ある意味たくましいパパ活の女の子たちを嫌悪しない。これからもコロナによって人生を狂わされる人間がいるだろう。それで儲ける連中も、上条さんのように饗宴を楽しむ連中もいる。それを許しがたいと他人に対してひどく道徳的な人間もいれば、それを綺麗事だと揶揄する人間もいる。人間とはどこまでも自分こそが先に立つ生き物であり、それこそがコロナ禍に露呈した人間の本性である。コロナより怖いのは人間 ──大げさなと思うかもしれないが、金で女を買い叩き、買い叩かれる自由恋愛、これもまた、疫禍に苦しむ世界の証左であり、私たち人間の現実である。


●ひの・ひゃくそう/本名:上崎洋一。1972年千葉県野田市生まれ。日本ペンクラブ会員。評論「『砲車』は戦争を賛美したか 長谷川素逝と戦争俳句」で第14回日本詩歌句随筆評論協会賞奨励賞を受賞。2019年7月『ドキュメント しくじり世代』(第三書館)でノンフィクション作家としてデビュー。12月『ルポ 京アニを燃やした男』(第三書館)を上梓。

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