実写版『アラジン』100億突破! ディズニープリンセスは80年でこんなに変化した

7月20日(土)11時0分 文春オンライン

 朝ドラヒロインの理想のパートナーは誰か? とアンケートを取ったら、ほぼ間違いなくこの人が1位になるでしょう。『あさが来た』の新次郎(玉木宏)さん。


 ヒロイン、白岡あさ(波瑠)が江戸末期から明治、大正にかけて、当時の規範をことごとくぶち破り、女性実業家、日本初の女子大学校の創設者として己の思う道を突き進めたのは、夫である新次郎さんのサポートがあってこそ。


 と、実写版『アラジン』を観てふと思いました。


 公開7週目にして興行収入100億円超えと、まだまだアツいディズニー映画『アラジン』。1992年に公開されたアニメ版をベースに、ガイ・リッチーが監督した今回の実写版は、2017年公開の『美女と野獣』をしのぐ勢いで大ヒット中です。



Amazon『アラジン』サウンドトラックCDジャケット


実写版のジャスミンは”ディズニープリンセス第3形態”


 子どもから大人まで、さまざまな年齢層にリーチするディズニー作品だけあり、観客の視点や感想も多種多様。中でも今回、特に大きく聞こえてくるのが、アニメ版と実写版でのジャスミンの描き方の違い。では、具体的にはどこが違うのか、まずはおもなディズニープリンセスを3つの形態に分けてみます。


 第1形態は1937年にアメリカで公開されたディズニーアニメ『白雪姫』の白雪姫、『シンデレラ』のシンデレラ、『眠れる森の美女』のオーロラ、『リトル・マーメイド』のアリエル。


 第2形態は『美女と野獣』のベル、アニメ版『アラジン』のジャスミン。


 第3形態は『アナと雪の女王』のアナとエルサ、実写版『アラジン』のジャスミン。



 並べてみると、同じディズニープリンセスでもその違いは歴然。第1形態は「王子に“選ばれる”プリンセス」、第2形態は「自分で相手を“選択する”プリンセス」、そして第3形態は「自らの生き方を“掴み取る”プリンセス」。


 『アラジン』アニメ版のジャスミンは第2形態、実写版のジャスミンは第3形態ですが、両者には大きな共通項があります。それは「王女という立場に満足していない」こと。しかし、アニメ版と実写版ではそのマインドが真逆と言っていいレベルで異なっているのです。



アニメ版からキャラクター像がアップデート


 アニメ版のジャスミンは「王女なんてつまらない。自由に好きな場所に行きたい、自分が選んだ人を愛したい」というマインド。かわって実写版のジャスミンは「王女として婿を迎え王妃になるのではなく、自らが国王となって国を統治したい」マインド。つまり、前者は「制度から解き放たれて自由になりたいプリンセス」で、後者は「男性主権の制度を変え、王として国を治めたいプリンセス」。


 この意識の違いこそ、ジャスミンというキャラクターがアニメ版から実写版への移行で、もっともアップデートされたポイントだと考えます。



 ただ、このアップデートにはある“落とし穴”が隠されているのにお気づきでしょうか。


”世間知らず”の若き王女・ジャスミン


 その“落とし穴”とはジャスミンの未熟さ。


 物語の序盤、王女という身分を隠し、市場を歩くジャスミンは、お腹を空かせた子どもたちを見かけ、目の前の店からパンを取り、彼らに与えます。当然、店主はパンの代金を請求しますが、彼女はお金を持っていない。そこで店主に詰め寄られるジャスミンをアラジンが助け、ふたりはアグラバーの街を駆け抜けて……ってこれ、普通にパン泥棒!


 この時のジャスミンの思考はこうです。お腹を空かせた子どもたちが目の前に→可哀想→あら、こんなところにパンが→さあ、これを食べなさい。


 が、パン屋さんだって原材料を仕入れ、労働としてパンを焼き、それを売ることで日々の生活の糧を得ているのです。生きるために。国王となり、民のために働きたいと志を持つ人間がここに気付かず、商品を無断で取ることに罪悪感がないのはマズい。



 また、アラジンが正体を隠してジャスミンの居室に忍び込んだ時に彼女は彼にこう言います。「(政治や世界のことを)本を読んで勉強しているの」。なるほど、そうか、お、おう……。


 王女であるジャスミンは、これまで財布を持ったこともなければ、生活に苦しんでいる人々の声を直接聞くこともなかったのでしょう。そんな若き王女が国王になる……これ、アグラバーにとってなかなかの“冒険”です。



 と、ここであらためて確認したいのがジャスミンの年齢設定。実写版で同役を演じたナオミ・スコットの実年齢は25歳。そのため誤認しがちですが、アニメ版のジャスミンは15〜16歳。実写版で少し年齢を上げている印象があるとはいえ、基本的に彼女はまだ“お嬢ちゃん”。そういえば、アニメ版でおじさん設定だったジャファーが実写版で若くなったのは、ジャスミンに結婚を迫るシーンが不適切にならないようにとの配慮だったとか。


『あさが来た』コンビと重なるジャスミンとアラジンの関係


 王宮からほぼ出られず、本で政治を学んできたジャスミンは「国王になる」という強い意志は持っていても、それがどんなに孤独で困難に満ちた立場なのかは実感できていないし、今よりずっと“不自由”な生活を送ることも理解していないのかもしれません。



 聡明ではあるけれど、世間知らずでまだ未熟な次期国王。


 ああ、だからこそのアラジン……なんですね。ジャスミンの絶対的パートナーは。純粋な心と優秀な頭脳を持ってはいるものの、生きるためにコソ泥をしながら生活し、アグラバーの人々のことを誰よりも熟知している青年。きっとこの先、アラジンはオンの部分でジャスミンにアドバイスをし、オフの部分で彼女から笑顔を引き出す存在になっていくのでしょう。まるで『あさが来た』の新次郎さんが、超男性至上社会の経済界でつねに矢面に立つあさをオン・オフの両面からサポートしたように。



 100%の受け身で王子さまのキスを待っていた白雪姫から80年。ディズニープリンセスは、窮屈な場所から解き放たれて自由になる女性ではなく、責任と重圧とを自ら背負い、リーダーとしてその場にとどまる存在へと進化しました。


 それはとても素敵なことだと思いつつ、やっぱり憧れますけどね。白馬に乗った王子さまが現れて、いつまでもお城で幸せに暮らす物語にも(ぼそっ)。



(上村 由紀子)

文春オンライン

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