注目女優・藤間爽子が見た祖母・藤間紫さんの「女優魂」

7月20日(金)16時0分 NEWSポストセブン

話題作への出演が続く藤間爽子

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 2017年放送のNHK朝の連続テレビ小説『ひよっこ』では有村架純(25才)演じる主人公・みね子が住むアパート『あかね荘』の大家・立花富の若いころを演じ「あのカワイイ子は誰?」とネットを中心に大きな話題に。『カロリーメイトゼリー』のCMでは、可憐な新入社員役が大好評。さらに現在出演中の『半神』では初舞台でありながら乃木坂46のキャプテン・桜井玲香(24才)とのW主演に大抜擢。八面六臂の活躍を見せる彼女は、若手女優の藤間爽子(ふじま・さわこ、23才)。


 女優で日本舞踊家の故・藤間紫さん(享年85才)を祖母に持ち、その再婚相手である祖父は二代目市川猿翁(78才)。父は元俳優でスーパー歌舞伎をプロデュースした藤間文彦(67才)、母は女優の島村佳江(62才)と、その家系図は豪華絢爛だ。そんな彼女が“芸”と“家”について語り尽くした——。



——『ひよっこ』では、出演と同時にずいぶん話題になっていましたが、放送当時はどう感じていましたか?


藤間:朝ドラの影響力ってすごいな…と思いました(笑い)。有村架純さんが主演だということは決まっていて、その親友役のオーディションに応募したのですが、最終まではいったものの、落ちちゃって…。


 その時にプロデューサーさんから、「いつかご縁があったら一緒に仕事したいね」というようなことを言っていただいたのですが、「大人のリップサービスでしょ?」くらいに思っていたんです。そうしたら本当に、お声をかけていただいて。『ひよっこ』が初めての映像作品への出演だったんですが、カメラがいっぱいあって、とても緊張したことを覚えています。


——小さなころから出演している日本舞踊の舞台にもNHKのカメラが入っていると思いますが、ドラマの撮影は舞台を撮られる時とは違いますか?


藤間:全然違います! 舞台を撮影する場合、カメラは客席の奥に置かれてます。舞台のカメラはお客さまから見えない位置にあるので、演じる時は観客側だけに“気”を持っていけばいい。だけどドラマの撮影になると、四方八方にカメラがあるので、舞台では観客席一点に集中させていた“気”をどこに持っていけばいいのかわからなくってフワフワしていたら撮影が終わってしまって…。


 あとは、自分の顔の映りかたにも驚きました。舞台の時は白塗りのうえ、カツラもかぶっているから、素顔の自分じゃないけれど、ドラマでは“素”の顔が映ってしまう。実際、映像で自分の顔を見たら、ここも、あそこもと、アラが見えてちょっとショックを受けました(笑い)。


——爽子さんといえば、日本舞踊の紫派藤間流を継いで家元となることが決まっている。そんな彼女がなぜ「女優」の道に踏み込んだんですか?


藤間:実は幼いころから、演じることが大好きで、小学校の学芸会でも率先して主役をやらせていただいていて。ずっと女優への憧れは持ち続けていたんですが、私が14才のときに祖母・藤間紫が亡くなって、現実に直面した。やはり、流派は自分が継ぐことになるだろうという中で「ちゃんと日本舞踊やらなきゃな」という覚悟と責任が芽生え、同時に「女優になりたい」という自分の夢なんて言ってられないなって思ったんです。そういう状況で、なかなか一歩が踏み出せないまま、高校、大学まできてしまった。


——それでは、何がきっかけで女優の道へ?


藤間:周りの就職活動がきっかけです。大学3年生の時、友人たちが就活を始めていく中で、私だけが、日本舞踊家としての将来が決まっている。これからの人生をあらためて真剣に考え直したときに、これでいいの?って、お芝居への想いが抑えきれなくなったんです。21才からのスタートは遅すぎるくらい。でも、今やらなきゃもう後はない! と一念発起して事務所に入り、オーディションを受けまくりました。


——周囲の反応は?


藤間:家族は大賛成だったけれど、流派の中からは「今のあなたにそんな時間はない」「もっとお稽古に励みなさい」という声もありました。でも、最終的には皆さん、私の女優活動を認めてくださいました。


——現在は初舞台『半神』に出演中。乃木坂46キャプテンの桜井玲香さんとW主演を務めています。


藤間:玲香ちゃんとは今回が初顔合わせです。『半神』は体がつながった「結合双生児」の姉妹の話。姉であるシュラは醜く、妹のマリアは愛らしく誰からも愛される存在。玲香ちゃんはものすごく美しい方なのですが、舞台では醜いシュラを、私がマリアを演じます。お稽古は一日6時間くらいで、その間、ずっと玲香ちゃんとくっついているんです。肌と肌をくっつけ合って、体温まで感じあう中で、互いのにおいすらいとおしく感じてくるというか…(笑い)。


 また、今回の舞台は『八百屋舞台』という急こう配になった特殊な舞台なので、体力的にすごくキツいんです。玲香ちゃんもつらそうだったから、「乃木坂のライブとどっちがキツい?」って聞いたら「半神!」って即答でした。



——お互い、家元として「流派」を、キャプテンとして「乃木坂」という重圧を背負う立場。シンクロニシティーを感じる時はあるのでしょうか?


藤間:玲香ちゃんは最初会ったときから印象は変わらない。柔らかく美しい印象の中に、乃木坂のリーダーとしての芯の強さが垣間見えるときがある。シンクロといえば、ずっと一緒に、くっついて動いているので、しゃべらなくても考えが通じるんです。玲香ちゃんがどこを支えてほしいかとか、次にどこに移動してくるのかとか、自然とわかるようになりました。今は相手の体調まで察するところまで来ましたね。


——初舞台、緊張はありませんでしたか?


藤間:不思議なことに、全くないんです! 日本舞踊の舞台との一番の違いは、セリフがあること。お客さんの反応でこっちもテンションあがってよりよいパフォーマンスができますし、同年代の役者さんと舞台を作り上げていくのも初めて。自分だけでなく、演出家さん、役者さん、そして玲香ちゃん、お客さんと作品をつくっていくことに感動がありました。



——その度胸はやはり祖母・紫さんの血でしょうか。紫さんといえば、女優としても、日本舞踊家としても、そして演出家としても活躍した偉大なかた。孫からみた紫さんはどんな“おばあちゃん”でしたか?


藤間:小さいころの印象としては“変わった人”(笑い)。だって、どこかに出かけるときには、荷物持ちのお弟子さんを引き連れて歩いてる。しかも、ずっと帝国ホテルに住んでいたんですよ!? 祖母が「遊びにおいで」というのでホテルに行くと、部屋に何人ものお弟子さんがずらっと並んで立っている。座らないんですよ! 皆さんが見守る中で、普通に、祖母と孫の会話をするんです。おかしいですよね(笑い)。

 

 祖母は私の前では先生というより、「おばあちゃん」でした。今にして思えば、もっともっと、芸の話をしたかったし、祖母の芸を盗みたかったです。もうちょっと生きていてほしかった。祖母の踊りは「役者の踊り」と言われているんですが、踊りの中に「心」がある。日本舞踊家さんは、いかに形とか動きをきれいに見せるかに意識を置いて踊る方もいますが、歌舞伎役者さんなんかは、「役の心」で踊っているので、あえて美しく見せなくても“役”として存在している。祖母の舞踊を見ると、“役者”だったんだな、って思います。


 女優としてのプライドも、並大抵のものではありませんでした。私、6才のときに歌舞伎座で初舞台を踏んだんです。祖母と、(市川)右團次さん、河合雪之丞さん(当時は市川春猿)さん、(市川)弘太郎さんと兄(藤間貴彦)とで『鶴亀』を踊ったんですね。舞台を見た猿翁さんが『この子は才能がある』と褒めてくださったのですが、それを聞いていた祖母が「私が爽子の年にはもっと踊れたわ!」とむくれたそうで、そばで聞いていた母が驚いていました(笑い)。女優魂ですよね。


——その紫さんの夫・猿翁さんといえば三代目猿之助時代にスーパー歌舞伎をつくり出し、血縁ではなく実力で役者を抜擢するなど梨園の構造から改革。“歌舞伎界の革命児”といわれたカリスマです。



藤間:『半神』の舞台が決まったときに、猿翁さんが「爽子ガンバレ!」と描いた色紙を送ってくださったんです。私はテレビでも舞台でも、「出るよ」とは友達にも言わないことが多いのですが。猿翁さんが、自分でスポーツ新聞に載った告知の記事を探し当てて、色紙を送ってくれたんです。うれしくて、色紙は楽屋に飾ってあります。


 小さいころは、軽井沢のお稽古場で、澤瀉屋一門がお稽古する中を兄と駆け回っていました。そうすると、猿翁さんがきて、「よしよし」ってしてくれたり、みかんをむいて食べさせてくれたり…。世間で言われるような「怖い」というイメージはありませんでした。そのころは祖母のことは「むらさきばぁば」、猿翁さんのことはおじいちゃんではなく「えんちゃん」と呼んでいました。


——日本舞踊家と女優。藤間さんの活躍ぶりは言わば“二刀流”です。念願だった両立を実現させたご感想は?


藤間:今はまだ入り口ですが、私が女優として活動することで、日本舞踊をもっと知ってもらいたい。友達に日本舞踊をやっているというと「爽子、海老蔵さんになるの?」と聞かれる。歌舞伎と日本舞踊の区別がついていないんです。そもそもどこで公演をやっているのか、どうすればチケットを取れるのか、それすらわからない人も多い。私が芸能活動をすることを通して、こういう日本舞踊家もいるんだ、と日本舞踊に少しでも興味を持ってもらえたらと思っています。


——最後に、今後の目標を教えてください


藤間:数年後には、藤間紫という大きな名を継ぐことになります。今後は演技にも日本舞踊にもより精進し、将来は、祖母のように「藤間紫」の名前でお芝居をしたい。その時には舞台で、祖母の代表作でもある『西太后』を演じたいな!



【藤間爽子(ふじま・さわこ)】1994 年8月3日 東京生まれ。幼少より祖母・藤間紫が創流した紫派藤間流で日本舞踊家としての修練を積む。日本舞踊協会主催公演や日本舞踊協会協力公演『日本舞踊×オーケストラ』などに出演。青山学院大学文学部比較芸術学科卒業後、俳優デビュー。劇団『阿佐ヶ谷スパイダース』新メンバーとしても活躍。現在、初舞台『半神』(7月22日まで、大阪・松下IMPホールにて)に出演中。

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