夏休みの宿題離れが進む理由 親が頑張る自由研究は無意味

7月20日(土)7時0分 NEWSポストセブン

自由研究の工作は似た作品ばかり

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 小中学生の「夏休みの宿題」といえば、日記や読書感想文などとともに「自由研究」がお決まりだが、近ごろの子どもたちは夏休み中も塾や習い事に忙しく、自由どころかほとんど“親の課題”となっている。果たしてこんな夏休みの宿題、意味があるのか。教育評論家の石川幸夫氏が理想的な自由研究や宿題の目的を改めて考察する。


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 いよいよ子どもたちはワクワク、親は憂鬱になる長い夏休みに入ります。早いところでは、エアコン設置工事のため、1週間ほど前倒しして、7月13日から休みに入った学校もあります。


 そんな中、子どもも親も頭を抱えるのが夏休みの宿題です。昭和、平成、令和と元号は変わっても、夏休みの宿題は相変わらず「日記」「計算ドリル」「漢字ドリル」「読書感想文」「絵画」、そして多くの親子が頭を抱える「自由研究」という定番の宿題が並びます。


 夏休みのように、長期間、規則正しく通っていた学校から離れるというのは、学習面で見れば親はかなり心配ですし、じつは先生も心配なのです。そのため、両者の思いもあってか、昔と変わらない宿題のラインアップが並ぶのだと思います。


 事実、オーストリア・グラーツ大学(GrazUniversity)の研究チームは、子どもの長期休暇が算数や国語系に悪影響を及ぼすという調査結果を発表しています。また、その回復には、休暇と同じ期間を有したと報告されています。


 しかし、だからといって今も昔も変わらない形骸化している夏休みの宿題は、そろそろ見直しの時期に来ているのかもしれません。


 公立の中学では、すでに夏休みの宿題から日々の宿題まで廃止した学校が出てきたことから、教育界ではにわかに宿題の見直し論が高まっています。ただ、廃止といっても、家庭学習を廃止するわけではありません。むしろ、“自主的な家庭学習”の重要性が求められているのです。


 もっとも夏休みの自由研究は、子供より親の課題として定着しているのは周知の通りです。いまの小中学生は夏休みであっても塾や習い事に忙しい子が多く、家にいてもゲームやネット(SNSなど)に時間を取られて、じっくりと自由研究に取り組む余裕がないようです。そのため、親が手伝う「関与率」が年々高まっているとのデータもあります。自由研究(宿題)の代行業者が話題となったのも記憶に新しいところです。


 自主的に行うにしても、今は工作にせよ自然観察にせよ、書店やネットを探れば自由研究のテーマ選びから完成イメージまで“指南”してくれる材料はたくさん見つかりますし、それを真似るだけの子どもが続出しています。夏休み明けに同じテーマの作品が多数提出されるため、初めから自由研究のテーマをいくつか決めている学校まであるそうです。これでは、まったく自由じゃない自由研究といえます。


 本来、夏休みの宿題の目的とは、休み中の生活習慣や学習習慣を崩さないことにあります。規則正しい生活から解放され、時間にルーズになり、夜更かしするなど生活習慣のリズムを乱してしまうと、学力の維持向上が難しくなってしまうからです。


 規則正しい生活習慣を保つ意味では、家庭の手伝いも立派な自由研究のテーマになります。お母さんがする家庭内の仕事を箇条書きし、その中のいくつかを行うのです。掃除、洗濯、料理、配膳、食器洗い、片付け──じつは、家庭内の手伝いにはたくさんの学習的要素が詰まっています。


 まず時間を感じることで「時間的知性」という、その人の持つ能力になります。朝、自分から起きて、新聞を取って朝食づくりの手伝いをする。これだけでも、子どもの精神面の強さになり、時間を意識できる能力を身につけられます。


 料理をすれば食材の名前を知り、料理法から水と油と温度を測り、そして、味付けという濃度の学習もできます。さらに食器洗いまで手伝えば、食器の形状や特徴を指先手先で感じ取ることができますし、整理整頓のノウハウも身につきます。こうした家事の手伝いから学んだことを丁寧にまとめるだけで、十分な自由研究になるのです。


 国語や算数といった学習の習慣化(自主化)を崩さないためには、以下の4つの方法をお薦めします。


〇決められた時間に、決められた場所に座る(時間の意識)

〇日記帳を用意し、1日の学習内容を記入する(目標の明確化)

〇学習時間は年齢の3倍(家で集中できる無理のない学習時間)

〇できない場合は、「今日は〜〜のため、できなかった」と日記帳に書く(自己肯定感を養う)


 以上のことを繰り返します。できれば、親がいる朝の時間帯などを学習時間に充てるのが効果的です。必ず同じ時間に、同じ場所に座るのが最低のルールです。


 もし学習をしない日が数日続いても親は文句を言ってはいけません。これが子どもの心に自分自身の行いを考えさせる「自己肯定感」につながる意識を高めてくれます。良い悪いの評価ではなく、子どもの自主性や努力を認めてあげることで、子供自身が自分を見直す結果になるからです。習慣化は地道な努力の結果なのです。


 親子で一緒に取り組めるのであれば、宿題以外に「課題学習」を行うのも理想的です。成績向上を目標とした、自分の弱点を補う学習です。


 例えば、算数であれば与えられた宿題ではなく、自分の成績から苦手な部分をピックアップして自ら問題を作成します。こうすると問題そのものを理解しやすいうえ、確認テストを作成(保護者が確認)して夏休みの終了間近に行えば、弱点克服の仮説検証もできます。これだって、まさに自由研究と呼ぶに相応しい学習といえるでしょう。


 また、学力に余裕のある子は、夏休みを利用して親子でプログラミング講座に参加してみるのもいいでしょう。プログラミング学習はこれから必須の学習であり、論理性が養われます。親子して取り組めばコミュニケーションも取れます。


 課題学習を含め、どちらも今までの宿題にはない「目的」と「目標」がある点が大きな意味を持ってきます。


 夏休みは子どもの知らない一面や成長している過程を見ることができる貴重な期間です。形骸化した夏休みの宿題を嫌々こなすことよりも、親子でしっかりコミュニケーションを取り、一緒にチャレンジできる“自由研究”を見つける時間を大事にしてほしいと思います。

NEWSポストセブン

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