超大物F・トーレスがJリーグに! なぜ日本で「師匠」と呼ばれるのか

7月21日(土)11時0分 文春オンライン

 エルニーニョ(神の子)と呼ばれる男が、日本サッカー界にやって来た。


 元スペイン代表のフェルナンド・トーレスだ。役どころはFW。もっと言えば「点を取ってナンボ」のストライカーである。


 サッカーファンなら、その名を知らぬ者はまずいない。そんな大物が今夏、J1クラブのサガン鳥栖に加入したわけだ。


気になる年俸は5億2000万円以上?


 スペインの強豪アトレティコ・マドリードに在籍していたが、4月9日に今シーズン限りでの退団を表明。それからアメリカのシカゴ・ファイアー、中国の北京人和、オーストラリアのシドニーFCから獲得オファーが届いている。


 そのなかで、真っ先に声をかけたのが鳥栖の竹原稔社長だった。この熱意が、最終的に大物の心を動かしたらしい。事実、トーレス本人がこう話している。



サガン鳥栖入団会見。笑顔が爽やか  ©時事通信社


「彼らが最初に関心を示してくれた。そのことが、私にとって、とても重要だった」


 年俸は公表されていない。当初報じられていた金額は推定400万ユーロ。日本円にして約5億2000万だ。前述したクラブとの争奪戦となり、交渉が長引いた経緯などを考えに含めると、もう少し上積みされている可能性もある。


 もっとも、マネーゲームに勝って、獲得にこぎ着けたわけではない。それこそ、中国勢はこのクラスの選手を獲得するにあたって、カネ(資金)に糸目をつけないからだ。大金を蹴ってまで、鳥栖を選んだ——そう言っても差し支えあるまい。


10代でスペイン代表入りした「神の子」


 ところで、このトーレス、いったい、どれほどスゴイ選手かご存知だろうか。


 10代のうちにスペイン代表でデビューを飾った神の子も、すでに34歳。すっかりベテランである。


 アトレティコの下部組織で育ち、瞬く間に頭角を現した早熟の点取り屋だ。海千山千のイタリア守備陣を出し抜いて、代表初ゴールを決めたのも、まだ20歳のときだった。そういうわけで(?)選手としての最盛期を迎えたのも早かった。


 ちょうど10年前だ。アトレティコを離れ、イングランドの名門リバプールに在籍していた頃である。2007-2008シーズンにゴールラッシュを演じ(1シーズンで33得点!)、勢いを駆って臨んだ2008年のEURO(ヨーロッパ選手権)では、強豪ドイツとのファイナルで決勝点をマーク。スペインを見事に優勝へ導いた。




2010年W杯でも優勝しているが……


 身長185センチ。小柄な選手の多いスペインではめずらしくフィジカル面に恵まれ、一瞬で相手を振り切り、フィニッシュへ持ち込む素晴らしいスピードを持っていた。従って相手ディフェンスの背後に広がるスペースが、彼の「ごちそう」というわけだ。


 反面、そこを取り上げられると、持ち味を出しにくい。敵陣へ押し込み、狭いスペースでボールを出し入れするスタイルとは相性が悪かった。スペイン代表で次第に出場機会を失っていったのも、そのためだろう。


 スペインが初めてW杯で優勝した2010年の南アフリカ大会ではベンチに回り、大会終了後にチェルシー(イングランド)へ移籍。そこから鳴かず飛ばずの時期が続くことになる。まだ20代後半の頃だ。


なぜ日本限定で「師匠」と呼ばれる?


 神の子から、人の子へ——。日本のネット上では、いつしか「師匠」と呼ばれるようになる。FWにも関わらず、ことごとくチャンスを外してしまう選手を(ノーゴール)師匠と呼ぶ、独特の慣習があるからだ。



 あれだけのチャンスを棒に振るなんてことは、普通の人間にはできない……もう、師匠と呼ばせてください! そういうことか。人の子、それも典型的な「いじられキャラ」への暗転である。


 もっとも、師匠の呼び名には、尊敬の念も込められていた。点を決めずとも、立派にチームへ貢献している——と。


 ある意味、2014年に古巣アトレティコへ復帰してからのトーレスは、良い意味での「師匠」だった。


 確かにゴールの数こそ少なかったが、攻守を問わず体を張ってハードワークし、チームを支えていた。往年の姿を知る者にとっては物足りないが、プライドをかなぐり捨てて、泥臭い仕事も厭わぬ献身的な姿は、ファン・サポーターの心を打つのに十分だった。


いざJデビュー「頼みますよ、師匠!」


 トーレスは大物は大物でも、日の当たる場所をずっと歩いてきたわけではない。嘆かない、腐らない、諦めない——という生きた見本とも言える。点取り屋という以上の「隠れた値打ち」が、この人にはあるのではないか。



 才能や実績を鼻にかけ、取れるだけ取ったら、さっさとずらかる連中とは一味も二味も違うような気がする。日本の選手たちにとって、神の子よりも、実に人間臭い「師匠」の方が、学べるモノは多いのだろう。


 もちろん、本職(点取り屋の仕事)も十分に期待できる。何しろ、ハードワークと鋭い速攻が鳥栖の持ち味。トーレスの特長を生かすには、もってこい、というわけだ。


 早ければ、今週末(7月22日)のベガルタ仙台戦(J1リーグ)で、その勇姿を拝めるだろう。この夏、日本人を熱狂の渦に巻き込み、観る者の体温を異常上昇させる「エルニーニョ現象」が起きるか。頼みますよ、師匠!



(北條 聡)

文春オンライン

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