女子高や公立高校で増加する「高大連携」 WinWinの仕組み

7月21日(日)7時0分 NEWSポストセブン

私立中高と大学の「連携協定」が続々と締結されている

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 近年、私立の中学・高校が付属関係にない私立大学と学校法人の垣根を超えて手を携える“高大連携”の動きが急拡大しているという。その背景にはどんな事情があるのか──。安田教育研究所の安田理がレポートする。


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 近ごろ私立中高と接していて感じることの1つに、「高大連携」に取り組む学校が増えていることが挙げられる。


 学部、研究室単位での交流は以前からあったが、最近は法人として正式に協定書を結ぶ例が目につく。23区内の私立大学の定員の厳格化によって有力私大が軒並み難化し続けていることが、こうした取り組みを盛んにしている背景だが、一般にはあまり知られていない。そこで、主に私立の中高と私立大学の例を見ながら、なぜ広がっているのか、探ってみたい。


◆一気に受験生が増える「系属化」「準付属化」


 2016年度以降、政府の「地方創生政策」の一環で、23区内の大学は定員の厳格化による合格者発表数の減少から有力私大が軒並み難化しています。そのため、わが子の受験時にはもっと難しくなるのではと心配した保護者が付属校に入れようとしている動きはご承知かと思います。


 付属校だけではなく、系属、準付属となった青山学院横浜英和(前横浜英和女学院)、目黒日本大学(前日出)、青山学院大学系属浦和ルーテル学院(前浦和ルーテル学院)といった学校の受験生が急増したことも耳にされているかもしれません。大学につながっていることが学校選択の大きな要素になっているのです。


◆「高大連携」は公立高校でも


「高大連携」というのは、文字通り高校と大学が連携し、大学教員が高校に来て講演したり、大学レベルの内容を教える「出前授業」をしたりして、高校生に大学で学ぶ意欲を持たせる取り組みです。こうしたことは以前から行われていたのですが、ここへきて文部科学省が奨励していることもあり、加速しています。


 私立中高だけでなく、公立高校でもその動きは活発化しています。代表的なところでは、東京都教育委員会が、〈さまざまな大学との連携を進め、専門的な学びの機会を提供するとともに、その成果を大学での学びにつなげ、高大一貫した人材育成を推進〉するとして、下記の5大学と協定を結びました。


・首都大学東京(2020年度から東京都立大学に戻る)

・東京農工大学

・東京学芸大学

・東京外国語大学

・電気通信大学


 千葉県でも教育委員会が音頭を取って、多数の県立・市立高校が高校ごとに複数の国公立、私立大学との連携をしています。


 私立中高でも従来からの取り組み自体は非常に多数の高校がすでに行っています。


◆最近は正式に協定書を結ぶケースも


 なぜ今回このテーマを取り上げたかというと、現場での取り組みという段階から私立中高の校長と私立大学の学長とが立ち会いの下で正式に“協定書”を結ぶケースが出てきたからです。そうした背景には冒頭に述べた「大学とのつながり」を重視したいという中高側の事情があります。私が把握しているものを挙げてみます。


・三輪田学園と法政大学

・森村学園と昭和大学

・麹町学園女子と東洋大学、東京女子大学、共立女子大学、成城大学、女子栄養大学

・玉川聖学院と東京女子大学

・桐朋女子と東京女子大学

・富士見丘と明海大学

・横浜女学院と東京女子大学


 森村学園は共学ですが、他はすべて女子校です。女子校は学校数が多いので必然的に生徒募集競争が厳しくなります。それだけに生活指導、キャリア教育をはじめ、あらゆる面で男子校・共学校以上にいろいろ工夫しています。「高大連携」に熱心なのもそうした姿勢の反映です。


 また、お気づきかと思いますが、女子高校生は進路として医療系、国際系、管理栄養士、外国語学部を希望する人が多いので、そうした学部・学科を有する大学と提携しているケースが目立ちます。


 森村学園と昭和大学、麹町学園女子と東洋大学・女子栄養大学もそうですし、富士見丘と明海大学の場合は、富士見丘がSGH(スーパーグローバルハイスクール校)なので、外国部学部と親和性があります。協定を結ぶにあたっては過去の入学実績などが前提としてあるわけですから、当然といえば当然です。


◆先陣を走る麹町学園女子


 高校側から見ると麹町学園女子がもっとも多くの大学と連携していることがわかります。これは山本三郎校長の経験によるところが大きいのです。山本校長は麹町学園に来る前は大阪の帝塚山学院の校長で、その時代に「関西学院コース」というものを作りました。


 その他にも関西には首都圏では見られないこうした「高大連携コース」がいろんな学校にあります。例えば、平安女学院中高、育英西中高に「立命館コース」が、京都聖母学院に「同志社女子大連携コース」といった具合です。


 麹町学園の「東洋大学グローバルコース」は首都圏初のコースといっていいでしょう。評定平均値3.5以上で、英検2級以上を取得していれば80名まで12学部35学科に進学できるという画期的なものです。もちろんこれだけが要因ではありませんが(英語教育の改革の成果が大きい)、麹町学園の入試は中高とも好調です。


 有力私大の難化が著しいこと、またわが子が受けることになる大学入試改革がいまひとつハッキリしないことから、ある程度保証された進路があることは受験生・保護者にとって魅力なのです。それだけにここへきて私立中高側も急速に「高大連携」に力を入れるようになっています。


◆隠れたメリットも……


 ここまで読まれた人の多くは、「指定校制度」に毛が生えた程度のものと捉えているかもしれませんが、「指定校制度」には実は問題点もあります。


 大学から来るのは特定の学部・学科です。必ずしも自分が勉強したい専攻ではないのに、大学名に惹かれて、あるいは早くに安心したくて選んでしまうことがよくあるのです。そうして入学すると、思っていたものと違うと勉強意欲をなくしてしまうケースがよくあり、中には退学につながることも……。


 一方「高大連携」の場合は、大学生の話を聴いたり、大学教授の講義を受けたり、大学に足を運んで研究室をのぞいたりして、学部・学科を十分理解してから選ぶことになります。あまり触れられていませんが、その点が「高大連携」の良さと言えるでしょう。


◆大学側にもメリットが


 前出の例からは東京女子大学が4校と協定を結んでいることが目立ちますが、実はもっと多数の中高と協定を結んでいる大学もあります。


 神奈川大学は、県立高校61校、横浜市立高校4校、川崎市立高校3校、横須賀市立高校1校、私立高校13校、都立高校2校、都内私立高校2校、静岡県立高校1校、富士市立高校1校──と、これだけの中高と連携協定を結んでいます。


 では、神奈川大学のように、なぜ大学は多くの高校と連携するのでしょうか。ここまで見てきたように、「高大連携」は私立中高が生徒募集を有利に運ぼうと大学との関係を強めようとしているように思えます。確かにそうした面は強いのですが、大学側にも大きなメリットがあるのです。


 これまで、少子化によって18歳人口は減り続けていますが、進学率の上昇で大学受験者数の減少にはなっていませんでした。しかし、いまや大学進学率は53%にまで達し、これ以上大幅な上昇は期待できません。これから大学は受験生獲得にむけて否応なく競争せざるを得ない立場になるのです。そうしたとき、評定平均値3.5以上で、英検2級以上取得の学生が一定数入ってきてくれればこんなにおいしい話はありません。


 とはいえ、付属校や系属校にすると経営責任が生じます。教員・職員の雇用から施設管理まで膨大な経費・労力も伴います。が、別の学校法人との「高大連携」であれば、懐を痛めずに済みます。万が一、マズイことが起これば関係を解消すればいいのです。


 こういう視点で見てみると、「高大連携」は大学側にとってもありがたい話で、まさに「WinWin」の仕組みといえますので、今後はますます拡大するのではないでしょうか。

NEWSポストセブン

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