京アニ「大量殺人」引き起こした犯人の「被害妄想」

7月24日(水)16時0分 NEWSポストセブン

爆発火災があったアニメ制作会社「京都アニメーション」のスタジオ(時事通信フォト)

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 臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々を心理的に分析する。今回は、34人が亡くなった「京都アニメーション」放火事件の青葉真司容疑者を分析。


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 7月18日、アニメ制作会社「京都アニメーション」のスタジオを襲った放火犯の炎は、またたく間に34人もの尊い命を奪い去った。


 平成以降最悪の放火殺人事件を起こした犯人は、さいたま市在住の青葉真司容疑者(41)。スタジオ1階でバケツに入れたガソリンをまいた後、「死ね」と叫びながら、火をつけたとみられる。


 確保された際は「小説が盗まれたからやった」と話していたという青葉容疑者は、事件前から近所で目撃されており、現場近くにはハンマーや包丁が残されていたという。強い殺意を持っていたと思われるが、京都アニメーションの社長は「名前を聞いたことがない」と話し、一方的に恨みを持っていた可能性が高い。


 逆恨み、自分勝手な思い込み、そんなもので、これだけの大惨参事を起こしたのか。ニュースを見る度に憤りとやりきれなさがこみ上げてくる。


 青葉容疑者は、12年にも茨城県内のコンビニで強盗事件を起こしている。自首した際、「遊ぶ金が欲しかった。オウム事件の容疑者のように自分も逃げられないと思った」などと不可解な供述をしている。昼間はカーテンを閉め切り、活動は夜。青葉容疑者の印象を「口数も少なく大人しい」と語る人もいるが、住んでいた部屋では近隣住民とたびたび騒音トラブルを起こし、警察官が駆けつけたこともあったという。


 それ以前にも、当時住んでいた集合住宅で真夜中に目覚まし時計を鳴らしたり、壁を叩いたり、大音量で音楽を流すなど、住民の苦情が絶えなかった。京都府警は、「精神的な疾患があるとの情報を把握している」と発表している。


 これだけの情報しかないが、おそらく容疑者には、「妄想」があったのではないかと推測されている。精神医学で妄想は「訂正できない誤った考え」などと定義される。そこでここでは、渡邉和美・高村茂・桐生正幸編著『犯罪者プロファイリング入門—行動科学と情報分析からの多様なアプローチ』(北大路書房)にある、「妄想の周辺と犯罪者プロファイリング」を参考に、青葉容疑者についてみてみようと思う。


 まず、妄想の定義の「訂正できない」の部分は、「自分が誤っているとはまるっきり思っていないため、訂正のしようがない」ことをいい、「誤った考え」の部分は「客観的にみて間違っていること」を指す。この本では、どのように誤っているかによって、妄想を「奇異な妄想」か「奇異ではない妄想か」で分けており、ここでの「奇異」は、「通常の文化の中ではありえないと考えられていること」と定義している。


 奇異な妄想を持つ犯罪者のプロファイリングをみると、彼らの背景や生い立ちから鑑みても、私たちには理解できないことが多く、幻聴や活動性の低下、生活能力の低さが挙げられている。閉じこもりや清潔にできない、ゴミをため込むなどもあるらしい。実際、コンビニ強盗の後、警察の立会いで確認された部屋の中は、ハンマーで壁が壊され、ガラスが割られ、パソコンも破壊され、悪臭がするゴミ屋敷の様相だったようだ。


 更にこの本のプロファイリングには、「現実を検討する能力は低く、犯行の手口、計画は稚拙で綿密さを欠き、隠蔽や逃走能力も低いため現行犯逮捕されやすい」ともある。容疑者は自身も全身に重いやけどを負い、現行犯逮捕されているし、犯行当日に寝ていたという近所の公園では、ガソリンの携行缶などが押収されている。犯行までの生活状況をみても、このプロファイリングに合っているように思う。


 妄想の中でも頻度が高い被害妄想では、妄想が発展すると攻撃対象が人物から組織になり、精神的に追い詰められると攻撃がより凄惨なものになり、八つ当たり、無差別的な犯行の可能性が高くなるという。壁を何度も叩かれたという隣人は、犯行の数日前、容疑者に胸ぐらを掴まれ「殺すぞ。こっちは余裕ねぇんだ」と凄まれたと話している。


 このような犯罪すべてが妄想によって引き起こされるものではないし、青葉容疑者に妄想があったのかも、まだ定かではない。ネット上では様々な憶測も飛んでいるが、なぜ、こんなことをしたのか、そこをしっかり解明し、法律できちんと裁いてほしいと願う。

NEWSポストセブン

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