「芸人YouTuber」オリラジ中田とキンコン梶原は、なぜ“アンチ”に負けず成功できたか?

7月25日(土)18時0分 文春オンライン

 6月19日、とんねるず石橋貴明が自身のYouTubeチャンネル『貴ちゃんねるず』を開設。約1カ月でチャンネル登録者数が約83万人(以下、登録者数は7月24日現在)を超えるなど、好評を博している。



YouTube「 貴ちゃんねるず 」より


 その他、今年に入って山田邦子今田耕司東野幸治らベテランのお笑いタレントが続々とYouTubeに参入。いよいよYouTubeは、芸能活動において欠かせないコンテンツとなりつつあるようだ。


 その一方で、YouTubeに乗り気でない態度を示す芸人もいる。その象徴とも言える存在が、明石家さんまだ。


 2020年2月に放送された『ホンマでっか!?TV』(フジテレビ系)の中でも、さんまは「オレらテレビに出る人間の敵はYouTubeやで!」と発言している。その言葉の根底には、“今まで恩恵を受けたテレビを守りたい”という思いがあるに違いない。


 また、ナインティナイン・岡村隆史もYouTubeには消極的だ。自身がパーソナリティーを務める『ナインティナインのオールナイトニッポン』(ニッポン放送、7月2日放送)の中で、「もう我々、ムリちゃう?」と弱気な言葉を漏らしている。芸能人が次々とチャンネル開設をしていく中で、動画の切り口やテーマが飽和状態になってきており、もはや自分たちには入るスキがないと懸念しているようだ。


 もっとも、さんまやナインティナインは、現在でもテレビで多数のレギュラーを持つ人気者だ。「あえて参入する必要もない」という、ある種の余裕があるのだろう。


2019年は芸能人YouTuber元年


 芸人のYouTube参入は意外に早い。“誇張ものまね”で人気を博したハリウッドザコシショウは、2009年にYouTubeチャンネル『HollywoodZakoshisyoh』を立ち上げたタレントの最古参。登録者数は約16万人で、コアなファンを獲得している。また、「ヒロシです……」からはじまる自虐ネタでブレークしたヒロシも早くから参入した一人。2015年に『ヒロシちゃんねる』を開設し、いまや登録者数は約82万人と高い人気を誇っている。


 ザコシショウとヒロシの動画に共通するのは「趣味性」の高いコンテンツということだ。ザコシショウは、勝手に下ネタで吹き替えたBGMのゲームプレイ動画や、変顔をスロー再生したり、反対にスピードを何倍速かにして見せたりするトリッキーな動画も少なくない。ヒロシのソロキャンプ動画は、その後のキャンプブームの先駆けとなり、テレビでも取り上げられて話題となった。


 YouTubeは2018年の中盤あたりまで、テレビの露出が少ない芸人が活用するネットメディアというイメージが漠然とあった。ネタや趣味に関する動画が多かったからだ。


 しかし、2018年10月にキングコング・梶原雄太が『カジサックの部屋』を立ち上げると、流れは大きく揺れ動く。


 自らを新人YouTuber・カジサックと名乗り、「2019年12月末でチャンネル登録者数が100万人に届かなかった場合は芸能界を引退する」と宣言。主に芸人をゲストに招いてのトークが話題を呼び、2019年7月11日に見事目標を達成。この流れの中で、YouTubeおよびYouTuberが芸能界と結びついていった。


 YouTuberブームの火付け役であるヒカキンだけでなく、フィッシャーズ、ラファエルといったYouTuberが、テレビの世界で知名度を上げていき、反対に藤田ニコル、斎藤工、ヒロミなど多くのタレントがYouTubeチャンネルを開設した。このことから、2019年は「芸能人のYouTubeチャンネル開設元年」とも言われている。


“アンチ”を乗り越えたキングコング梶原


 現在、芸能人YouTuberとして成功しているケースが大きく2つに分けられる。その1つが、“タレントの自己アピールの場”として活用したキングコング・梶原の例だ。


 梶原が成功した理由はいくつもあるが、あえて1つに絞るなら、芸能人同士がプライベートに近い空間で語り合うコンテンツを開拓した点が大きいだろう。自分だけの居場所を得たからか、動画の中の梶原はテレビよりもイキイキとして見える。また、世間で話題となった芸人をゲストに招くこともあり、注目度の高いチャンネルであることは間違いない。


 2003年、梶原は心身の疲労から2カ月半に渡って芸能活動を休止。また、次長課長・河本準一の母親の“生活保護受給問題”を受け、2012年5月に、梶原も自身の母親が生活保護を受給していることを告白。世間からバッシングを浴びたこともあった。


 2012年9月には、レギュラー番組『はねるのトびら』(フジテレビ系)の放送が終了。その後、梶原はテレビで思うような活躍ができず、一念発起してYouTubeに参入した。はじめのうちは“アンチ”も多かったが、みるみる登録者数を伸ばしていき、当初の目標より5カ月ほど早く100万人を達成。現在、206万人の人気チャンネルだ。テレビの人気は、最終的にYouTubeには影響しなかった。


 2019年に闇営業問題で所属事務所を解雇された宮迫博之は、梶原と同じ道筋をたどって今の成功があるといっても過言ではない。


 2020年1月にYouTubeチャンネル『宮迫ですッ!【宮迫博之】』を開設。初回は、騒動に対する謝罪動画だった。しかし、続いての動画で人気YouTuber・ヒカルをゲストに招いてチャンネルの方向性などについて指南を受ける。


 その後、宮迫はYouTubeで人気の高い「料理」「ゲーム実況」「チャレンジ企画の“○○してみた”」といった動画、YouTuberとのコラボ企画、自身の妻を動画に登場させるに至るまで、カジサックの成功例を踏襲しつつ、オリジナリティーを加えていった。カジサックと同様に最初は“アンチコメント”も目立ったが、徐々にファンを獲得し、現時点でチャンネル登録者数は102万人。常に高い再生回数をキープしている。


 テレビは不特定多数の人の目に入ってくるが、YouTubeは見たいファンだけが視聴する。 YouTubeは、タレントが自己アピールするのに格好のメディアなのだ。


オリラジ中田は「ビジネスの一環」


 もう1つは、ビジネスの一環としてYouTubeを活用しているオリエンタルラジオ・中田敦彦のケースだ。


 2003年8月に藤森慎吾とオリエンタルラジオを結成。2年足らずでテレビデビューを果たし、「武勇伝」のネタで一世を風靡した。その後も、藤森の“チャラ男”キャラがブレーク、ダンス&ボーカルユニット・RADIO FISHで人気を獲得するなど、注目を浴び続けた。


 しかしある時期から、中田のストレートな発言が物議をかもし始める。2017年4月には、事務所の先輩芸人に対する批判的な内容をブログで掲載し、業界関係者を騒然とさせた。翌2018年3月には、3年間出演していた『ビビット』(TBS系)のコメンテーターを卒業。翌2019年4月に、教育系YouTubeチャンネル『中田敦彦のYouTube大学』を開設している。


 中田の強みは、巧みな話術だ。そもそも上岡龍太郎氏、島田紳助氏といった知的な芸人にあこがれていたことをYouTubeチャンネル『中田敦彦の2nd YouTube』の動画「【YouTubeでしか話せない本音】憧れのレジェンド芸人&影響を受けた人物を語る!」の中で明かしている。しかし、独壇場のトークは今のテレビにはそぐわない。


 そこで、中田はもともと興味のあった「世界情勢」「投資」「政治」といったテーマを掘り下げ、大学の講義形式で解説する動画をYouTubeに投稿するようになる。現時点で登録者数は268万人。動画によっては300万回再生を超える人気チャンネルとなった。


“ビジネス型”の先駆者はキングコング西野


 この行動に至った裏には、キングコング・西野亮廣の存在があったようだ。先述した『中田敦彦の2nd YouTube』の動画「【大尊敬】キングコングさんを語る!」中で、中田は「(現在、行っている)イベントを主催するのとか、物販するんだとかも、言ったら完全に西野さんのトレース」と語っている。


 先駆者である西野のチャンネル『西野亮廣エンタメ研究所ラジオ【公式】』では、「結果の出し方」「先が短いインフルエンサー」といったタイトルの音声動画が投稿されている。ラジオ形式で主にオンラインサロンメンバー向けに西野の考えを語っており、一定の再生回数こそキープしているが爆発的な数字は出ていない。西野にとってこのYouTubeチャンネルは、ビジネス活動の一環というスタンスなのだろう。


 中田は、自身のアパレルブランド「幸福洗脳」の単価を高く設定すること、オンラインサロンをどう盛り上げるかは、西野やIT系企業の社長などとの交流から学んだ。また、同時期に登場したカジサックに刺激され、自身の話術を活かしたYouTubeチャンネルの開設に至っている。


 YouTube、オンラインサロン、イベント、物販のサイクルを意識し、ネットを通じて目に見える形でファンを獲得していく。中田にとってYouTubeは、パフォーマンスでありビジネスなのだ。その他、品川庄司・品川祐も、西野の影響を受けてYouTubeやオンラインサロンなどの活動をスタートさせている。


テレビの弱体化が参入の追い風に


 自己アピール、ビジネスとして、芸能人YouTuberが参入していった背景には、テレビが年々弱体化していることも影響している。


 スマホの普及、長期に渡る景気の停滞、コンプライアンスの強化など、テレビが新しいソフトを生み出すには厳しい状況だ。そのうえ、芸人の絶対数は相変わらず膨大で、ポジション争いは熾烈を極めている。


 その点、YouTubeはチャンネル登録者数や動画再生回数によって収入を確保でき、自己アピールの場としても機能するメディアだ。タレントが参入するのは必然と言える。


 加えて、今年に入ってベテラン勢たちがYouTubeに進出した背景には、2019年8月に公正取引委員会が芸能界の移籍や独立後の活動制限を“独占禁止法違反”とする見解をまとめた影響も大きい。このことで、独立する芸能人が増え、事務所による活動制限が緩やかとなり、YouTube進出に拍車をかけた部分もあるだろう。


 さらに新型コロナウイルスの感染状況によっては、今後も舞台やテレビでの活動が制限されるかもしれない。これまでネットにアレルギーのあった芸能人も、YouTubeを活用せざるを得ないケースが出てくるだろう。そこで新たな可能性に気づき、面白いコンテンツが生まれることも考えられる。


 風通しのよいコンテンツがネットから生み出される中で、潤沢な予算で組まれたYouTubeチャンネルが開設される日もそう遠くないのかもしれない。テレビと同様のセットの中でユニークな企画が配信される、という逆転現象が起きる可能性もあるだろう。


 現在の芸能人YouTuberは、その過渡期を体現している。一部からは、「YouTubeの時代は終わる」との声も聞こえてくるが、これに取って代わるような新しいメディアが登場する気配は今のところない。テレビとYouTube、そしてタレント活動はどう変化していくのか今後も注目していきたい。


(鈴木 旭/Webオリジナル(特集班))

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