【インタビュー】浜辺美波×北村匠海 心震わせ結んだ絆「自分の演技で泣くなんて…」
2017年7月27日(木)16時0分 シネマカフェ
『キミスイ』の愛称で知られる『君の膵臓をたべたい』は、住野よるの同名原作を基に映画化された。クラスの中心的存在の山内桜良(浜辺さん)は、親友・恭子(大友花恋)にも秘密で病院に通う毎日。桜良が書く闘病日記=「共病文庫」を偶然手に取ったことで、重度の膵臓の病に侵されていることを知ってしまったクラスメイトの【僕】(北村さん)は、「山内桜良の死ぬ前にやりたいこと」を叶えてほしいというお願いを断りきれず、ふたりで過ごす時間を重ねる。そして、桜良との日々が、事なかれ主義だった【僕】を少しずつ変えてゆく。
「新星」と冠をつけたくなる、フレッシュな取り合わせの浜辺さんと北村さん。浜辺さんが纏う儚く柔らかい雰囲気は、まるで桜良そのもので、浜辺さん本人を重ね合わせてしまいそうになるほど。だが、浜辺さんは「桜良ちゃんは私とは真逆で、本当にまぶしい子だなって思いました。だからこそ難しくて…。たくさんリハーサルを重ねて演じました」と、難しい役どころへの挑戦を口にする。
一方、北村さんは地味でおとなしい少年【僕】役。「中学校のときは、【僕】みたいな人間だったので、自分は結構【僕】に近かったりするんです。自分の枠に落ち着く役ができたな、という感じはありました」と、意外にも素に近い役柄であったと話す。北村さんといえば、2016年は『ディストラクション・ベイビーズ』、『あやしい彼女』、ドラマ「仰げば尊し」、「ゆとりですがなにか」と立て続けに出演し、すべての作品においてエッジの効いた役の印象が強い。聞けば、「そうですよね(笑)。普段は声のトーンもこんなんで(静かに)しゃべるんですけど。自分としては、去年がすごく振り切った1年だったんです」と、役ごとに変える印象を楽しむかのように、手ごたえを語った。
図書委員だった【僕】に合わせて、桜良も図書委員になり、徐々に距離が縮まるふたり。桜良の提案で、ふたりでカフェに行ったり、小旅行に出かけたりと、いかにも青春といった毎日が過ぎてゆく。常々明るく振る舞う桜良を見兼ねて、思わず【僕】が尋ねる。「君はさ、本当に死ぬの?」と。すると、桜良は笑顔で「死ぬよ」と答える。「死ぬ」と発する絶望的な言葉とは裏腹の、美しい笑顔に【僕】も、我々も、胸を締めつけられる。「桜良は笑顔が印象的なイメージだったので、心から笑う姿に私自身がすごく魅力を感じたんです。天真爛漫なだけではない気持ちや、哀しいときがあることを忘れずに、1シーン、1シーン、想いを込めて笑うことに気をつけました」と、浜辺さんは印象的な笑顔のエピソードを呼び起こした。その笑顔を正面から受ける北村さんも、「弱さと同時に前向きさが垣間見えるような笑顔があって、いろいろな表情で芝居の中で【僕】に笑いかけてくれた。役としても、僕自身も、やっぱり心にくるものがありました。忘れられません」と、心を鷲掴みにされたと話す。
そして、無常にも病は体を蝕み続け、ついに桜良は入院。これまで気丈にふるまっていた桜良が、「死」への不安な思いを吐き出す。そんな彼女のもとへ、いてもたってもいられずに【僕】が駆けつける。静かにふたりが佇む病室。交わすべき言葉、伝えたい言葉はあるのに、声にならない。もどかしい距離と包み込むようなやさしい時間は、言葉にしなくても通じ合っている、沈黙こそが雄弁に心の内を語るという、恍惚とした気持ちさえ与えてくれる。
「病室でのシーンは、桜良が弱いところを見せたり、本音をちょっと出すところがあるので、私はこれまでのシーンと違って、やりやすいと思うことが多かったです。ベッドの上で、ひとり三角座りをして泣いちゃうような桜良の気持ちは、私とも似ている部分があると思うくらい、演じていてすごくしっくりきていました。共鳴したとでも言うんでしょうか。気持ちが、よりわかるところでした」(浜辺さん)。
「そのシーンは撮影の終盤でした。ふたりの距離感もできあがっていたので、僕も、難しさはあまりなかったです。本音が出るシーンというか、ふたりの距離が一番近く感じるシーンなので、意識はしていました。【僕】という人間の感情もあやふやなんですけど、とにかく桜良をしっかりと見ているようにしました」(北村さん)。
原作と異なる点で、映画では高校時代からの12年後、「その先」が描かれており、【僕】を小栗旬、桜良の親友・恭子を北川景子が演じている。同じシーンこそないが、小栗さんと同じ人物を演じることになった北村さんは、完成作を観て「びっくりしました」と漏らした。「小栗さんとは事前に話し合うことがなかったので、『映像はどのようにリンクしているのかな?』と思っていたんです。だけど、撮影の途中で月川(翔)監督から『役のイメージがお互いにすごく合っているから、自信を持ってこのまま演じきって』と言われました。完成作を観たら、小栗さんの演じた【僕】と、自分が演じた【僕】がリンクしていて、すごくうれしかった。小栗さんが僕に寄り添ってくれたから、あそこまでひとつになれたと思っているんです」と、時を超えてひとつの役を完成させたことの一体感を表現してくれた。
ありったけの気持ちがこもった作品だからこそ、できあがった映画を観たときは、感慨もひとしおだ。浜辺さんは、「感動するシーンが本当にたくさんあって、全編を通して泣いて観てしまいました。特に、12年後に、大人になった【僕】や恭子が桜良の思いを受け止めてくださっているところは、現場で拝見していなかったので、映像でつながって流れとして観られて、本当に好きなシーンになりました。北川さんの演技が美しかったです」と、瞳をうるませる。北村さんも、静かな口調で誠実に言葉を並べる。「普段は自分の芝居が気になって、自分のシーンを待ち構える感じになって、全然客観的に観られないんです。だから今回、自分の芝居で泣くなんて、まさか思ってもいませんでした。月川監督にも、『素敵な映画に出演させて頂きました。ありがとうございました!』という話をしました。それがいまの自信につながるというか。『本当にいい映画なので観てください』という、うそのない感情につながっています」。ふたりが紡いだ思い、人と人の巡り合いの奇跡を信じたくなる1作に、心が洗われる。