平田満が鶴田浩二、勝新太郎、緒形拳と共演できた楽しさ

7月27日(土)7時0分 NEWSポストセブン

平田満が大物俳優との共演エピソードを語る

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 映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづった週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』。今回は、テレビドラマに出演するようになった俳優の平田満が、鶴田浩二、勝新太郎緒形拳といった大御所俳優と共演した思い出、海外の舞台演出家と組んで得られたことについて語った言葉を紹介する。


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 平田満は一九八六年、山田太一脚本・深町幸男演出のNHKドラマ『シャツの店』に出演。鶴田浩二扮する昔気質のYシャツ職人に時おり文句を言いながらも付き従う弟子を演じている。


「当時の看板スターというのは独特の緊張感がおありで、鶴田さんも自分なりの役作りというのをちゃんと持っていた。でも、いちいち『そのやり方は違う』とは言ってはきません。


 威圧感もありませんし、普段も冗談をおっしゃるし、山田太一さんのお芝居ですから話もごく日常。しかも僕は鶴田さんにダメ出しする役です。にもかかわらず、気軽に、軽々しくお芝居はできない──。そんな役者としての質量の高さが鶴田さんにはありました。それでも僕には『どうせつかさんに教わったことしかないし』と思っていたからやれたんでしょう」


 八七年には大河ドラマ『独眼竜政宗』に出演、伊達家の家臣・鈴木元信を飄々と演じた。


「小さい役ですが、けっこう出番は多いんですよね。でも、そんなに芝居どころはなくて。覚えているのは、勝新太郎さんの秀吉とワンシーンだけ一緒になったところです。僕がダーっと駆けてきて、名前とか地名とかを報告するんですが。噛んでしまい、上手くできなかった。


 鶴田さんの後だから怖さを知っていたんです。勝新さんだからもっと怖くて、独特の威圧感があって。いくら噛んでも『おお、いいよいいよ』と、全く緊張感を醸し出さない。逆に、それがドキドキするんですよ。


 緒形拳さんもそうでしたが、そういう大俳優さんたちとは、やっていて楽しかったです。そばにいるだけでも嬉しいのに、こちらの芝居をちゃんと受けてくださる。『こいつにはこの程度で』というおざなりがない。


 だからこそ威圧感があったんでしょうし、こちらへのプレッシャーも凄い。それで僕も余計に良い動きができました」


 九四年からはTPT(シアタープロジェクト東京)に参加、デヴィッド・ルヴォー、ロバート・アラン・アッカーマンといった海外の舞台演出家と組んだ。


「主に映像で活動するようになると、つか事務所時代の役者としての貯金をはたいてしまったんです。こういう役者を目指す、というのが全くないままで済んだので、大元が薄いものだからだんだんと役者の質量が小さくなっている気がしていたんです。


 つかさんと芝居をしなくなって、不完全燃焼が続いていました。仕事をいただけるから行くけど、モチベーションが高まっていないのにやっていた。生活があるから、という感じでした。


 それで『芝居をしたいな』『でもやりたいのは大きいのではなく、僕の出発点である小さいところ』と思うようになりまして。それでTPTをやっていました。


 日本では演出家に言われるままに動く。それだと芝居に限りがあります。外国の演出家は稽古のあと『質問がありますか?』と聞いてくるんです。いろいろ質問しているうちに、自分で発見がある。セリフの言い方が変だったり。言われたまま完全に理解しないでやっていると活きた人間じゃなくなるんですよ」


●かすが・たいち/1977年、東京都生まれ。主な著書に『天才 勝新太郎』『鬼才 五社英雄の生涯』(ともに文藝春秋)、『なぜ時代劇は滅びるのか』(新潮社)など。本連載をまとめた『すべての道は役者に通ず』(小学館)が発売中。


■撮影/木村圭司


※週刊ポスト2019年8月2日号

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