「エピソードの数だけ存在する作り手たちの仕事の歴史を祝いたい」仮面ライダー&戦隊アニバーサリー映画に込めた田崎竜太監督の思い

7月28日(水)19時13分 マイナビニュース

●誰に向かっての記念なのか
現在公開中の映画『セイバー+ゼンカイジャー スーパーヒーロー戦記』は、今年で誕生50周年を迎えた「仮面ライダーシリーズ」と、今年で45作品目を数える「スーパー戦隊シリーズ」を祝うダブルアニバーサリー作品である。
最強の敵・アスモデウス(演:谷田歩)により、世界を揺るがす危険な禁書が解放され、仮面ライダーセイバー/神山飛羽真(演:内藤秀一郎)はスーパー戦隊シリーズ『機界戦隊ゼンカイジャー』の世界に、そしてゼンカイザー/五色田介人(演:駒木根葵汰)は仮面ライダーシリーズ『仮面ライダーセイバー』の世界に飛ばされてしまった。「現実」と「物語」の境界があいまいになり、混ざり合った世界に戸惑う飛羽真たち。しかし、世界の混乱はさらに拡大。さまざまな世界から呼ばれたヒーローが「物語」の結末を確かめようと、悪との戦いを続けていく。しかしそれこそが、アスモデウスの仕組んだ壮大な計画の到達点だった……。
仮面ライダーとスーパー戦隊、昔も今も子どもたちを熱狂させ続ける2つのスーパーヒーローが、力をひとつに合わせて強大な悪の野望を叩きつぶすオールスター映画である本作のメガホンを取るのは、過去に「仮面ライダーシリーズ」「スーパー戦隊シリーズ」各作品の演出を手がけ、両シリーズの特徴を熟知している名匠・田崎竜太監督。かつて少年時代に『仮面ライダー』(1971年)を観て、斬新なヒーロー像を体感した記憶を持つ田崎監督が、この映画を作るにあたって念頭に置いたこととは何か。半世紀を過ぎてなお、幅広い世代から愛されるヒーロー像を具現化した“萬画家”石ノ森章太郎氏に対する強いリスペクトと共に、映画のテーマや必見ポイントについて語ってもらった。
——田崎監督に今回の映画のお話が来たとき、企画はどの段階まで具体化されていたのでしょうか。
決まっていたのは「仮面ライダー50年、スーパー戦隊45作を祝う映画にしよう」ということだけでしたね。ヒーロー全員集合もやるかどうか未定でしたが、記念映画ならばおそらくやるだろうなと予測はしていました。
——ストーリーを作られる段階で、映画のテーマをどのように定められましたか。
僕らがやりたかったこと、それはアニバーサリー映画とはいうものの、誰に向かっての記念なのか、誰に「ありがとう」と言えばいいのかという部分を明確にすることでした。そこで、仮面ライダーの原点・仮面ライダー1号、スーパー戦隊の原点・(秘密戦隊)ゴレンジャーというヒーローキャラクターを生み出した石ノ森章太郎先生にアプローチしてみたい、と思って筋書きを考えていきました。
——映画の冒頭に出てくる「仮面ライダーの物語」「スーパー戦隊の物語」が記された本ですが、整然と規格も厚さもそろっているスーパー戦隊に対して、仮面ライダーのほうは大きさも厚みも装丁もバラバラ。これは両シリーズの特徴の違いをひと目で表す、優れた演出でしたね。
仮面ライダーとスーパー戦隊の違いを何かつけておかないといけないと思って、美術部と相談しながらあの本棚の本を作っていきました。フォーマットがしっかりしているスーパー戦隊に対して、仮面ライダーは一冊ごとにまったく違っていたほうが、それらしいでしょう。
『仮面ライダーBLACK』と『仮面ライダーBLACK RX』のデザインが対になっているとか、『仮面ライダーJ』は大判の本だとか、作品の個性が本の装丁に反映されています。映っている時間はそんなに長くないですが、できれば一冊一冊つぶさに見ていただければうれしいです。希望を言えば、どこかで実際に展示して、ご覧いただきたいくらいです。小道具なので、すべての本に中身は書かれていないんですけれどね(笑)。
——異なる2つの作品のヒーローたちがいきなり出会ったとき、通常ならば誤解から一度バトルが起きたりする展開が過去にありました。今回はそういった『大戦』的なノリはほとんどないですが、これは意識的にそうなったのでしょうか。
『スーパーヒーロー大戦』ではなく『スーパーヒーロー戦記』ですから、ヒーロー同士のぶつかりあい、つぶしあいにはなりません。むしろ世界の融合によって、介人がいつものキカイノイドではなくイマジンと絡んだらどんな雰囲気になるのか、ノーザンベースの剣士たちが介人とキカイノイドに出会ったらどんなリアクションをするのか、ファンのみなさんが想像するような“IF”の部分を具体的なビジュアルとしてお見せしようという狙いがありました。「八犬伝の世界」や「西遊記の世界」では、『仮面ライダーセイバー』『機界戦隊ゼンカイジャー』以外の歴代キャラクターも参加して、コスプレも加えて楽しい画面を作るべく、頑張ってみました。
●旧1号出演の裏側
——仮面ライダー、スーパー戦隊の歴代ヒーローを向こうに回し、怪人軍団を率いて襲い来るアスモデウス役は、テレビドラマで個性的なワルなどを演じることの多い演技派俳優・谷田歩さんが起用されました。キャスティングの決め手を教えてください。
これまでに「仮面ライダー」「スーパー戦隊」のどちらの作品にも出たことのない方に来ていただこうと思っていました。谷田さんは、テレビドラマでの役柄を観ていても、非常にいいお芝居をされていると以前から思っていました。歴代スーパー戦隊レッド、歴代仮面ライダーを相手にして戦わなくてはならない「大きな悪」なので、そういったスケールの大きさを芝居で表現できる方がいいなと思っていて、谷田さんに来ていただきました。画面を観てもすごく力強い演技をされ、期待を上回る大ワルになってくださいました。アスモデウスの変身後の姿も、とても力強いデザインにしてもらったので、見るからに「強敵」という感じになりました。
——物語のカギを握る“謎の少年”役は、かつて天才子役として活躍し、今やりりしい17歳に成長された鈴木福さんが演じられていました。映画の中でも特に重要なキャラクターで、福さんの確かな演技力もあって強い印象を残しました。
お名前が挙がったとき、「ああ、この役ならやっぱりそうだよな」と思いましたよ。とても重要な役でしたし、福さんに演じていただいてよかったです。僕が抱いていたイメージにもピッタリでした。
——劇中には、石ノ森先生が当時描かれた、仮面ライダー、秘密戦隊ゴレンジャーそれぞれの決定デザイン画が効果的に使用されていますが、両ヒーローは生まれた年も違いますし、企画の経緯も異なっています。実際に石ノ森先生が『仮面ライダー』と『秘密戦隊ゴレンジャー』を創造した「事実」と映画は別なものと考えたほうがよいですか。
確かに世に出てきた時期などは違いますけれど、もしかしたら石ノ森先生の頭の中にはこの2つのヒーローを発想するヒントが頭の中にあったかもしれないですよ。現実の世界での石ノ森先生をめぐる出来事と、まったくかけはなれたフィクションというつもりでは作っていないんです。
——田崎監督は1971年の『仮面ライダー』をリアルタイムで観ていたとうかがいました。当時、まったく新しいヒーローとして生まれた仮面ライダーにどんな印象を持たれていましたか。
小学1年生でしたから、完全に『仮面ライダー』直撃世代ですね。第1話「怪奇蜘蛛男」からテレビで観ていましたよ。あのころを思い出すと、なんだか「とてつもない番組が始まったな」という気持ちがありました。同じ年に放送開始した『帰ってきたウルトラマン』(円谷プロ)が健康的な太陽の下で戦うヒーローだとすれば『仮面ライダー』は全体的に暗い、日中戦っていても常に暗さをともなう特殊なムードがありました。
本当はこれ、子どもが観てはいけないんじゃないかという感じでしたが、子ども心にそんな怖さに惹かれて、毎週観ていましたね。そのうち、本郷猛に代わって一文字隼人が仮面ライダーになって、だんだんムードが明るくなってきた。そういったシリーズのうねり、変化も含めて、子ども心にはかなり刺さった作品でした。
仮面ライダースナックのオマケでついているカードを、みんなが集めて大ブームになったのもよく覚えています。そのうちスナックを買い過ぎ、食べきれなくなって、カードだけ取ってスナックを下水に捨てる行為が出てきて社会問題になるんです。あとは、高いところから「ライダーキック」と叫んで飛び降りて、怪我をした子どもが身近なところにいました。まさに、全国の子どもを巻き込んでものすごいブームを起こしたのが『仮面ライダー』なんです。
——1975年の『秘密戦隊ゴレンジャー』を観たときの印象はどうですか。
『秘密戦隊ゴレンジャー』になると、小学校高学年だから、そろそろヒーローものを卒業じゃないけれど、だんだん観なくなる年頃にさしかかるんです。子どもの4〜5年は大人に比べてとてつもなく長いですからね。黒十字軍とイーグル組織との諜報戦であったり、機密の奪い合いであったり、スパイアクションをマジメにやっている部分と、仮面怪人とかナゾナゾとかのコミカルな部分があり、『仮面ライダー』とはまた毛色が変わっていて、明るいヒーロー像が打ち出されていましたね。メカニック特撮をふんだんに使っているところでも、この後の東映特撮ヒーローの流れを決めた重要な作品だと思います。
——予告編公開時にも話題になりましたが、今回は『仮面ライダー』の初期エピソードに登場した仮面ライダー1号、通称「旧1号」が登場し、アカレンジャーと一緒に怪人軍団に戦いを挑むそうですね。旧1号のマスク・スーツ造形がかなり当時のイメージに近くて、迫力すら感じました。
今回、すべての仮面ライダーの“はじまり”の姿として旧1号を出そうという話になったんです。マスクもスーツも、もともと展示イベント用に作ったもので、そもそも動くように作られていないんです。だからこそ、ディテールに力を入れていたんでしょうけれど、それが動いて、アクションするというのはなかなか珍しいことだと思います。現場で造形管理の人たちがこだわっていたのは、深紅のマフラーの長さと、風を受けてのなびき方、そして風がないときに肩の左右どちら側に降りているのか、といった部分でした。細かな見せ方をつないで、『仮面ライダー』放送当時の旧1号のイメージに近づけようとしました。
——スーパーヒーローの殲滅をはかる、悪の怪人たちが大勢出てくるのも、こういったヒーロー集合映画の醍醐味ですね。田崎監督が特に印象に残った怪人はいますか?
インパクトがあるのは『秘密戦隊ゴレンジャー』黒十字軍の「野球仮面」ですね。今回も、先頭きって走ってきますから。野球仮面は、ここ数年の「ヒーロー大集合」映画にはずっと出ている皆勤賞の怪人です。倉庫に入れては出され、入れては出されという感じ。
僕が懐かしいなと思ったのは『忍者戦隊カクレンジャー』(1994年)に出てきた「ドロドロ」。彼らの勇姿をぜひご覧いただきたいですね。FRPや硬質ウレタンで出来ているヒーローキャラクターと違って、怪人はラテックス製のやつが多いのですが、ラテックスは経年でどんどん腐っていくので、現存率が低いんですよ。また、『POWER RANGERS』のため海外へ送って、日本に残っていない場合もありますし。今回の映画に出てきた怪人たちは、厳しい選抜や生存競争を潜り抜けてきた、猛者ぞろいということになります。
●アクション監督も音楽も3人体制の豪華版
——『仮面ライダーセイバー』や『機界戦隊ゼンカイジャー』だけでなく、かつての仮面ライダー、スーパー戦隊からゲストとして歴代ヒーローたちがぞくぞく登場されたのも興奮を誘います。
「八犬伝の世界」では、刀の似合う2人(鈴木勝吾/シンケングリーン、水石亜飛夢/キラメイブルー)に来てもらいましたし、仮面ライダーゼロワン/飛電或人の高橋文哉くんにも登場してもらいました。また「西遊記の世界」では仮面ライダージオウ/常磐ソウゴの奥野壮くんが魔王の役割で出てきます。
彼らはすでに仮面ライダーやスーパー戦隊から飛び出し、俳優としていろんな現場に出て活躍し、今後もどんどん羽ばたいていく人たちですから、もしかしたら「変身」はこれで最後かな?と思いながら撮っていました。でもまたいつか、ヒーローの世界に戻ってきてくれる時が来るかもしれませんね。
——歴代仮面ライダー、歴代スーパー戦隊レッドと怪人軍団のアクションシーンでは、各ヒーローたちが背負う「作品」そのものの存在が強調されているのが、強く印象に残りました。
今回の映画では、アクション監督を宮崎剛さんが務められていますが、『仮面ライダーセイバー』の渡辺淳くんや『機界戦隊ゼンカイジャー』の福沢博文さんも現場に入っていて、3人アクション監督として演出にあたってくださいました。3人がいらっしゃったので、現場はとても心強かったです。今まで、アクション監督が3人集まるなんていう豪華な試みはなかったと思います。ヒーローの決めポーズや必殺技など、各アクション監督のこだわりを入れ込みつつ、それぞれのヒーローたちの個性が出せるよう、工夫を凝らしています。
——音楽についてはいかがでしょうか。
音楽も3人体制なんです。『機界戦隊ゼンカイジャー』の渡辺宙明先生、大石憲一郎さん、『仮面ライダーセイバー』の山下康介さんが、豪華絢爛な音楽の世界を作り上げ、2作品の世界を楽しんでいただくことができます。宙明先生には今回、石ノ森章太郎先生のテーマ音楽を書いてもらいました。
かつて『秘密戦隊ゴレンジャー』と『ジャッカー電撃隊』(1977年)、そして『人造人間キカイダー』(1972年)『イナズマン』(1973年)『アクマイザー3』(1975年)『透明ドリちゃん』(1978年)などでコンビを組んできた宙明先生が、石ノ森先生の曲を作られるというのは、凄いことだと思いました。50年もの時の流れを超えて、現代の生き証人として宙明先生がいらっしゃってくれたのは、本当にありがたいです。
——仮面ライダー/本郷猛として、藤岡弘、さんが出演されるのも、仮面ライダー50周年のアニアニバーサリーならではのことですね。
藤岡さんは衣装合わせの日に来られたときから、すでにものすごいオーラを放たれていましたね。劇中で藤岡さん演じる本郷猛が「サイクロン号」にまたがるシーンがあるのですが、そこではあまりのカッコよさに現場でどよめきが起きました。ぜひ、藤岡さんの勇姿をみなさんの目に焼き付けていただきたいです。
——田崎監督が思う「ヒーロー大集合映画」の醍醐味とは、どんなところですか。
誰の心にもある「子どものころに好きだったあのヒーロー」に会える、という感情を呼び起こすことでしょうかね。みなさんが懐かしいヒーローと再会していただくためには、映画の中のヒーローたちが「俺はここにいるぞ!」と存在をしっかり示さないといけません。大集合しているため、全体に埋もれて誰が誰だかわからなくなるのは困りますから、映画ではすべてのヒーローたちが可能な限り目立つことを強く意識しました。
——『セイバー+ゼンカイジャー スーパーヒーロー戦記』はセイバーやゼンカイジャーが大好きな子どもたちから、かつてのヒーローに思いを馳せる親世代まで、幅広い人たちの心を打つ作品だと思います。最後に田崎監督から本作の見どころをお願いします。
仮面ライダー50年、スーパー戦隊45作品とひと言にいいますが、放送されたエピソードの数だけ、苦心して作品を作ってきたクリエイターたちの仕事が存在しています。今回は、この2つのシリーズを今まで作り続けた人間たちの仕事の集積、それを祝いたいと思って作った映画なんです。僕は映画の「作り手」のひとりではありますが、これだけ歴代ヒーローが集結すると、時おりファンに戻ったりもして、楽しみながら取り組んでいました。ぜひ劇場にお越しになって、歴代ヒーローを観ながらしばし子どものころに記憶を戻したり、また現在の大人の視点で観ていただいたり、多様な楽しみ方をしてくださればうれしいです。

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