小池一子「無印良品の広告コピーからアートまで、人と人をつないで」

7月29日(木)8時0分 婦人公論.jp


小池一子さん(撮影:広川泰士)

コピーライターから始まり、演劇やビジュアルアート、展覧会のキュレーションなど、様々な分野で活躍するクリエイティブディレクターの小池一子さん。新著『はじまりの種をみつける』で今までの仕事を振り返り、気づいたことは——(構成=山田真理 撮影=広川泰士)

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クリエイティブディレクターはどんな仕事?


この7月から総合ディレクターを務める「東京ビエンナーレ」が始まり、85年の人生でも一、二を争う忙しさです。アメリカ人の夫からあきれられるくらい(笑)。その準備期間中に、懸案だったこの本を刊行することができてホッとしています。

本のタイトルにもつけたように、のちに仕事や作品が芽吹く「はじまりの種」を、私は探し続けてきたのだと思います。自由に育ててセンスを伸ばしてくれた両親や養父母、翻訳家・作家の道に進んだ姉(矢川澄子さん)との思い出、演劇にあけくれた大学時代の記憶。なにより、若い人に伝えたいことを一冊にまとめられてうれしいです。

振り返れば、コピーライターから始まり、演劇やビジュアルアート、展覧会のキュレーションなど、さまざまな分野をジャグリングするように、その時々でやってきましたね。

私が続けてきた「クリエイティブディレクター」は、ものづくりの現場において、それぞれのプロ同士を束ねるのが仕事。私という媒介を通して、人と人を繋げることを大事にしてきました。


『はじまりの種をみつける』平凡社 1760円

無印良品の立ち上げのコピーを担当して


私が今も関わる「無印良品」もそうです。1970年代末に西武百貨店の社長だった堤清二さんやアートディレクターの田中一光さんなど企業人とデザイン関係者が発案し、私がコピーを担当しました。

過剰包装をやめ、クラフト紙の茶色の美しさを再発見する。質素でありながら豊かな生活を送る基礎を提案し、引き算の美学を謳う無印良品は、当時新しい価値観を提案しました。今はすっかり時代が追いついて、感慨深いです。世界で愛される商品が生まれた幸運な仕事でした。

デザイナーの三宅一生さんとは、彼がパリへ留学する前の62年に出会っています。輝くばかりに美しい青年でしたよ。三宅さんに誘われて手掛けたのが、75年に京都国立近代美術館で開催された「現代衣服の源流展」。衣服を「文化」としてとらえた試みは海外の美術界から評価され、私がその後、現代アートの世界に入るきっかけにもなりました。

友人に会いたい、美しいものを見たいという欲求を阻害することが、今回のパンデミックの恐ろしいところです。しかし先日、宝塚歌劇団の公演を観に行ったとき、ファンの方々が素晴らしいマナーで舞台を楽しむ様子に感動してしまいました。人がひとつの場所で出会って繋がり、共感する喜びを私たちは忘れていない。その心があれば、未来は明るく開けると信じています。

婦人公論.jp

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