仕事を放棄し、逆ギレする40歳の新人パート社員。部長が「パワハラ」と曲解、私たちがいじめの加害者に

8月2日(月)12時25分 婦人公論.jp


イラスト:東久世

ギリギリの人数で働く職場に、新人のパート社員が入ってきた。大まかな仕事の内容はわかっているという彼女に、部員一同は救世主と期待した。ところが、メモは取らず、コピーも取れず、電話にもまともに出られない。主張ばかり強い彼女の試用期間が終わりを迎えたとき、部長からの意外な一言が……

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メモを取らず、主張だけは激しい


私の勤める百貨店の事務オフィスに、新人のパート社員が入ってきた。チームリーダーの話によると、彼女の年齢は40歳。同じ会社の別店舗に勤めていたこともあり、大まかな仕事の内容はわかっているという。当時はギリギリの人数で働いていたため、私も含めパートの仲間たちは、彼女の入社をとても喜んだ。

仕事内容は前日の売り上げをチェックすること。それが終わると、庶務的な作業も担う。なかなかハードだったが、皆、責任感を持って働いており、人間関係も良好。誰もがどうすればよりスムーズに作業が進められるかを考え工夫するのが常で、忙しくても笑い声が絶えない職場だった。

新人が入社し、私たちはいくつかの仕事を分担して、彼女に教えることに。ところが、教えると「はい」と返事はするものの、メモを取らない。全部覚えているのか? と思い、教えた箇所について質問してみると答えられない。「メモを取ってくださいね」と言うと、しぶしぶ取り始める。

メモを取らず、記憶もしない新人に仕事ができるはずもない。1ヵ月たっても、入った頃と変わらず、またそのことを恥じるでもなく、わからない仕事や、やりたくない作業は「できません」と言って私たちに押し付けていた。

そんなある日のこと。「私のホチキスがなくなっています」と彼女が騒ぎ出した。誰かが盗んだとでもいうのか。それぞれが自分用に備品を持っているのに盗むわけがない。あきれていると、「こんな引き出しでは、何をされるかわかりません。鍵付きにしてください」とわめき出す。

貴重品はロッカーに入れることになっているし、鍵の付いている引き出しなどない。そう伝えると、ブツブツと文句を言う。挙げ句の果てには、自分用の文具を買ってきて名前を書き、「これでなくなったら、犯罪ですから」と、鼻息を荒くした。

コピーは斜め、電話にも出ない


この日から、新人の態度はさらに悪化。ふてぶてしくなり、これまで以上に仕事に手を抜き始めた。仕事といっても、彼女に任されたのは、文書のコピーのみ。ほかの仕事もやらせてみたのだが、おそろしいほどなにもできない。

コピーならばできるだろうと思ったが、必要な枚数を取れない、コピーが斜めになる、保管場所を間違える……結局、私たちがやり直すことになり、ますますストレスは増えていった。

入社して2ヵ月が過ぎても、彼女は社外からの電話に出ようともしない。注意すると、こちらに聞こえるように舌打ちをし、嫌々出る。出るだけですぐほかの人に電話を回す。「自分で対応してね」と言うと、「あなただって、電話に出られるじゃない!」とすごむ。どうしてこんな態度がとれるのだろう。本来なら新人がやるべき仕事を、不愉快さをこらえながら私たちがやっているというのに。心身ともに負担は増すばかりだった。

このままではいけない、と思い、新しい業務を彼女に与えた。内容は、棚卸し用のチェックリストの作成。3日もあればできる仕事なのだが、彼女は10日かかった。「締め切りは30日だからね」と伝えると、「忙しいんです! 命令しないでください!」とキレる。やっと完成した文書を確認してみると、4分の1が間違っていて、それを指摘すると、ヘラヘラ笑いながら「たまたまですよ〜」とごまかす。謝ることはない。

こんないい加減な仕事では、他部署の業務にまで支障をきたしてしまうことになりかねない。私たちは、「彼女のやった作業の確認」という、余計な仕事までしなければならなくなった。

〈集団いじめ〉ととらえられ


不満が募っていくなか、彼女の試用期間が終わろうとしていた。辞めさせるなら今しかない。この惨状を同じ部屋で働く上司である部長は見ているはずだ。以前のように円滑に仕事を進めていきたい。それが私たちの切なる願いなのだ。

しかしある日のこと、新人が席を外した時、突然、部長から皆に招集がかかった。集まった私たちに、彼から厳しい声が。「パワハラをしている人間は、それがパワハラだと気づいていない。君たちは集団で新人をいじめて、恥ずかしくないのか!」。彼女が不在の時は、私たちは以前のように和やかな雰囲気で仕事ができるが、彼女が加わると、緊張とどんよりとした空気が漂う。部長はそれを〈集団いじめ〉ととらえていたのだ。

実際がどうであれ、被害者の証言があればパワハラは成立してしまう。新人にキレられ、威嚇されていたのは私たちだ。ずっと、我慢してきたのに。さらに部長は、「自分たちの給料が、どこから出ているのか考えたことがあるのか!」とまで言い出した。私たちは新人の分まで働いているというのに、当の新人は、仕事をしなくても、同じ給料をもらっている。彼の言葉は、彼女にこそ言うべきだろう。一方的な物言いに、私たちは黙って聞いているしかなかった。

戻ってきた彼女がニヤリと笑う。それからは当然のごとく、電話の対応を周りの人に押し付けるようになった。もちろん注意したいのだが、部長の視線が気になって何も言えない。

被害者だった私たちは、いつの間にか加害者になっていた。もう、新人に間違いを指摘することもできない。モヤモヤとした思いが膨らんでいく。

次の日、少し遠方まで昼食を買いに行った。できるだけ職場から離れたい。通りかかったファミレスに目をやると、仲良く肩を並べて話す部長と彼女の姿が。そうか、そういうことだったのか。

脱力感とともに、これからのことを考えた。権力者である部長を味方につけた新人は、ますます好き勝手をするだろう。彼女に対抗する手段を持たない私は、思わず求人誌を手に取っていた。

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