米インディーズ映画のカリスマ監督、25年ぶりの日本劇場公開『スウィート・シング』
2021年8月3日(火)10時5分 シネマカフェ
スティーヴ・ブシェミ、シーモア・カッセル主演の『イン・ザ・スープ』(1992)やクエンティン・タランティーノ、ロバート・ロドリゲスらと共同監督した『フォー・ルームス』(1995)などで知られ、ジム・ジャームッシュと並んで米インディーズ映画のアイコンであるアレクサンダー・ロックウェル。
ロックウェル監督の日本での最後の劇場公開作は『フォー・ルームス』。その後もブシェミやジェニファー・ビールス共演の『13 rooms』(2002)や日本では配信のみの『ピート・ スモールズは死んだ!』(2010)など人気作ながら劇場公開されず。ロックウェル自身がニューヨーク大学で教鞭をとっていることもあって寡作になり、本作は待望の新作となった。
本作で描くのは、親に頼ることができず、自分たちで成長していかなくてはならない15歳のビリーと11歳のニコの物語。子育てができない親たちという現代社会の問題を描きながらも、16ミリフィルムで撮影された美しいモノクロとパートカラーの映像は詩的で美しく、『スタンド・バイ・ミー』も彷彿とさせる子どもたちの冒険は幸福感に満ちる。
主役を演じるのは、監督の実の子どもたち。姉ビリー役を娘のラナ・ロックウェル。弟ビリー役を息子のニコ・ロックウェル。実際のパートナーであるカリン・パーソンズが母親イヴを、『イン・ザ・スープ』 からの盟友で、近年は『ミナリ』にも出演したウィル・パットンが問題を抱える父親アダムを演じる。
また、 全編を彩る音楽も本作の魅力の一つ。タイトルにもなっているヴァン・モリソン「Sweet Thing」やビ リー・ホリディ、テレンス・マリック『地獄の逃避行』のサウンドトラックの引用など、ロックウェルの音楽センスにも注目。
なお本作は、2020年2月ベルリン国際映画祭ジェネレーション部門にてワールドプレミア上映され、最優秀作品賞を受賞。同年、東京国際映画祭でも『愛しい存在』というタイトルで上映されている。
『スウィート・シング』は10月29日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、新宿シネマカリテ、アップリンク吉祥寺ほか全国にて順次公開。