PTA、前例踏襲主義の限界 40年前とやることは変わらない

8月3日(土)16時0分 NEWSポストセブン

「役員決め」は入学式が終わった後、そのまま行われることも少なくない(写真/PIXTA)

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 長かった梅雨が終わり、とうとう迎えた夏本番。太陽はさんさんと輝くが、夏休みに突入した小学生の子供を持つママたちのグループからはため息が聞こえてくる。


「世帯数が少ないから、今年はプールの監視当番が2回も回ってきた」

「学区パトロールで割り当てられた日は、前々から実家への帰省が決まっていた。当番を変わってくれる人を見つけるのに一苦労」

「子供が楽しみにしている保護者同伴のキャンプ。下の子の世話があるから、夫に行ってもらいたいのに、まったく協力しようとしない!」


 子供は学校が休みで毎日家にいても、PTA活動は夏休みにも動きがある。忙しいママたちにとって、「面倒くさい」というのが本音だが、その背景にあるのは、必ずしも“やる気がない”ばかりではない。


 今年、長女が小学校に入学し、初めてのクラス委員を務めるA子さんは言う。


「毎年恒例の夏祭りの出し物の話し合いで、せっかくならとインターネットでリサーチをして、他校で行われていた楽しそうなイベントの提案をしてみたところ、『前例がないことはやりたくない』と本部役員がすべて却下。噂には聞いていましたが、ここまで前例踏襲主義だと、参加していてもおもしろくない」


 A子さんの言うように、「前年通りにやること」を目的にしているPTAは多い。PTA問題に詳しいジャーナリストの大塚玲子さんは、指摘する。


「“例年通り”は最も安全な道。みんなに『これでいい?』と意見を聞かなくても反論が少なく、『どうして変えたの?』という批判も生まれにくい。そうやって“例年通り”が繰り返されるうちに、“例年通りであること”が目的化されてしまうのです。しかし、これでは一体、何のためのPTAなのかわからない」


 近年、「ブラックPTA」とも呼ばれ、ネガティブなイメージが定着しているその原因は、「子供たちのため」という本来の目的を忘れ、波風を立てないように建前だけの活動を強制的に行う「PTAのためのPTA」になってしまっていることが大きい。そんな状況を変えるには、「夏休みが勝負」と大塚さんはアドバイスする。


「特に小学校はPTAの仕事が多く、2学期が始まると一気に年度末まで駆け抜けます。すると、また同じように新年度が始まってしまう。何かPTAを変えたいと考えているなら、夏休みから根回しをして、『来年度はこう変えてほしい』ということを少しずつ役員にアプローチしておくチャンスです」


「どうせ変わらない」とあきらめてはいけない。


◆「みんな平等」にするために、必要のない仕事が増える悪循環が生まれている


 しかし、どのように変わるべきなのか。まずはPTAの歴史をおさらいして、ヒントを得たい。


「PTA」とは、〈Parent(親)—Teacher(教師) Association(組織)〉の略。終戦直後の1946〜1947年にかけて、連合国軍最高司令部(GHQ)の指導によって全国の学校に設置された。


「子供たちの環境をよくするため親と先生が協力しようという任意の団体で、当初は大人たちに民主主義を学ばせる場としての役割を果たすことも期待されました」(大塚さん)


 それから70年あまりが経過して、PTAをめぐる環境は大きく変化している。


 7月2日に厚生労働省が発表した「2018年の国民生活基礎調査」によると、18才未満の子供がいると答えた世帯で、「働いている」と答えた母親は72.2%。調査を始めた2004年から20%近くアップし、過去最高を更新した。


 さらに、経済協力開発機構(OECD)が世界48の国と地域の中学校教員について調べた結果を6月19日に発表。日本の教員の仕事時間は週56時間で、世界平均の38.3時間を大幅に上回りトップ。しかし、授業時間は18時間で、世界平均20.3時間を下回るという現状が明らかになった。小学校を対象にした同調査でも、日本の教員の仕事時間だけが唯一50時間を超えた。


 多忙を極める現代の「親」と「先生」をつなぐ組織であるPTAが、「例年通り」を維持しようとすればするほど軋轢が生じるのは当然のことだ。


「40年前の本を読んでも、PTAの活動に関しては今とほとんど変わらないことが書いてあります。しかし、40年前は専業主婦が多く、きつく強制しなくても参加するお母さんがまだいた。専業主婦が減少し、『やりたくない』という空気が強まったのは’80年代くらいからでしょう。


 さらに学校側が、同じ人がずっとPTA役員をやることで力を持つようになるのを嫌がり、『みんなで少しずつ分担しましょう』と声がけしてきたことも、現代の『強制的PTA』につながっていると考えられます」(大塚さん)


 任意のボランティア団体であるにもかかわらず、全員が平等にPTA活動をやるために、必要のない仕事を増やすという悪循環が起こっているケースもあるという。


 強制参加が当たり前になると同時に、嫌われ度もアップ。「エッセオンライン」が7月に公開したアンケート調査では、PTAを好意的に捉えている人は312人中わずか23人という結果が報告されている。


 PTA組織には、大きく「委員(クラス役員)」と「本部役員」がある。各クラスごとに選出する「委員」は、「学級委員」を筆頭に、広報誌を作る「広報委員」、講習会などを開催する「文化委員」、パトロールなどを行う「校外(安全)委員」などがあり、子供が卒業するまでの間に必ず1年は何かしら担当するという学校が多い。小学校の場合は、卒業式関連の準備がある6年生の時が敬遠され、低学年のうちに委員を済ませたがる保護者が多い傾向にある。


 その委員をまとめ、PTA全体の運営に携わるのが「本部役員」で、会長、副会長、書記、会計などがある。


 メディアでよく取り上げられる新年度の「役員決め」は主に「委員決め」のことで、誰かが引き受けるまで、数時間を要するがまん比べになることも珍しくない。


 一方で、本部役員は前年度から内定していることが多い。長女が小学6年生、次女が4年生の時から3年間PTA会長を務めた俳優の宮川一朗太(53才)は、会長になった経緯をこう振り返る。


「ある日、玄関の前に2人の女性が立っていて、『PTA会長をやってください』とお願いされました。『現会長がどうしても引き受けられなくなって、なり手がいないんです』と頼まれ、即答はできなかったのですが、やむなく引き受けました。歴代、自営業者や専業主婦など比較的時間に融通の利く人が役員をしていたこともあり、自然と白羽の矢が立ったようです。ぼくの断れない性格を見越して言ってきた面もありましたけどね(笑い)」(宮川・以下同)


 その際、「入学式と運動会と卒業式の3回だけあいさつしてくれればいい」と説得されたそうだが、現実には、4月だけで5回もあいさつの場があったという。


 入学式前に行われた初めての会議で、宮川は学校の「裏の顔」を見る。


「保護者側と先生が、いきなり言い争いになって。『行事の予定表が回ってこない』『こっちは多忙な中、調整しているんだ』と半ばけんか腰の話し合いで、これはまずいなと。入ってきたばかりの人間が指摘するのも気が引けたので、1年間を通して直していこうと決めました」


 笑顔を絶やさず、場が和む話題の提供を積極的に行い、笑い声が起こる会議へと変えていったという。その頃、PTA役員の中で、男性は宮川ひとりだった。


「他校も含め、90%以上がお母さんでした。ドラマなんかで描かれる“ボスママ”のような人は実際には滅多にいませんが、男ばかりの国会がおかしいのと同じで、女性だけのPTAもどこかしらいびつさが生まれるんです。たとえば、不審者の問題などは、男性も参加して話し合うことが必要。父親がもっと参加しなければならないと、ぼくは言い続けています」


 宮川のような意見もあり、男性の参入も増えてきているが、現実はまだまだ「お母さんの会」だ。


※女性セブン2019年8月15日号

NEWSポストセブン

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