越乃リュウ「宝塚の〈爽やかな青年役〉に憧れるも、あー、私は髭の顔なんだ…と自覚した3年目の夏」

8月4日(水)12時25分 婦人公論.jp

圧倒的なオーラを放つトップスターの存在、一糸乱れぬダンスや歌唱、壮大なスケールの舞台装置や豪華な衣裳でファンを魅了してやまない宝塚歌劇団。初の公演が大正3年(1914年)、今年で107年の歴史を持ちながら常に進化し続ける「タカラヅカ」には「花・月・雪・星・宙」5つの組が存在します。そのなかで各組の生徒たちをまとめ、引っ張っていく存在が「組長」。史上最年少で月組の組長を務めた越乃リュウさんが、宝塚時代の思い出や学び、日常を綴ります。第2回は「髭の似合う男役」です

* * * * * * *

初めての髭は、入団3年目


宝塚歌劇の最大の魅力は、「男役」という存在にあります。
宝塚の男役といっても それぞれ個性があります。

爽やかな青年が似合う人。
落ち着いた男性像が似合う人。
体育会系のエネルギッシュ系。
またはフェアリー系、など。
その人のカラー そして個性で多種多様な男役が存在します。

わたくしはと言いますと、
「爽やかな青年役」
は、21年間一度も回って来なかったです。ハイ、残念ながら。
清々しい若者の役に密かに憧れを抱いておりました。

初めて髭をつけたのは
入団して3年目くらいのときでした。
宝塚では入団して7年目までを新人と呼び、1ヵ月間の本公演中に一度だけ、
新人だけで公演をする「新人公演」というものがあります。
初めての髭はその新人公演でした。


退団して髪を刈り上げた頃のポートレイト(写真提供◎越乃さん)

ゆとりを保たせて、山ができるイメージ


髭 はどのようにつけると思いますか?
糊かテープでくっつけてるのでは? と思われるでしょう。

いいえ!

「ただ貼り付ければいい」というものではございません。

舞台ですので、歌って踊りますし、遠くのお客様まで届くよう、台詞はハッキリと。
顔筋を大きく動かし、大きな声を出します。
そのため、髭が取れる、剥がれてしまうという恐れが付き纏うのです。

なんせ髭は数々の事件を生みます。
髭が剥がれてしまうなど、あってはならないのです。

まずは上唇の真ん中に髭糊をつけます。
髭にゆとりを保たせて、山ができるようなイメージで貼りつけます。
その際軽—くドライヤーなどで風を当てると粘着力が増します。

ポイントは、全面に糊をつけずにゆとりを持たせること。
これが重要なポイントになります。
口を開けたときに髭も伸びるように。
いつかつけることがあれば是非ご参考に。

普段メイクの顔に髭…


さて、話は戻ります。

初めてつけるとなった時、上級生の方が
「髭を稽古場でつけて経験してみてはどうか」と
アドバイスしてくださいました。

皆さん、想像してみてください…。
稽古場でのわれわれは、普段のナチュラルメイクなわけで
いわゆる「宝塚メイク」は舞台でしか披露いたしません。

宝塚メイクというものは
大きな舞台と豪華なお衣装、壮大な装置、迫力のある音響、
そして鬘など、すべてがそろって成り立つものだと思うのです。

ですので、稽古場で髭をつけるとなれば、
普段の可愛らしい? お顔に髭をつける事になります。
そう、見た目の違和感が生まれます。
そうなるであろうと容易に想像できましたが、せっかくいただいた先輩のアドバイス。
私自身もつけてみたかったのもあり、装着してみました。

するとどうでしょう。
想像を遥かに超えて、素顔でもなかなか似合うではありませんか。


髭の似合う男役…? スマホのアプリで変身!(写真提供◎越乃さん)

うっとり…はいたしませんでしたが
あー私は髭の顔なんだ…と自覚した3年目の夏でした。

それからというもの、数々の髭をつけていろんな人生を演じてきました。
長年連れ添った髭とのお別れはできず、
今後の人生でまったく役に立つことはないであろう自前の髭を
今も大切にしまっています。

次回は「実直な人 珠城りょうさん」のお話です。


※次回の配信は、8月18日(水)の予定です

婦人公論.jp

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