「4カ月で体重を20キロ落とすのは、ものすごく大変でした」皆川猿時(松澤一鶴)【「いだてん〜東京オリムピック噺(ばなし)〜」インタビュー】

8月4日(日)20時50分 エンタメOVO

松澤一鶴役の皆川猿時

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 1932(昭和7)年、ついにロサンゼルスオリンピックが開幕。総監督を務める田畑政治(阿部サダヲ)と共に水泳日本代表チームを率いるのが、監督の松澤一鶴だ。暴走気味の田畑を抑えつつ、選手たちの話にも耳を傾け、チームをまとめていく。演じるのは、田畑役の阿部や脚本家・宮藤官九郎と同じ「大人計画」所属の皆川猿時。長年身近に接してきた阿部や宮藤とのエピソードを交え、撮影の舞台裏を語ってくれた。



−第29回、若手中心の選手起用でメダル獲得にこだわる田畑と、ベテラン選手たちの心中を察して反論する松澤のやり取りが素晴らしかったです。

 あらぁ、ありがとうございます(笑)。この作品で阿部くんと共演した中で、一番印象に残っているシーンです。メダルを取ることで日本を明るくしたいという、田畑の真意を知る重要なシーンなんですけど、実は僕、泣こうとしてたんです(笑)。盛り上がるじゃんって。芝居で一回も泣いたことないくせに、「阿部くん相手に本気の涙を出してみようじゃないか」と意気込んで臨みました。でもねぇ、実際に芝居をしてみたら、ものすごく照れくさくて…。結局、全然泣けませんでした(笑)。撮影後、阿部くんに「俺泣こうとしてたのよ」って伝えたら、「うそだろ?気持ち悪い!」と言われました(笑)。

−改めて、松澤役のオファーを受けたときのお気持ちを。

 最初にお話を聞いたときは、監督だから選手に指示を出すだけだろうと考えていたんです。だから「楽そうでいいじゃない」と思ったら、「泳いでもらいます」と言われ…。「あれ?なんか違うな…」と思いながら、頂いた資料を読んでみたら、東大出の理系の人で、熱意を持って理論的に指導していた…と書いてある。でもその一方で、みんなから「おデブさん」と呼ばれ、酒飲みで宴会好きないじられキャラ…とも書いてあって、「僕にぴったりじゃない」と思っていたら、今度は「痩せろ」と言われ…。だから、「思ってたのとだいぶ違うんですけど」って感じでした(笑)。

−減量はどのように?

 オファーを受けて「やります」と答えたら、その場で「(伝説のスイマーを若い時代から演じるため)25キロ減量して」と言われまして(笑)。ただ、「さすがに25キロは…」と思い、「とりあえず20キロでどうでしょう」と言ってみたところ通ったので、ホッとしました。でも、それからが大変で…。お酒を抜き、食事を野菜中心にして、4カ月ぐらいかけて108キロから88キロまで落としました。ここまでしないと痩せられないのか…と、つくづく思いました(笑)。

−それはかなり大変でしたね。

 しかも、ちょうどその時期、宮藤さん作・演出の舞台の本番中だったんです。宮藤さんに「今、ダイエット中なんです」と伝えたら、「今痩せられると困る」と言われ…。だったらなぜ、「おデブさん」という部分を掘り下げてくれなかったんだと(笑)。しかも、「そんなに痩せなくていいよ。おなかを引っ込めれば、それらしく見えるんじゃない」みたいなことを簡単に言われて。僕にしてみれば、「あなたは何を言ってるの?」って感じでした(笑)。

−松澤一鶴という人物を、どんなふうに捉えていますか。

 松澤さんは秀才コースを歩んできた人なんです。大学卒業後、家業を継いで働きながら後輩の水泳の指導に当たっていたそうです。しかも、何の見返りも期待せず、優れた選手を育てたいという思いだけで。それで温水プールまで作ってしまったり、それはもう、並大抵の情熱ではなかったんだろうなと。田畑さんのことも本当に大好きだったんでしょうね。勝っちゃん(高石勝男/斎藤工)にまーちゃん(田畑)の魅力を伝えようとして、うまく説明できない場面(第28回)がありましたが、なんでしょうね、2人は理屈ではなく、気持ちでつながっていたんだろうな…と。

−演じる上で心掛けていることは?

 僕は全く理系の人間ではないし、どちらかというと「とにかく頑張れ!」みたいな雑なタイプなので、松澤さんとは正反対。プロデューサーさんからも、「理系の大卒ですから」と強く言われていたので、できるだけ頭がよく見えるように(笑)、ええ、意識しながら演じています。

−今回、改めて共演した阿部さんの印象は?

 田畑はせりふの量がものすごく多いので、阿部くんに「どうやって覚えるの?」って聞いてみたら、「黙読で覚える」と答えたので、びっくりしました。僕は、せりふを口になじませないと不安なので、何度も口に出して覚えるのですが、阿部くんは黙ったまま頭で覚えて、リハーサルのときに初めて口に出すんだと。肝が据わっているというか、なんというか…。初めて口にする時の雰囲気を楽しんでいるのかな…。いやいや、とても楽しめるようなせりふの量ではありませんよ(笑)。もうね、やっぱり天才だと思います。

−宮藤さんの脚本の魅力は?

 もうだいぶ長い付き合いですが、演出家としての宮藤さんに対して、昔は「怖い」というイメージしかなくて(笑)。笑いに対するこだわりがものすごく強く、稽古も厳しい。最近は丸くなりましたけどね(笑)。敗者に光を当てた「いだてん」を含め、最近の作品を見ていると、面白さだけでなく、とても優しい人なんだろうな…と感じるようになってきました(笑)。例えば、田畑は女性に対してもひどいものの言い方をしますが、愛嬌(あいきょう)があるから誰も傷つけない。主役だろうが脇役だろうが、どのキャラクターにも愛嬌があるっていうか、同じように愛情を持って寄り添っている感じがします。舞台でも映像でも、そういう点は一貫していると思うし、カッコいいですよね。

−今後の松澤の見どころは?

 泳ぐのは、もうね、とても苦労しました(笑)。練習した日本泳法は、普通の泳ぎ方とは足の使い方も違うし、頭を出したまま泳がなければいけない。しかも、撮影は4月頭の寒の戻りがあった時の夜間。気温も一桁台という状況だったので、温水プールにもかかわらず、ものすごく水が冷たくて…。撮影が終わったときは達成感よりも、「無事に終わった…」という安堵(あんど)感の方が大きかったですから。もうね、阿部くんと2人で「死ななくてよかった…!」って(笑)。ロサンゼルスオリンピックの最後に披露する場面がありますので、もうね、僕にとってもハイライトですので、ぜひ見ていただきたいです。よろしくお願いします(笑)。

(取材・文/井上健一)

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