藤原竜也『そして、誰もいなくなった』 満足度トップの理由

8月6日(土)16時0分 NEWSポストセブン

番組公式HPより

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 視聴者がネットを通じて随時ドラマの印象を語り合うのはもはや当たり前の時代だ。そのせいもあって、制作側の「予定調和」は通用しづらくなっている。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が指摘する。


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 いよいよ夏ドラマも中盤へ。どのドラマが人々の関心を惹きつけているでしょうか? 視聴率トップは……『家売るオンナ』(日本テレビ系水曜午後10時)。しかも、4話連続で二桁キープは、なんとこのドラマ1本だけとか。結婚したばかりの北川景子さんが主役。以前にも増してのびのびと、強く美しく輝いています。


 では、夏ドラマのスタート時の視聴者期待度は? データニュース社「テレビウォッチャー」(調査対象全国3000人)アンケートによれば、「初回」の満足度トップは藤原竜也主演『そして、誰もいなくなった』(日本テレビ系日曜午後10時30分)。


 このドラマに多くの人が期待を寄せていたことはたしか。では、中盤へ向けてはどうでしょう? 残念ながら、なぜか『そして、誰もいなくなった』の視聴率は少しずつ低下中。でも、私個人としては失速どころか、めくるめく展開に引き込まれたまま。速度感に満ちたスリルな世界に目が離せません。


 主人公はコンピューターシステム開発会社の優秀な社員、藤堂新一(藤原竜也)。仕事も順調で結婚も決まり幸せな生活のさなか。同姓同名の「藤堂新一」が逮捕されるという不可思議な事件が起こり、順風満帆な人生は一気に崩壊へ向かって走り出す。折りしも「マイナンバー」導入というこの時期。個人が記号で仕分けされるという現実の中で、もし自分のナンバーが乗っ取られたら?


「私とはいったい誰なのか」という骨太なテーマを軸に、周囲の裏切り、唐突な自殺、見えない企み……ぐいぐいと引き込まれるこのドラマ。見所を、3つあげてみると。


●その1 配役の絶妙さ


 藤堂新一を演じる藤原竜也は、スリリングな展開にドンピシャの役者。10代のスタート地点から蜷川芝居という逃げ場のない舞台で磨かれてきた人だけに、ここぞ、という場面で全身の力を込めて叫ぶ。その瞬間、画面がギュッっと引き締まる。


 テンションの高さ、緊張感、集中力はズバ抜けています。ふと、藤原さんが甘いマスクを持っていることなんて忘れさせてくれるくらいの迫力。


 一方、主役を取り巻く配役のバランスの良さも注目です。藤堂の同窓生には玉山鉄二、今野浩喜、ミムラ。3人をラインナップするあたり、役者好きにはたまらない。玉山さんは、冷血なエリート官僚役。ぴくりとも表情を動かさない。ハンサムなその横顔をまるで彫像のように静止させ、よけいなセリフを吐かず佇む。という演出から、玉山さんの魅力がじわり滲み出てくる。


 対照的なのが、お笑い芸人出の今野浩喜さん。すぐ身近にいそうな庶民的風貌だけれど、実は芸は細かく演技的感覚の冴えた役者。と、まったく違うタイプの二人を配置した上で、もう一人の同窓生を割り込ませる。それが、謎めいた元恋人役のミムラさん。透き通った美貌の奥に、何か得たい知れないどす黒い闇が広がっていそうなキャラを、見事演じきっています。


 弁護士役の鶴見辰吾、藤堂の上司にヒロミ、婚約者には二階堂ふみ……多種多様な配役がメリハリを生んでいます。バーテンダーにはHey!Say!JUMPの伊野尾彗くんを抜擢。いつものチャラさ封印して、役柄によくはまっています。


 そう、「さまざまなタイプの役者を見る楽しさ」がこのドラマには溢れているのです。


●その2  3D的脚本のスリル感


 オリジナル脚本の担当は秦建日子(はた・たけひこ)氏。劇作家・つかこうへいに師事し、小説「推理小説」「アンフェア」等数々の作品でヒットを飛ばし、映画監督に舞台と、テレビドラマ外の領域も幅広く手がけている人。(ついでながら父上は作家・秦恒平)


 3D的立体感に満ちた脚本、幾重にも張られた伏線、謎と謎とが交叉し、突然接点を見せたり、すれ違ったり。いきなり本筋に絡んできたり。異なる場面、キャラクター、出来事を突き放したりつなぎ合わせたりしながら、スピーディーに展開する手さばき、さすがです。


 散乱していく謎。バラバラの謎がいったいどうやって一つに組み立てられ、建築物のようにして結末が姿を現すのか。期待が膨らみます。


●その3 東京の街角への愛が滲むロケ


 あ、あそこは神田の万世橋付近のレンガの壁だ。あ、あれは吉祥寺の古いマンションだ。東京出身者としては、見知っている場所が次々に登場する楽しさ。街角の映像が印象的に丁寧に使われていることも魅力です。


 古い建物や路地のリアリティ、店構えや家具の手触り。人工的なセットでは味わえない時の経過が醸し出す陰影。一つのシーンを撮るために、丁寧なロケを重ねていることがひしひしと伝わってくる。ドラマ全体から、「町への愛」が漂ってくるのです。


「全体プロットはあえて書かず、各話のプロット打ち合わせもせず、毎回、ひたすら自由にシナリオ初稿から入らせてもらってます」(脚本・秦氏の公式ブログ)。


 このドラマの最大の魅力とは、予定調和から自由なことかもしれません。失速することなく最後まで、めくるめく世界を描き出し走り切って欲しいと思います。 

NEWSポストセブン

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