「梨泰院クラス」監督が明かした「セロイの髪型誕生秘話」と「絶対に使いたかったあの名言」【独占インタビュー】

8月8日(土)18時0分 文春オンライン

 日本でも人気が続いている韓流ドラマ「梨泰院クラス」。このドラマを演出し、韓国はもちろんアジアでも大ヒットさせたのが、韓国ドラマ界で“神の手”とも呼ばれる名物監督キム・ソンユン氏だ。


 韓流ドラマの定番テーマである「復讐」という素材を、感覚的な演出でクールに描き出すことで青春モノの成長物語として成功させたキム・ソンユン監督に、「梨泰院クラス」の製作の舞台裏、主演のパク・ソジュンさんの素顔、さらには日本のファンへの思いまでを聞いた。



主人公のパク・セロイ(パク・ソジュン)(Netflixオリジナルシリーズ『梨泰院クラス』独占配信中)


◆ ◆ ◆


なぜ「梨泰院クラス」をドラマ化したのか?


——「梨泰院クラス」は有料読者1000万人の大ベストセラーとなったウェブコミックが原作です。どんな魅力に惹かれてドラマ化を決めたのですか?


「『復讐と成功』の物語は、これまでの韓国ドラマでも多く取り上げられた素材ですが、私がこの原作に惹かれたのは、ストーリーというよりキャラクターの魅力からなんです。いかなる苦難にも、信念を曲げない主人公のパク・セロイ(パク・ソジュン)をはじめ、天才的な支援者でありソシオパスのイソ(キム・ダミ)、そして『クルバム』(セロイが経営する店。ドラマでは『タンバム』)の仲間、『長家』一族など、一人一人が個性的、魅力的なキャラクターで溢れているのが、この原作の強みです。復讐モノですが、『既成世代』に対する若者たちの反抗の物語でもあるという、原作のメッセージも気に入りました。


 問題は、キャラクターの魅力を生かしながら、原作のスピード感をそのままドラマに持ち込むことでした。すでに、市場性が検証されたベストセラーのウェブコミックが原作だといっても、ドラマとは“呼吸”が異なるため、脚色が容易ではありませんでした」


——脚本は、ウェブコミックの原作者が担当しました。原作者が直接脚本を書く長所は何でしょうか?


「韓国の連続ドラマでは、原作者がドラマの脚本を書くことはほとんどありません。ドラマと原作となる文学作品とは、呼吸が全く違うからです。例えば、原作をドラマに脚色すると、絶えず縦糸と横糸のように組み込まれている人物間の感情線を、ドラマの“呼吸”に合わせて再構成する必要があります。その過程で、主人公の感情線が一つだけ変わっても、それによって『蝶の力学』のように人物間の感情ラインが変わってしまい、原作から遠ざかってしまう恐れがある。一つの設定を変えるだけでも、原作の魅力を失ってしまう危険性が大いにあるのです。


 今回の『梨泰院クラス』のように、叙事がしっかりしていてキャラクターが魅力的な作品は、原作の雰囲気をそのまま持っていくのがいいと判断しました。原作者のクァンジン氏に会ったとき、原作で果たせなかったエピソードや、心残りになっている部分があることを聞きました。(ドラマで)その部分を埋めることができたらと、クァンジン氏と意気投合しました。結果は期待以上でした。原作と違う点はいくつかあったのですが、それはエピソードの補強や、テンポを維持するために補強や省略をした部分。原作者が直接脚本を書いたので、原作の筋に沿っている作品になったと思います」


セロイの髪型の“実験台”になったのは……


——ドラマの製作前には、どんなことに重点を置いて準備しましたか?


「飲食業界の“ダビデとゴリアテの戦い”ですから、ポチャ(屋台をコンセプトにした韓国式飲み屋)だけでなく、フランチャイズ業界全般に対する取材も行いました。業界のほとんどの社長たちは、『タンバムのような小さな屋台店がフランチャイズに勝つことは現実的に不可能な話だ』と言いますね(笑)。厨房の料理人マ・ヒョニ役を演じるイ・ジュヨンには、(ドラマ中で出演する料理対決番組)『最強ポチャ』のエピソードのために、料理の練習をしてもらいました。


 演出ポイントは、原作のキャラクターをドラマで具体的な形にすることです。各キャラクターの実写化については、議論を積み重ねました。俳優側のスタイリストとドラマチームの衣装スタッフが集まって、原作のキャラクターのスタイルをいかに具現化するかについて、何度も会議をしました。


 たとえば、パク・ソジュンさんのスタイリストとドラマスタッフは、セロイのトレードマークである、あのヘアスタイルについて話し合いました。セロイのヘアスタイルはキャラクターを現わす上で欠かせないものですが、パク・ソジュンさんに似合うかどうかが悩みどころでした。一度髪を切ってしまうと元には戻らないので、『少しだけテストカットをしてみてはどうか』という意見が出ました。


 ところが、テスト撮影の時からパク・ソジュンさんがすでに完璧な“セロイカット”をしてやってきました。びっくりしてよく見たら、パク・ソジュンさんのマネージャー2人も同じくセロイ・カットをしていました。パク・ソジュンさんのために、見本として実験を申し出たそうです(笑)。


 キム・ダミさんは原作では金髪ですが、金髪よりはツートンオンブレが似合いそうだと本人がオファーしてくれたので、ドラマでのスタイルが完成しました。


 青春モノは、(若い俳優たちの)バイタリティがなにより肝心なので、芝居のアンサンブルのため、俳優たちは頻繁に集まって、台本の読み合わせなどの稽古を重ねながら親しくなっていきました」


ハロウィン祭りの撮影は大変だった


——ドラマ製作のため、梨泰院を何度も訪れたことと思います。監督にとって梨泰院とはどんな場所ですか? 梨泰院のどんな魅力をドラマで伝えたかったのですか?


「梨泰院は、ソウルの中でも多国籍、多文化の人々が集まっていて魅力あふれる町です。町を訪れるのも20代後半から30代が多く、ナムサン(南山)やソウルのきれいな夜景がよく見えるため、青春モノには魅力的な場所です。


 問題は、梨泰院には坂が多く、路地が狭いため、ドラマを撮影する環境としてはあまり適していないことです。主人公がポチャを運営しているため、夜の撮影が多いのですが、街を行き交う人がとても多い時間帯でもあるので、撮影にはだいぶ苦労しました。


 最も記憶に残っているのは、ハロウィン祭りの撮影です。梨泰院では、毎年10月に大規模なハロウィン祭りが開かれます。(実際のハロウィン祭りを)撮影するのは大変なので、別の場所での撮影や特殊映像に代えることも考えました。それでも、セロイが梨泰院に根を下ろすことになる重要なシーンなので、その臨場感や雰囲気をそのまま伝えた方が良いと思い、ハロウィン時期に合わせて撮影を強行しました。実際に大変な撮影だったので、(ハロウィンのシーンの)撮影が終わった日には、スタッフと俳優たちが、まるでドラマの打ち上げのように喜びました(笑)」


——セロイは、現実では見かけないほど粘り強くてまじめな青年です。韓国では、セロイのリーダーシップについてもたくさんの記事がありました。監督がセロイを通じて、あるいは、ドラマを通じて世の中に投げかけたかったメッセージとは何ですか?


「原作者のメッセージを、監督としてドラマに忠実に反映できたかどうかは分からないですが……セロイのこのセリフだけは、ドラマで絶対に生かしてみたいと思っていました。


『今1回、最後に1回、もう1回。一瞬は楽になる。だけど繰り返すうち、人は変わる』(第3話)」


( 後編 に続く)


韓流ドラマ「梨泰院クラス」監督が語った「半沢直樹」と「パク・ソジュン配役のワケ」【単独インタビュー】 へ続く


(金 敬哲/Webオリジナル(特集班))

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