韓流ドラマ「梨泰院クラス」監督が語った「半沢直樹」と「パク・ソジュン配役のワケ」【単独インタビュー】

8月8日(土)18時0分 文春オンライン

「梨泰院クラス」監督が明かした「セロイの髪型誕生秘話」と「絶対に使いたかったあの名言」【独占インタビュー】 から続く


 日本でも大ヒットしている韓流ドラマ「梨泰院クラス」。このドラマを演出し、アジアでも大ヒットさせたのが、韓国ドラマ界の名物監督キム・ソンユン氏だ。キム監督に、 前編 に引き続き、ドラマ製作の舞台裏や日本のファンへの思いを聞いた。


◆ ◆ ◆


恥ずかしい台詞も格好良く聞こえる「俳優の力」


——セロイとイソなど、主要キャラクターをキャスティングする際に、もっとも重点を置いた点は何ですか?


「セロイというキャラクターには堅物なところと、たぐいまれな魅力が必須でした。誰が主人公に相応しいのか話し合っていたら、パク・ソジュンさんはリーダーシップがあって芯が強い人だという話をたくさん聞きました。パク・ソジュンさんは生まれつきの優れたフィジカルに、演技力も抜群。韓国ドラマ界で、いつもキャスティングしたい俳優1位です。ちょうどパク・ソジュンさん本人も、これまでラブコメで見せた瞬発力や演技とは違うキャラクターに挑戦してみたかったようでした。おかげで最高の俳優をキャスティングすることができました。



セロイ(パク・ソジュン)(Netflixオリジナルシリーズ『梨泰院クラス』独占配信中)


 イソ役のキム・ダミさんは映画『The Witch/魔女』での演技がとても印象的でした。だからこそ、ドラマは初めてでしたが全く不安はありませんでした。ソシオパスだけど認めざるを得ないイソという人物を本当によく表現してくれました」


——パク・ソジュンさんが演じたセロイについてどう思いますか? 監督の意図通りに表現されましたか?


「(原作者でドラマの脚本を担当した)クァンジン氏は製作発表会で『120%以上、セロイを表現してくれた』と話していました。私も同感です。原作では個性の強いキャラクターがとても魅力的ですが、原作に出てくるセリフを実際の俳優たちが話すと、手足が縮むほど恥ずかしいのではないかという懸念がありました。セロイも恥ずかしい台詞を口にしますが、それが格好良く聞こえたのは、パク・ソジュンさんの俳優としての能力だと思います。『これこそ俳優の力だな』と感心しました。


 パク・ソジュンさんは、ドラマの主人公として、スタッフや同僚の俳優たちの面倒をみる能力にも優れています。大変な撮影でも、現場のムードメーカーとして周りに気を配る姿は、セロイと本当に似ていると思います」


——ヒロインのキム・ダミさんや、セロイの初恋の相手、オ・スアを演じたクォン・ナラさんについては、いかがでしたか?


「キム・ダミさんは、実際の姿も率直でしっかりしていて魅力が溢れていますが、演技する時の集中力、そして表現力がとても高い役者さんです。同じ年頃の韓国女優の中で、誰よりもイソをうまく表現できる役者さんだと思いました。


 クォン・ナラさんは優秀なフィジカルに表情が豊かで、信念と思いやりを強く持つ俳優です。オ・スアという役柄は、セロイが好きだけど彼のところに行けない状況の下で、内面の演技が必要です。演技は容易ではなかったと思いますが、うまく演じてくれて本当に感謝しています。2人が演じるイソとスアはそれぞれ違う魅力を持っていて、おかげで放送中には、セロイの恋の行方について視聴者から高い関心と大変な反響をいただきました」


最後の2週間は「生放送のような状態で撮影」


−−韓国ドラマの場合、製作と放送が同時進行の場合も多いと聞きます。「梨泰院クラス」の場合は、製作期間はどのくらいかかりましたか? 終盤は放送しながらの撮影が続いていたのでしょうか?


「全体の撮影期間は7カ月ほどかかりました。ドラマ放送開始まで事前に5カ月の製作期間があったにもかかわらず、最後の2週間は生放送のように大変でした。撮影の後半期間は、新型コロナウイルスの影響で、撮影はより厳しくなりました。しかし、それまでに培われたチームワークと視聴者からの良い反応のおかげで、俳優とスタッフたちは最後まで精一杯頑張ってくれました。この場を借りて、苦労した彼らにもう一度感謝したいと思います」


——ドラマのサントラが日本でも大人気です。サントラについて、音楽監督とは、どんな相談をされたのですか?


「僕は重要なシーンを撮る時は、いつも音楽を考えながら 演出をするスタイルなので、音楽監督とよく相談をする方です。サントラにある主要なメロディや歌詞だけでなく、その回ごとの音楽のポイントについても、たくさん話し合ってから決めます。


 たとえば、セロイの走るシーンが多いのですが、そのシーンに使える力の湧く楽しい音楽を注文して、誕生したのがメガヒットした『Start』という曲です。『Diamond』は、芯の強いセロイに似合うタフなメロディや歌詞を注文して誕生した曲です」


「そして父になる」を見ながら号泣した


——日本では、梨泰院クラスは韓国版「半沢直樹」という評価があります。監督は「半沢直樹」をご覧になりましたか? ほかに記憶に残る日本のドラマや映画があったら教えてください。


「『半沢直樹』ってすごいドラマですよね。私もとても面白く拝見しましたが、日本の国民的なドラマと比較されるなんて光栄です(笑)。韓国では、90年代の日本文化開放の時期に、映画『Love Letter』(岩井俊二監督)がとても愛されました。その後、私も日本のドラマにハマっていた時期があります。数年前に‎是枝裕和監督の『そして父になる』を見ながら号泣した記憶があります。感情をまるでレンガを積み上げるように、一つ一つ潔く描く是枝監督の演出を見ながら、たくさんのことを学びました」


——「梨泰院クラス」が日本人にも愛される理由は、どこにあると思いますか?


「『梨泰院クラス』は、馴染みのある復讐劇であり、ヒーロー物です。このような普遍的な素材のおかげで、ネットフリックスを通して日本だけではなく、アジアでも良い反応があったのだと思います。特に日本でたくさん愛されている点は、私も不思議に思っています。


 セロイというユニークで格好いいキャラクター、セロイとイソの愛の行方は、既存の韓流ドラマが好きな日本の女性層にアピールしたと思います。さらに、セロイとタンバムの仲間とのチームワークが、『半沢直樹』のようなヒーローが繰り広げる復讐劇を好む男性視聴者からも、いい反応を引き出すことができたのでしょう。おかげで、今のような大きな愛を受けたのではないでしょうか。もちろん新型コロナの影響で(外出できず)、ネットフリックスを楽しんでいる日本の視聴者が増えたこともありますね」


「豊かな文化の川こそが政治的・歴史的な葛藤を乗り越える手段」


——次回作を準備中だと聞きました。どんなドラマになりそうですか?


「まだ公開できる段階ではないですが、かなり実験的な作品になりそうです。またネットフリックスで楽しめるドラマになります(笑)」


——最後に、日本の「梨泰院クラス」ファンにメッセージはありますか?


「『梨泰院クラス』を愛してくださった日本の方々に心から感謝を申し上げます。最初から海外マーケットを狙って製作したわけではないのですが、韓国内だけでなく日本でもこれだけいい反響を得られたことは、製作チームにとっては大きなやりがいであり、次の作品を手がける原動力になります。


 いち早くコロナが克服されて、韓日間でもっとたくさんの文化の交流がなされることを祈ります。豊かな文化の川こそが、両国間の政治的・歴史的な葛藤を乗り越えられる手段になると信じています。元気で幸せな日々をお過ごしください」


(金 敬哲/Webオリジナル(特集班))

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