多部未華子演じる経理部員 「不正領収書」がなぜわかるのか

8月9日(金)16時0分 NEWSポストセブン

番組公式HPより

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「会社の経理の話なんてドラマになるのか」という大方の予想を裏切って、『これは経費で落ちません!』(NHK、金曜夜10時)が初回視聴率6.5%を獲得した。これは同枠のこれまでの視聴率や、他局に「金曜ロードショー」など強敵が揃っていることを加味すれば、上々の出来と言えるだろう。


 多部未華子演じる経理部の中堅社員・森若沙名子が他部署の不正を次々暴いていく、お気楽、痛快路線かと思えば、実際見てみると、経理という仕事の深層に迫っていく本格派ドラマであることがわかる。


 その中で取り沙汰されるのが、領収書の不備、不正の問題である。領収書の場合、不正といってもその程度はいろいろだ。本人が勘違いしていたとか、これくらい認められるだろうと安易に考えていたような意図しないものから、確信犯的なものまでさまざまある。


 第1話では、営業部の若手エース・山田太陽(重岡大毅)が領収書の費目を取り違えていたケースを扱ったが、第2話では広報課で広告塔の役割もこなす皆瀬織子(片瀬那奈)の公私混同にクギを刺す場面もあった。取材を受ける際に着る服を「衣装代」として経費にしていたのである。出された明細には「ワンピース87000円」の文字が──。


 領収書の不正にはどんなパターンがあるのか。数社の大手企業で経理部長を務めた後「フリーランスの経理部長」として活動し、『職場がヤバい! 不正に走る普通の人たち』(日本経済新聞出版社)の著書がある前田康二郎氏に聞いた。


「領収書の不正は主に3パターンあります。【1】私物の領収書を紛れ込ませる、【2】数字を書き足すなど領収書の改ざん、【3】は【1】と【2】のミックス。たとえば、行きつけの飲食店で白紙の領収書をもらって金額を書き込んで提出するような場合です」(前田氏)


 第2話では、広報部の皆瀬織子がCM制作用カメラの購入費として40万円の領収書を提出してきた。森若は、「カメラはCM制作会社が用意するものでは?」と疑問を持つ。実は、皆瀬の年下の夫は売れない映画俳優兼監督だった。そしてその夫が件のカメラを使って自主製作映画を撮影していたことを、森若は突き止める。つまり、皆瀬は会社の経費で、夫のためのカメラを買ったのではないか。


 それでも広報部の稟議も下りているし、今後マークしようということで経理部内では話がつく。このような場合は、【1】の中でもやや確信犯に近いケースと言えるのではないだろうか。


 こうした領収書の不正は、「ある程度、経験のある経理部員ならわかる」と前出の前田氏はいう。


「出版社の校正担当者は『誤字脱字が目に飛び込んでくる』らしいですが、経理部員も10年やればパラパラとめくるだけでも手が止まる領収書があるのです。


 不正の領収書は、数百円から数万円のものがほとんどですが、例えば飲食接待のものに関しては、社員のスケジュールを見れば、信ぴょう性があるかどうかはだいたいわかります。少額のものは、それ自体の不正を質して追及することはあまりないのですが、マークしておくべき人として記憶にとどめます。領収書の出し方も、束の真ん中に紛れ込ませる人もいれば、一番上に堂々と不正な領収書を張り付けてくる人もいる。人間性が出るんです。


 悪質なのは【3】のケース。懇意にしている飲食店のママから白紙の領収書をもらったり、先方と自分の2人で3万円の領収書なのに、支払いを折半してそれぞれ3万円ずつの領収書をもらったりする人もいます。そういう不正が予想できるときは、雑談がてら『どんなお店なの?』と聞くんです。『今度、一緒に行きましょうよ』という場合はシロですが、濁したら『知られたくないんだな』と思ってしまいます」(前田氏)


 どうやらベテラン経理部員はすべてお見通しのようだ。会社のお金を私的に使ったり、着服したりすることは、刑法253条に規定されている業務上横領という犯罪に該当する。経費によって会社の利益が変わり、森若が第1話で言うように「会社が税務署に納める税金が変わって」くるから、“チョロまかし”では済まないのだ。


『これは経費で落ちません!』は、新しく会社に勤め始めた人、経費や会社のお金についてあまり考えてこなかった人には、目からウロコのドラマかもしれない。


●取材・文/岸川貴文(フリーライター)

NEWSポストセブン

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