練炭自殺の現場にマンションを建てたらやっぱりヤバかった 大島てるが語る“あるオーナーの悲劇”

8月10日(土)17時0分 文春オンライン

 私は平成17年(2005年)から、事故物件の情報提供サイト「 大島てる 」を運営しているのですが、こうした仕事をしていると、ときには事故物件のオーナーから「サイトでの掲載を取り下げろ」と強く抗議されることもあります。数年前、都内某所のあるマンションのオーナーからも、何度かそうした抗議がありました。しかし、その一件は後に予想もしていなかった結末を迎え、不幸な形で“解決”してしまうことになるのです——。(全2回の1回目/ #2 に続く)



大島てる氏 ©文藝春秋


なぜ私は「大島てる」を立ち上げたのか?


 そもそも、私が「大島てる」を立ち上げたのは、不動産業において「告知義務」を果たさない業者が少なくないからでした。告知義務とは、宅建業法で定められた義務の一つで、借り主(買い主)にとって心理的瑕疵となる事項がその物件にある場合、貸し主(売り主)は必ずそれを事前に告知しなければならない、とされているものです。


 たとえば、前の入居者がそこで自殺していたり、あるいはその部屋が殺人事件の現場になっていたとしたら、業者は契約が成立する前に、必ずその旨を伝えなければなりません。しかし、なかにはそうした事実を隠して部屋を貸し出したり、売り出したりする酷い業者がいるのです。私が「大島てる」というサイトを作ったのも、そのような被害を防ぎたい、との思いからでした。そのため、たとえ事故物件のオーナーから抗議が来たとしても、掲載を取り下げることはまずありません。



有料駐車場で起きた練炭自殺


 しかし、今回ご紹介する都内某所の物件は、少々特殊な経緯を辿っていました。マンションが建設される前、そこには有料の駐車場があったのです。マンションを建てるつもりで土地を手にした所有者が、建設工事が始まるまでの間、そこを駐車場にして日銭を稼ぐ、といったことは特段珍しくはありません。むしろ、土地の有効活用の例としてはよくある話でしょう。ただ、そのオーナーが不運だったのは、土地を遊ばせまいと駐車場にして貸し出している間……そこに停められていた車の中で、練炭自殺が起きてしまったことでした。



 私のサイトには、事故物件の所在地だけではなく、その外観写真も掲載されています。「ここがその事故物件である」ということを明示するため、スタッフと手分けして写真を撮っているのですが、その駐車場にはたまたま、私が直接足を運ぶことになりました。



 私は、サイトに掲載する事故物件の写真は、あえて晴れた日の明るい時間帯に撮るよう心がけています。しかし、そのときは情報を得てからすぐに現場に向かったものの、着いた頃にはもう夜になっていて、一応写真は撮りましたが、これは改めて撮り直さないといけないな、というような仕上がりでした。ただ、もう一度その駐車場を訪れる時間がなかなか作れず、ようやく再訪できたときには、そこにはもう、新しいマンションが建っていたのです。


マンションのオーナーから内容証明が届く


 先程も述べましたが、マンションを建てる前に、その土地を駐車場として貸し出しておく、というのはよくある話です。私も新しいマンションを見上げながら「それはそうだよな」と納得しましたが、それでも「この私有地で自殺があった」という事実は変わらないので、そのマンションの外観を撮影し、サイトに掲載したのです。



 すると後日、マンションのオーナーから「写真の掲載をやめてほしい」と抗議がありました。弁護士を通じて、「この新しいマンションで自殺があったと勘違いされてしまうではないか」という趣旨の内容証明が送られてきたのです。正直なところ、そのオーナーの言い分にもわかるところはありました。ただ、私としては、「直前にこの場所で自殺があった、そんな歴史を持つマンションである」ということを、入居を検討する人たちに伝えたかったわけです。だからこそ、抗議に応じて掲載をやめるわけにはいきませんでした。


 しかし、その後も相手側からのクレームは続きました。そのうちに「訴えるぞ」という強い抗議も届くようになりました。もしかしたら、今回は掲載を取り下げたほうがいいのではないか……。それは、そんな風に悩み始めた頃のことでした。何気なく点けていたテレビに突如、そのマンションの姿がパッと映ったのです。



今度は小さな子供が……


「あれ? このマンションは……」と思った瞬間、私はニュース番組に釘付けになりました。まさに抗議を受けていたそのマンションにおいて、小さな子供が突然心肺停止に陥り、そのまま帰らぬ人となった——。テレビは、そんな痛ましいニュースを伝えていました。


 駐車場時代の自殺から何年も経たないうちに、まったく同じ場所で、2人目の死者が出てしまった……。報道によると、後に司法解剖を行っても、その子の死因は不明に終わったそうです。それ以降、オーナーからの抗議はピタリと止まりました。



事故物件がまったくないエリアで、なぜか連鎖した「死」


 この一件で不思議なのは、そのマンションの周りには、こうした事故物件がまったくない、ということです。周辺に事故物件が一切ないのに、その土地、その座標では、時を置かずに2人も死者が出てしまった。このことをどう解釈すればよいのか……私にはわかりません。


 しかし、2回であれば、それは単なる偶然として片付けることも可能かもしれません。ただ、これが3回、4回と続いていくと、そこには“何かがある”と言わざるを得ません。


 次は、私が「事故物件の聖地」と呼んでいるアパートをご紹介しましょう。それは今回取り上げたマンションから直線距離でおよそ10キロメートル、川を挟んでちょうど反対側に位置する3階建ての住宅です。そこでは全く違う死に方で、4人もの人が——。


決して生きては出られない……大島てるが「事故物件の聖地」と呼ぶ“惨劇アパート” へ続く



(大島てる)

文春オンライン

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