16歳女優挑む『透明なゆりかご』 『コウノドリ』以上に“影”濃い

8月10日(金)7時0分 NEWSポストセブン

『透明なゆりかご』での演技が注目の清原果耶

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 今クール始まった連続ドラマ『透明なゆりかご』(NHK)がじわりじわりと話題を集めている。清原果耶(16歳)演じる産婦人科医院の看護助手の視点を通じ、命のあり方を問う真摯な内容に視聴者の反響が広がっている。コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんがこのドラマの見どころと清原の演技について解説する。


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 コンスタントに2桁視聴率を記録する手堅い作品がそろった夏ドラマの中で、『透明なゆりかご』が異彩を放っています。放送前は「産婦人科の話か。『コウノドリ』(TBS系)みたいな感じかな」という声があったくらいで、ほとんど話題にすらあがっていませんでした。


 しかし、7月20日の放送開始から回を重ねるごとに、「お産の描写がリアル」「メッセージ性のある内容に引き込まれる」「深く考えさせられる」「涙が止まりません」「演技に鳥肌が立った」などとほめたたえる声がジワジワと増えているのです。


 放送前は「『コウノドリ』の二番煎じ」なんて厳しい声もあった『透明なゆりかご』は、なぜ支持を集めはじめているのでしょうか。


◆ドキュメンタリーのようなリアルとシビア


『透明なゆりかご』のテーマは、「産婦人科の日常であり、そこで生まれる光と影」。母子の人間ドラマを描くという点は、『コウノドリ』と同じですが、思わず目をそむけたくなるような“影”の濃さは『透明なゆりかご』のほうが上回っています。


 ここまでの放送では、アウスと呼ばれる人工妊娠中絶、乳児虐待(疑惑)による死、網膜症で失明の危機がある中での出産、女子高生の単独出産、夫が意識不明の中での出産、そして10日放送の第4話では、妊婦が出産直後に急変、産婦人科と産科医の危機と、毎週シビアなエピソードが選ばれています。しかも、原作漫画をベースにしつつ、医療現場での取材を重ねることで、リアルなシーンを作り上げているのです。


 注目すべきは、ドラマでありながら、視聴者を楽しませるエンタメに寄せすぎず、ドキュメンタリーのようなリアルさやシビアさを重んじていること。視聴率を獲りにくい重いテーマである上に批判的な声もあがりやすいなど、民放には難しいことに挑戦しているのは間違いなく、「このテーマは、ドラマだからと言って、過剰な脚色や演出をしてはいけない」というスタッフの覚悟を感じます。


◆「正直で嘘がない」清原果耶の演技


 覚悟を感じさせるのは、キャストの演技も同様。なかでも、主人公の青田アオイを演じる清原果耶さんのみずみずしい演技に胸を打たれる視聴者が多いようです。


 アオイは高校の准看護学科に通う、17歳のアルバイト看護助手。人工妊娠中絶を描いた1話では、「(手術後に泣く女性を見て)あの人の顔を見ちゃいけない気がした」「(処置をしながら)私に与えられたもう1つの仕事は、命だったかけらを集めることだった。人の形じゃないからかな。全然気持ち悪くない」「“かけらの子”たちは業者のおじさんに引き取られていく。一応供養してもらえるって聞いたけど」「この世に出てきて、『おめでとう』って言ってもらえない子がこんなにいるなんて思わなかった」などのセリフがありました。


 その後も、「ついさっき中絶手術をした同じ場所で新しい命が生まれるんだ」「命には、望まれて生まれてくるものと、人知れず消えていくものがある。輝く命と透明な命……私には、その重さはどちらも同じに思える」「(“かけらの子”が入ったビンを窓にかざして)ねえ、見える? あれが外の世界だよ。ごちゃごちゃしているけどキレイでしょ」。まだ看護師ではないアオイは患者側に近い立場であり、正直で嘘がない言葉が視聴者の心をつかんでいるのです。


 清原さん自身も、まだ16歳であり、ドラマ初出演作『あさが来た』(NHK)で演じた、ふゆの純粋なイメージがあるだけに、今作でのシビアな表情はギャップ大。つまり、純粋なイメージの10代女優を起用することで、作品のシビアさが際立っているとも言えるのです。


 清原さん本人に話を移すと、『あさが来た』への抜てき後は、『精霊の守り人』(NHK)、『毒島ゆり子のせきらら日記』(TBS系)、『母になる』(日本テレビ系)、『BORDER 衝動〜検視官・比嘉ミカ〜』(テレビ朝日系)、『99.9 –刑事専門弁護士-』(TBS系)などで地道に助演経験を重ね、今作での初主演につなげました。


 同年代で比較されがちな浜辺美波さんが、主演作を重ねているのとは対照的な道のりです。出演作も、浜辺さんが『咲-Saki-』(TBS系)、『賭ケグルイ』(TBS系)、映画『センセイ君主』などのアイドル女優路線であるのに対して、清原さんは笑いの要素が少ない硬派路線。「どちらがいい」ということではなく、2人とも戦略的に女優道を歩んでいる様子がうかがえますし、だから清原さんはアオイがハマっているのではないでしょうか。


◆映像の美しさと叙情的な音楽が感動を誘う


 最後にふれておきたいのは、ドキュメンタリーのようなシビアさを重んじながら、毎週きっちり感動させてくれる作風。


 小さく愛おしい赤ちゃん、やわらかな採光をたっぷり施した病院、のどかな海辺の風景……映像の美しさがシビアなムードを薄め、清水靖晃さんの叙情的な音楽を絡めて、感動的な物語に昇華させているのです。


 金曜22時は、同じ女子高生が主人公の『チア☆ダン』(TBS系)が放送されていますが、まさに真逆のコンセプト。土屋太鳳さんを筆頭に多くの若手女優がチアダンスを踊る“青春ど真ん中”の作品だけに、清原さんが演じるアオイとのギャップは計り知れないものがあります。


 どちらを選んで見るかは個人の好みですが、16歳の主演女優・清原さんの演技は、「今しか見られない」「この作品しか見られない」ものだけに必見です。


【木村隆志】

コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』『TBSレビュー』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。

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