女子学生絶叫! 彼女が“開けてはいけないクローゼット”の中に見たものとは?

8月11日(日)17時0分 文春オンライン

 京都・蓮久寺の三木住職のもとには、助けを求める人が絶えません。ポルターガイストに悩まされる人、人形をお祓いしてほしい、さまよう霊を供養成仏させてほしい……。そんな実話や自身の体験など、現代の怪談、奇譚の数々を収めた「 続・怪談和尚の京都怪奇譚 」(文春文庫)より背筋の凍る2篇を特別公開。見えない世界に触れることで、あなたの人生も変わるかもしれません。


◆◆◆


シェアハウスにまつわる不可思議な事件


 最近の若者は、人付き合いが下手だ、とか、人間関係から逃げる傾向にある、などという方がおられます。しかし、案外そんなことはないと私は思います。


 なぜならば、シェアハウスという家賃の安い、共同生活型の賃貸物件が流行っていて、これなど煩わしいはずの人付き合いを避けては通れないと、私には思えるからです。


 家賃が安いからという理由ももちろんあるのでしょうが、ここに住む人は、何も学生ばかりではありません。就職をして、そこそこの収入があっても、あえてシェアハウスに住んでいる人が増えてきているのです。


 さて今回は、そんなシェアハウスにまつわる不可思議な事件をご紹介しましょう。


 ある日、某不動産屋さんが、2人の方を連れてお寺に来られました。お一人は、シェアハウスを経営されている大家さん。もう一人は、京都の大学に通う女子学生さんでした。


「その後、お姉さんはどうですか」


 と聞くと、明るい笑顔で、


「はい、順調です。今日は道が混んでいて、少し遅れてくるようなので、少し待っていただいていいですか」


 もちろん、と私は頷き、ほどなくして、「遅れてすみません」とお姉さん夫婦が来られました。


 この方達と、私のつながりは、半年以上前に遡ります。


 不動産屋さんから、かなり夜も遅い時間にお電話をいただきました。


「今すぐ○○にある神社の前まで来ていただけませんか。大急ぎでお願いします」


 私は何がなにやら分かりませんでしたが、のっぴきならない声音を聞き、とりあえず駆けつけることにしました。いざ着いてみると、神社の前には数台のパトカーが止まっています。


「大雲先生〜こっち、こっち!」


 不動産屋さんに手を引っ張られて連れて来られたのは、神社の横の路地を入った場所にある一軒家の前でした。驚くことに、警察官が忙しなく出入りされているではないですか。


「一体なにがあったのですか」という私の質問には答えず、「どうぞ入って下さい」と建物の中に連れて行かれたのです。



©iStock.com


 その家は、いわゆるウナギの寝床と称される、奥に長い間取りになった古民家でした。最も奥の突き当たりの部屋の前で、「それでは、私たちはこれで引き上げます」という警察官の声が聞こえました。


「どうもすみませんでした」


 深々と申し訳なさそうに頭を下げているのは、このとき初めてお会いした、女子学生さんと大家さんでした。


 さて、私はなぜここに呼ばれたのでしょうか。その理由について、さらに時間を遡ってご説明したいと思います。


 この古民家は、表の構えこそ古びていますが、家の中は改装されて、シェアハウスになっていました。玄関に入ってすぐ横には2階へと続く階段があり、2階に上がると共同で使う台所とトイレ、お風呂があります。一階は、中央に長い廊下。その廊下を挟んで、左右には、各3室の部屋のドアが向かい合っております。すなわち、計6部屋があることになります。


 しかし、このシェアハウスで入居者がいるのは5部屋で、向かって左の一番奥の部屋は、貸し出しされておらず、“開かずの間”とされておりました。ですから、このシェアハウスの住人は、女性5名ということになります。



 この建物の玄関から向かって左側の2部屋目、すなわち、開かずの間の手前に、後にお寺にお参りに来た女子大生が住んでいました。


 彼女がこの部屋に暮らし始めてから、2ヶ月ほどが経っていました。暮らしは快適で、他の同居人とも、楽しく生活していました。しかし、ただ一つだけ、不満なことがあったのです。それは、隣の部屋に暮らす彼女の大学の先輩のいびきでした。


 田舎育ちで、夜は虫の鳴き声に包まれて眠る、そんな静かな環境で生活をしていた彼女にとって、隣から聞こえてくる騒音は、かなりのストレスでした。


 耳栓もしてみたのですが、かえって耳に異物を入れた違和感が気になってしまい、眠るどころではありません。だからといって、先輩にいびきを直して下さいとも言えず、この2ヶ月近くを過ごしていたのです。


 しかし、ある日、とうとう寝不足で授業に遅刻してしまいます。このままではいけないと思案して、隣の開かずの間に部屋を変えて欲しいと大家さんと交渉することにしました。



 大家さんは、「あの部屋は駄目」と取り付く島もなく断りましたが、粘り強く交渉した結果、条件付きでオーケーが出たのです。


 その条件とは、その部屋にあるクローゼットは絶対に使用しない、というものでした。この部屋には、もともと押し入れがあったと思われる場所を改装した、洋風の扉のクローゼットがあったのです。


 この条件の理由を大家さんは、他の部屋にはクローゼットがないので、同じ家賃では不公平になる、だからあえて開かずの間にしていたのだ、と説明したそうです。もっとも現在の家賃に少し足せば、クローゼットも使えるということかもしれないが、そのためには、今住んでいる人達と協議し、誰が借りるかを話し合う必要があり、そこまで大げさにしたくはない彼女は、大家さんの条件に従いました。


 そして、他の住人には、大家さんから、彼女の部屋の床板が痛んできたので、一番奥の部屋に引っ越ししてもらいます、との説明がなされたそうです。


 そうまでして、やっと手に入れた静かな環境での睡眠。彼女はそう思っていました。


 しかし、どういう訳か、夜になると、聞こえてくるのです。


「シュー、シュー」


 先輩の部屋との間に一部屋分の空間があるからか、今までのいびきとは聞こえ方が違い、空気が抜けるような音がします。とはいえ、これまでよりは遥かに音が小さくなったのは間違いなく、彼女は喜んでいました。


 2日目の夜、布団に入った彼女の耳に、またしても小さな音が聞こえてきました。


「アー、アー、アー」


 昨晩とはすこし違い、いびきというより、子猫の鳴き声の様だったそうです。


 いびきは、その日の体調によって変わるのだろうか……。そんなことを考えながら、どのくらいの時間が経過したのか、ふと、音が変化したのに気付きました。明らかに音が大きくなっている。まるで隣の部屋から聞こえてくるようだ。そう感じたそうです。あまりの変化に恐怖を覚えましたが、気になった彼女は音の出所を突き止めようと、起き上がり、耳を澄ましました。すると、その音は、部屋の中のクローゼットから聞こえてくるのです。



 外の音が反響してそう聞こえているのだろうか。いや違う、明らかにクローゼットの中に、何かがいる。そう彼女は確信しました。そして、大家さんとの約束を破り、そのクローゼットをおそるおそる開けてしまったのです。


「キャアアーーー‼」


 シェアハウス全体に響き渡る彼女の絶叫に、驚いて起きた住民たちが「どうしたの?」と心配して彼女の部屋へと駆けつけてきました。他の住人の姿を見るや、彼女は、「すぐに警察をよんで‼」と大声で訴え、パトカーが出動する騒ぎになった、というのがこの夜の顛末でした。


 彼女は、ハッキリと見たというのです。駆けつけてきた警察官にも、「絶対いました。間違いないんです。探してください」と何度も何度も訴えたそうです。


 しかし、結局は何も見つからなかったので、最後には謝罪することとなったわけです。私が到着したのはそんな時でした。


警察の方々が帰られた後、私は怯える住人たちとともに、2階でお話を聞くことにしました。クローゼットの中に、何を見たのですか、と。


 すると彼女は、怯えながらもハッキリとした声で言い切りました。


「ネクタイで首を吊られた赤ちゃんが、ぶら下がっていました」


 嘘ではない、見間違いでもない。彼女は確かに、見たのでしょう。



「大家さん、何か心当たりはありませんか」


 私が問いかけると、大家さんは大きく息をついて、まず住人全員に頭を下げました。そして、そのままの状態で、


「この家をシェアハウスに改装したのは、ある事件の後でした」


 と言うと、頭を上げました。苦しそうな表情でした。


「この家は以前、生まれたばかりの赤ちゃんを連れた夫婦に貸していましたが、この夫婦の奥さんが育児ノイローゼになってしまったのです。泣き止まない、思いどおりにいかない、言うことを聞いてくれない赤ちゃんを前に、精神に異常をきたした奥さんは、赤ちゃんの首にネクタイを括り付けて、あのクローゼットのハンガー掛けから吊るして殺してしまったのです」


 聞いていた住人は一様に顔を見合わせ、驚き、そして背筋を凍らせていた様子でした。そんな惨劇がおきた家に同居していたとは夢にも思っていなかったでしょう。


 私は彼女たちを促し、一階のその部屋のクローゼットに向かって、みんなでお経を上げるしかありませんでした。


 数日後、その家の賃貸管理を任されていた不動産屋さんと、大家さん、女子学生さんがお寺に来られました。そして、そのシェアハウスは、閉鎖されたと報告を受けました。


 その時に、彼女が、思いがけないことを言ったのです。


「私には、結婚した姉がいます。その姉夫婦は、子供が授からず悩んでいます。今回の事件を話したら、生まれ変わって、私たち夫婦の元に来て欲しいと言っています。どうかそのようにお経を上げてくれませんか」


「子宝は、絶対の約束は出来ませんが、ともに祈ってみましょう」


 こうした祈りはそうあるものではありませんが、数ヶ月にわたり、供養を行いました。


 そして、先日、お寺にお姉さん夫婦と共に、赤ちゃんを授かった報告に来てくれたのです。あのときの赤ちゃんかどうかはもちろん分かりません。ただ、もしそうであったのであれば、今度こそ幸せな人生を歩んで欲しいと祈っています。





男性からプレゼントされたぬいぐるみの体内から大量の髪の毛が……“レンタル彼女”が体験した怖すぎる話 へ続く



(三木 大雲)

文春オンライン

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