ブルースアルバムだがこれだけジャケットでもアートしてくれると嬉しい〜バディ・ガイ『アイ・レフト・マイ・ブルース・イン・サンフランシスコ』〜平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)連載

2021年8月11日(水)12時0分 耳マン

音楽と絵画を愛するお笑い芸人・平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)が美術館の館長となり、自身が所持する数々のCDジャケットのなかから絵画的に見て優れているもの、時に珍しいものをご紹介する連載。


第157回:ブルースアルバムだがこれだけジャケットでもアートしてくれると嬉しい


今回ご紹介するのはこちら。

バディ・ガイ『アイ・レフト・マイ・ブルース・イン・サンフランシスコ』(1967年)

この連載2度目の登場となるシカゴブルースの最後の大物、バディ・ガイ。前はいまだ現役バリバリでブルースを歌い続けている彼の2018年の最新アルバムをレビューさせていただいたが、今回は1960年代、ブルースの名門・チェスレコードから初めて発売されたアルバムを。

彼のキャリア自体は1950年代後半から始まっているが、チェスと契約していた1960年から1967年までの間、しばらくは先輩であるマディ・ウォーターズやハウリン・ウルフのセッションに参加しており、単独としてのオリジナルアルバムは本作が初となる。

基本的に彼のギター及びボーカルスタイルの特徴は感情をストレートにぶつけてくる激情型のタイプ。そのスタイルゆえロックミュージシャンからの支持も厚く、彼の影響を受けているロックギタリストは非常に多い。エリック・クラプトンやローリング・ストーンズとはいまだにマブダチのようだ。

そんな彼の激情的なプレイは本作でも充分に味わえるが、脂ギッシュでギットギトのベットベトの胃もたれ胸やけに太田胃散かと思いきや、意外と聴き疲れするような重さは感じない。おそらく古典的なブルーススタイルに囚われず、R&Bやファンクの要素を取り入れることでいい意味でのポップさ、軽さを出すことに成功しているからだろう。もちろんそんなバラエティに富んだ楽曲のなかでも「これこれ〜。これを待ってたのよ〜」と思わずオネエになってしまうような正統派のブルースナンバーもしっかり収録されている。

個人的には1曲目の『キープ・イット・トゥ・マイセルフ』のイントロが鳴った瞬間、すでにこのアルバムの勝利を確信していた。完全に僕の求めている1960年代の音そのものだったからだ。今じゃ所持しているブルースアルバムのなかでも個人的最高傑作のひとつである。ちなみに同じくチェスから発売されたもう1枚のアルバム『アイ・ウォズ・ウォーキン・スルー・ザ・ウッズ』も同じくらい良い。

ジャケットは何だがブルースアルバムとしてはやや個性的なデザインで、どこかサイケな雰囲気も感じる不思議なジャケットである。意図はみえてこないが良ジャケだと思うし、そもそもブルースアルバムのジャケットはアーティスト本人のシンプルな写真だったりと、あまりデザインが凝ったものは多くないので、これだけしっかりジャケットでもアートしてくれると個人的には嬉しい。

それにしても前も書いたかもしれないが、現代ではいまいちブルースという音楽の重要性が認識されていないようだ。せめて音楽として聴きこめなくても、あらゆるポピュラーミュージックの父親的存在であるという事実は今の人も知っておくべきだと思う。

美しい花を愛でるならその花を咲かせた根に対するリスペクトを忘れるなかれ。髭面にメガネをかけたある細長い男の残した言葉である。まったく、良いことを言う。

平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)

ひらい“ふぁらお”ひかる●1984年3月21日生まれ、神奈川県出身。2008年に新道竜巳とのお笑いコンビ“馬鹿よ貴方は”を結成。数々のテレビ/ラジオ番組に出演するほか、『THEMANZAI2014』『M-1グランプリ2015』の決勝進出で大きな注目を集める。個人では俳優やナレーターとしても活躍。音楽・映画観賞や古代エジプト、恐竜やサンリオなど幅広い趣味を持つ。

耳マン

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