なぜ韓国のエンタメはあそこまでレベルが高いのか

8月11日(火)7時5分 NEWSポストセブン

ドラマ『冬のソナタ』で社会現象を巻き起こした俳優のペ・ヨンジュン(47才)

写真を拡大

 日本国内は「第4次韓流ブーム」に沸いている。火付け役となったのはNetflixで配信中の『愛の不時着』や『梨泰院(イテウォン)クラス』。そして、K-POPアイドルのオーディションに密着した『Nizi Project』が決定打になったといわれている。韓国文化に詳しい専門家たちは、「第4次ブームはいままでと違う」と口をそろえる。


けた違いの労力をかけて書かれた「脚本」が韓国ドラマの強み


 韓流ドラマの「お決まり」を崩したのが、2016年にヒットしたコン・ユ(41才)主演の『トッケビ〜君がくれた愛しい日々〜』だ。韓国ドラマに詳しい作家の康熙奉(カンヒボン)さんが言う。


「韓国は何をやっても恋愛ドラマになるといわれてきました。医者のドラマなら医者同士が恋愛し、刑事ドラマなら結局、刑事の男女が恋愛する。しかし『トッケビ』は、ファンタジーでありながら人間の生と死を根源的に見つめた作品で、この頃から韓国ドラマは新境地を模索していたように思います」


 そして、映画『私の頭の中の消しゴム』『四月の雪』でもヒロインを務めたソン・イェジン(38才)と、ヒョンビン(37才)という人気俳優たちが主役のラブストーリーでありながら、奇想天外な設定で「政治的なタブー」に足を踏み込んだのが『愛の不時着』だ。韓国・ソウルの財閥令嬢がパラグライダーで北朝鮮に不時着。現地の将校と恋に落ちる切ない物語に嗚咽する人が続出した。康さんが続ける。


「誰にとっても不透明で気になる存在である北朝鮮をネガティブに登場させるのではなく、庶民の生活をリアルに描き、身近で人間味あふれる存在として展開したことが斬新でした。韓国ならではのテーマと主役2人の魅力に、偶然にもコロナ禍が重なったことがヒットの要因でしょう」


 ヨン様ブームの時代から韓流を追いかけ続ける「韓国ウオッチャー」の児玉愛子さんは、韓国エンタメが持つ「コンテンツの強さ」を『愛の不時着』が証明したと語る。


「いくら家でドラマを見る機会が増えても、作品がつまらなければバカにされて終わります。『愛の不時着』はハイレベルなアクションシーンも多く、時間もお金もかけて作られている。国家レベルの“現代版ロミジュリ”は韓国人にも新鮮でしたが、日本人にとっても魅力的でした」


 こうして『愛の不時着』にハマった人が『梨泰院クラス』に流れるというのが定番ルートだ。こちらも従来の恋愛ドラマではなく、父親を死に追いやった大手外食企業の会長親子に復讐するため、自身の居酒屋を大企業へと成長させる復讐劇となっている。


「このドラマの新しさは、“母親”の存在を感じさせないところ。家族の結束が強い韓国では、母親はストーリーに欠かせず、主要な役回りに必ずと言っていいほど登場します。しかし『梨泰院クラス』はほぼ母親が登場せず、家族よりも“仲間”に焦点を絞った。韓国ドラマの新しい形を作り上げた画期的な作品です」(康さん)


 ラブロマンスに興味のない男性や、バリバリ働く30〜40代の人たちからも支持され、韓国ドラマはますます幅広く愛されるようになった。見る者を魅了する理由は、第一に「脚本の力」だという。


「韓国は、昔の朝鮮王朝時代から“武力”より“文”の国なんです。儒教の影響もあり、文で身を立てることを最大の栄誉と考えている。だから脚本にけた違いのエネルギーを注ぎます。作り手も脚本の重要性を理解しているので、韓国で脚本家になるには名のある人に5年くらい弟子入りして徹底的に鍛えられ、その中で才能のある人にだけ次のチャンスが回ってくる。デビューは狭き門ですが、脚本家を目指す人も多いので、優れた書き手が次から次へと輩出されるのも特徴です」(康さん)


 さらに俳優も「顔がいいから」というだけでは決してキャスティングされない。韓国には演劇や映像に関する大学が40以上あり、学生たちはギリシャ哲学から始まり、高等な演劇論を切磋琢磨しながら身につけるという。チャン・グンソクも大学で演劇の専門教育を受けている。


「学科」として映像や演技を学ぶため、専門性が非常に高くなるのだ。そして、その専門性が最も求められるのが映画製作だという。


 2019年に映画『パラサイト 半地下の家族』でアジア映画初のオスカーを受賞したポン・ジュノ監督は、名門の延世大学で現代社会を勉強した後、国立学校の韓国映画アカデミーに入学した。


「ポン監督は最初から映画を学ぶのではなく、社会の中で自分の目指すものをしっかり突き詰めて勉強した上で映画製作へ移行しました。人生の目的意識を先にもってから映画の専門知識を学ぶと作るものの幅が広がります。ポン監督に限らず韓国人は先に『どう生きるか』という目的意識があり、その上で専門知識を蓄えていくというプロセスを選ぶ人が多い」(康さん)


※女性セブン2020年8月20・27日号

NEWSポストセブン

「韓国」をもっと詳しく

「韓国」のニュース

トピックス

BIGLOBE
トップへ