室井滋、首都直下地震を専門家に聞く「いつ来るのか?」

8月11日(火)7時5分 NEWSポストセブン

首都直下地震について室井滋さん(左)が鎌田浩毅さん(右)に聞いた(撮影/杉原照夫)

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 今、専門家の間でもっとも懸念されている自然災害は、今後30年以内に70%の確率で来るとされる南海トラフ巨大地震だ。ひとたび起きればその被害は東日本大震災の10倍以上と想定される。京都大学大学院人間・環境学研究科教授で地球科学の専門家、鎌田浩毅さんによると、南海トラフ地震はだいたい100年周期で起きており、科学的データから見れば次起きるのは「2035年±5年」だという。


 もしも南海トラフ地震が起きたら、一体どうなってしまうのか。さらに、南海トラフ地震と連動して富士山が噴火するともいわれている。かねてから地震活動を注視する女優・室井滋さんが、鎌田教授の研究室を訪れた。南海トラフ地震、富士山噴火、そして首都直下地震について、室井さんが鎌田教授に聞く。


室井:南海トラフ巨大地震の後、いつ富士山が噴火するか。宝永噴火の時は49日後でしたが、最新の研究では予知も可能なんですか?


鎌田:はい。1か月くらい前にはわかります。最初に、マグマで熱せられた地下水など「マグマに由来する液体」がゆらゆらと揺れることで地震が発生します。「低周波地震」とも呼ばれ、揺れは人体には感じられないくらい微弱です。


 次に、マグマが火道を埋めている岩石を割って上昇してくる時に「高周波地震」が起こる。これは人間の体でも感じることができるので、「有感地震」とも言います。さらに噴火の直前には、火道の中をマグマや火山ガスが上昇する時に「火山性微動」が起こり、それから噴火する。この間に1か月くらいかかるので、充分準備する時間はあると思います。


室井:富士山の噴火には、私たちは具体的にどんな備えをしておけばいいんでしょう。


鎌田:火山灰を体に入れないことが第一です。外に出る時は帽子を被り、手袋をして、マスクとゴーグルをつけて、レインコートを着る。家に入る前に玄関の外で火山灰を全部はらって、絶対に家の中に入れない。家には窓などに目張りをして火山灰が家の中で舞わないようにしてください。それが最低限かつ一番重要なことです。



室井:桜島の近くに住んでいる人たちは日常的にそうしてるんですか?


鎌田:いや、火山灰の量と質が違います。桜島の火山灰はザラザラしていますが、富士山から飛んでくるのは非常に細かい、小麦粉みたいな灰。それが桜島の噴火で降る火山灰の200年分が、たった2週間で5cmも積もる。しかもいったん積もると水では流れないから、スコップで掘ってゴミ袋に入れて処理するしかない。


室井:厄介だな〜。1か月の猶予があるとはいえ、昨今のコロナ禍を見ていると、パニックになって買い占めとかも起きるだろうから、今のうちから本当に少しずつ、いざという時に何が必要か、考えておかなきゃいけないですね。


鎌田:パニックを起こさないよう、どう広報するか、ですが、室井さんは結構、心配ですか?


室井:それはもう、いろんなものがなくなりましたから…。だけど、南海トラフ巨大地震と富士山噴火まで「あと10年ほど」とわかったら、そこに向かって逆算することができると思うんですよ。特に私なんかオバサンだから、コロナの自粛の時もある種の“逆算”に入ったんですね。DVDをいっぱい買ってきたり、読みたかった本を読んだり。家もずいぶんと片づけましたし。振り返ると、自粛期間はすごく充実してた。


 それが一回解除になって、元の生活に戻りかけると、嬉しいはずなのになんか中途半端で。出かけていいのかいけないのか、仕事していいのかいけないのかわからない。一体いつまでなのかもわからない。だから今、初めて不安を感じてるんです。専門家の人が「納期」みたいにある程度期限を区切ってくれたら、逆算して生活を充実させられるし、備えもしっかりできるんじゃないかな。


 ところで、首都直下地震はいかがですか?


鎌田:直下型は別で、それはもういつ来てもおかしくないです。


室井:そうなんですか…。でも、考えてみたら関東大震災から今年で97年。たしかにいつ起きても不思議はないんですよね。



——国の中央防災会議は首都直下地震の発生確率を「30年以内に70%」としている。都心南部でマグニチュード7.3の地震が発生するケースでは、犠牲者2万3000人、全壊または焼失する建物は61万棟、経済的喪失は95兆円にのぼると想定している。


鎌田:1000年に一度の東日本大震災が起きて、プレートのあちこちに歪みが生じ、それを解消しようとする地震が頻発しています。震災前に比べて内陸地震は約3倍に増えている。


室井:日本は大地変動の時代に突入したという話ですね。


鎌田:そう。同じような地殻変動は1100年前の平安時代にも訪れていて、869年に東日本大震災と同じ三陸沖を震源域とする巨大地震(貞観地震)が発生し、その9年後の878年にマグニチュード7.4の相模・武蔵地震という首都直下地震が起きました。さらに9年後には南海トラフを震源とする巨大地震(仁和地震)が発生しています。


室井:もし同じパターンが繰り返されるとすると、東日本大震災の9年後に首都直下地震が起こったら…2020年、今年なんですね!


鎌田…それに9を足すと2029年。ぼくが言った「2035年±5年」ともだいたい合うでしょ。1000年単位で起こる巨大地震と100年単位で起こる大地震。2つの時間軸がオーバーラップしているのが、今なんです。東日本大震災による歪みが東京周辺に集中して首都直下地震を起こし、南海トラフ巨大地震で打ち止めということになるかもしれない。


室井:首都圏に住む人はよっぽど注意しておかないといけないですね。私は飲料水を買って備蓄しておくんじゃなくて、水道水を2リットルのペットボトルに入れて、ローテーションで古いものから手洗いやお皿を洗ったり草花にあげるのに使って、新しく水を入れ替えて、ということをやっているんです。普段から普通に水道水を飲んでいるので。そういう話をすると、周囲でも真似して始める人が多いんですよ。



鎌田:それはいいことですね。すごく大事なことを聞いてもふーんで終わっちゃったら何も残らないですが、そうやって1つでも、「あ、これやろう」と思って毎日続いたら、それは本当に残るんですよね。


室井:先生はさすがに備えはバッチリなんでしょう?


鎌田:いや、水を備えるくらいで、ほとんど何も…。研究で山に入ってテントを張ってという生活をしているので、「あるものでなんとかする」という感覚が身についちゃってるんです。


室井:それよくわかります! 私もロケで山でも海でもどこにでも行く。山の中で撮影している時はトイレがなかったり、不便なこともあるけど、気になんかしていられない。だからサバイバルは割と平気かも。


◆室井滋/(むろい・しげる)富山県生まれ。女優。エッセイ・絵本も数多く出版し、女性セブンで現在『ああ越中ヒザ傷だらけ』を隔週連載中。本連載をまとめた旅エッセイ集『ヤットコスットコ女旅』は現在6刷のベストセラーになっている。


◆鎌田浩毅/(かまた・ひろき)東京都生まれ。理学博士。京都大学大学院人間・環境学研究科教授。専門は地球科学・火山学・科学コミュニケーション。近著に『理学博士の本棚』『富士山噴火と南海トラフ』『地学ノススメ』など。



※女性セブン2020年8月20・27日号

NEWSポストセブン

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