『アニメで知る中国』中国製日系アニメキャラゲームの歴史【後編】“幻想神域”から“ラングリッサーモバイル”まで

8月12日(月)10時0分 JMAG NEWS

『アニメで知る中国』へようこそ!ミミム(北京MYC)です。

今回はアニメで知る中国初の前後編の後編になります。前編では「アニメリテラシーの獲得」「中国ゲーム会社の状況について」の2点を説明しました。後編では、幻想神域リリース後の中国ゲーム市場について2015年から2018年の「日本アニメ風アプリゲーム」を取り巻く環境の2点を軸に紹介したいと思います。

第20回アニメで知る中国「中国製日系アニメキャラゲームの歴史【後編】」

後編は2014年の「幻想神域」がリリースされたあと、どのように中国で日本アニメ風アプリゲームが作られていったか、そして、その後どうなったかについて一連の流れを紹介したいと思います。

幻想神域リリース後の中国ゲーム市場について

幻想神域が2014年7月にリリースされてから、様々なメディアで作品のヒットが報じられました。その中から中国のゲーム系メディア「GAMELOOK」の以下の記事をピックアップします。

「どうやって二次元クライアントゲーム「幻想神域」が同時オンライン者数20万を突破したのか」

クライアントゲーム市場には2次元商品が不足している、アニメソードアートオンラインの力を借りて二次元ユーザーを引き込んだ等と書かれています。記事には他にも「二次元ゲームを作る10大要素」が紹介されていました。

中国のゲーム系メディア「GAMELOOK」で取り上げられた二次元ゲームを作る10大要素

  1. 原作を壊さない
  2. かわいいイラスト
  3. OP曲がカッコいい
  4. 声優陣が豪華
  5. 戦闘シーンがカッコいい
  6. ストーリーが特殊
  7. ED曲に魅力がある
  8. 適度にエロい
  9. 萌え要素多め
  10. 女の子が多い

ここでのポイントは今でさえ普遍的に理解されている部分ですが、2014年当時のクライアントゲームとしては非常に目新しいポイントでした。

最後に、「GAMELOOK」は幻想神域が中国国内の作品だけでなく、日本の作品ともコラボをしたことが今回の成功につながっているとも書いています。この方法は中国で本当に効果があるのかはまだわからないが、日本では良く使われているプロモーション手法で、参考にする価値はある。と締めています。当時、このような作品クロスオーバーが少なかったことを指し示していますね。

前編でお伝えした通り、「幻想神域」がリリース後、非常に成功したこと、そしてその手法をその後のゲームが模倣していきます。

2015年〜2018年の「日本アニメ風アプリゲーム」を取り巻く環境

幻想神域がリリースされてから9カ月後の2015年3月。中国最大のゲーム会社「テンセント」の「動漫」部門が独立した業務部門となり、3月30日に開催したテンセントインタラクティブUP2015で重大発表をします。曰く、国産漫画の振興を目的に、2,000万元(約3億円)の漫画予算と3,000万のアニメ制作資金を投入し、「国産オリジナルアニメ・漫画の興新」と「海外版権の輸入強化」として500部の日本漫画のデジタル配信権を購入したことを発表しました。

そして2015年11月にはスタジオディーンと共に一本目のアニメ「霊剣山」の制作および放送が発表されます。霊剣山についてはまた機会をみて紹介したいですね。2015年3月のテンセントの発表会は驚きをもって業界にもたらされました。中国のゲーム市場の半分を牛耳り、さらに中国最大のチャットソフト、QQとWechatを有するテンセントが次の市場は「アニメ・漫画版権にあり」と宣言したのです。アメリカでウォーレン・バフェットがアニメに投資する、と宣言したようなものです。業界の経営者は一斉に「アニメ・漫画版権」に注目し始めました。

中国ではIntellectual Property(IP)を「コンテンツ」という言葉に近い意味で使用

版権、中国ではIntellectual Property、IPと呼称されています。IPは知的財産権や著作権、という意味ですが、中国ではどちらかというと、日本で言う「コンテンツ」という言葉に近い意味で使用されています。このIPという概念を一番最初に業界に知らしめたのは2005年に中国で出版され、2007年にPCクライアントゲーム化された武侠小説「誅仙」です。

今まで小説原作ゲームというのはありましたが、ネット小説原作で書籍出版が難しい中国で出版までされてゲームも大大ヒットした作品はこれが初めてでした。
「誅仙」から「小説原作」という「原作モノ」の概念がゲーム業界にもたらされ、その後「有妖気」というオリジナル漫画プラットフォームが登場します。

「有妖気」は2009年にスタートした漫画配信サービスで中国でも大きな人気を博した「十万個冷笑話」の版元になります。アニメ化もされ、登場人物の声優を務めた「山新」さんなどを一躍有名にした作品でもあります。「有妖気」は「原作モノ」の可能性を一般消費者に広く認知させたといえるでしょう。

そこに2015年のテンセントの「動漫大号令」があり、みな、そのマーケット性を認知したのです。その影響があったかどうか知りませんが、2015年、中国おもちゃメーカー、「[第11回]奥飛動漫[動漫知中国]」でも紹介した「奥飛動漫」、アルファグループが有妖气に対して9億元投資しました。それだけ、2015年は日本産、中国産に関わらず「アニメ・漫画」に対する投資がヒートアップした年でした。そして2015年と2016年、多数の「アニメ・漫画作品」がリリースされます。

ゲームは中国オリジナルの有名どころで言うと山海戦記、ガールズフロントライン、陰陽師、少女珈琲槍、崩壊学園3rd、海外からはFate Grand Orderが参戦しました。アニメは霊剣山、西遊記大聖帰来、侍霊演武:将星乱(ソウルバスター・しょうせいらん)が放送されました。

大聖帰来は北京十月文化が制作し、2015年夏に上映され、10億元の売り上げを達成した国産3Dアニメ映画です。PS4でのゲーム化が2017年に発表されていました。

イベントでは2015年4月に第一回bilibili Micro Link、2016年元旦にACGM中国国際動漫遊戯音楽節(さい)が開催されました。

中国では「日本アニメ風アプリゲーム」をマルチメディア展開していくテンセントの戦略を模倣しようと各社が奮闘します。

海外から中国に入ってきたFate Grand Order、そして2016年に中国で上映された日本アニメ「君の名は。」もこの流れに大きく寄与します。FGOはビリビリに大きな収益をもたらし、君の名は。の中国での最終的な興行収入は5.67億元、約80億円で、中国市場にとって「日本コンテンツの可能性」を感じさせるのに十分な成績をたたき出したのです。

しかし、2017年1月に発表されたiOS課金ランキングでは、「日本アニメ風アプリゲーム」は天下をとれませんでした。

2位に日本をモチーフにしたオリジナル作品、「陰陽師」がランクインし、2016年の勢いを見せています。7位にはFGO、8位にはラグナロクオンラインのアプリ版、9位に崩壊3rd、17位には戦艦少女R、18位には少女前線がランクインし、25位までは様々な2次元系ゲームが入っているので全体的に悪くない印象を受けますが、2016年にあれだけの盛り上がりを見せたにも関わらず、上位5位には陰陽師しか食い込めませんでした。2017年には行ってからも絶好調と思いきや、2017年9月時点のランキングを見ると、結局10位に残れた日本アニメ風アプリゲームは陰陽師だけでした。

2017年9月時点のランキングでは陰陽師だけが10位以内にランクイン

  1. 王者栄耀
  2. 夢幻西遊
  3. 魂斗羅:帰来
  4. 天龍八部
  5. 倩女幽魂(せんじょゆうこん)
  6. 乱世王者
  7. 大話西遊
  8. 陰陽師
  9. 剣侠情縁
  10. 歓楽闘地主
  11. FGO
  12. ナルト
  13. 崩壊3rd
  14. 神武2
  15. 竜の谷
  16. 全民飛機大戦

ゲーム業界は日本アニメ風アプリゲームがあまりもうからないのではないかと思い始めます。2017年2月、「ソードアートオンライン オーディナルスケール」が上映されます。この映画は中国が初めて輸入した日本深夜アニメ映画で、ネットでも大変人気だったのですが、「君の名は。」の5.67億元の1/10の興行収入しか上げられませんでした。人気=消費力ではない、という大きな証左となります。

同年4月にスカーレット・ヨハンソン主演で映画化された「攻殻機動隊」は2億元、9月に上映された「声の形」も4,450万元の興行収入で「君の名は。」の再来とはなりませんでした。

鳴り物入りで動き出した中国国際動漫遊戯音楽祭、ACGMは400万元、約6,000万円の投資をうけますが、主な業務であるチケットやグッズ販売で回収ができず、その後開催を見合わせてしまいました。

また2018年年末にはテンセント動漫やその他の漫画系会社が作者への賃金未払疑惑も起こりました。漫画プラットフォーム有妖気の創立者達も2017年に会社を去り、IP創出とミックスメディア化の難しさを浮き彫りにしました。

SAOなどの日本アニメ原作映画の興行収入が惨敗したのを機に、大手企業のゲーム制作を含む日系コンテンツへの投資が及び腰になったとも言われていますが、このように日本産と中国産のアニメ系コンテンツがことごとく花火を打ち上げられなかった2017年に、日本アニメ風アプリゲームブームは目立った予兆もなく収束してしまったのです。

2018年は「ゲームセンサーシップ」が大幅調整

2018年はご存知のように「ゲームセンサーシップ」が大きく変わった一年です。

この年は中国ゲーム会社も大きな動きが出来ず、ほとんどが海外に活路を求めます。国内のトレンドもPUBGや荒野行動等のバトロワゲームに移っていき、日本アニメ系アプリゲームの環境は厳しくなっていきました。

そんな中、「日本アニメ風アプリゲーム」界に朗報がありました。紫龍ゲームスの「ラングリッサーモバイル」の成功です。日本の日本コンピューターシステム社がメサイヤというブランドで1991にリリースしたメガドライブ用のシミュレーションRPGです。ご存知の方も多くいらっしゃるかと思います。

タイミングが良かったという理由も

ゲームシステムはある程度そのままに、ラングリッサーと同じ世界線のオリジナルストーリーと、日本声優のほぼフルボイス、そしてラングリッサー1〜3のストーリーも楽しめるということで、中国で大ヒットしました。こちらも2014年の「幻想神域」と同じように「声優」「主題歌」「オープニングアニメ」「日本コンテンツとのコラボ」という部分を踏襲しており、またミミムの主観ですが今までにない良い意味で「初心者お断り」という難易度、そして「幻想神域」、「君の名は。」共にいえることなのですが、「タイミングが良かった」のがヒットした原因なのではないかと思っています。

ラングリッサーモバイルはもしかしたら新たな「幻想神域」といえるかもしれません。

編集後記

2015年〜2017年の「日本アニメ風アプリゲーム」を取り巻く環境や変化のきっかけなどを駆け足で見てみました。

幻想神域のプロモーション手法が非常に稀であり、その後さまざまな中国産ゲームにも取り上げられていったこと、そして2015〜2017年まで本当に様々な外的、内的要因が「日本アニメ風アプリゲーム」を取り巻いていったことを理解して頂けましたでしょうか。中国のゲーム事情、切り込めば切り込むほど本当に深いと感じます。

では本日の動画はここまでです。

第20回「中国製日系アニメキャラゲームの歴史【後編】

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記事:ミミム(北京MYC)

北京動卡動優文化傳媒有限公司有限会社(北京MYC)とは

2010年に設立されたアニメ・ゲーム専門の広告代理店の北京動卡動優文化傳媒有限公司有限会社(北京MYC)。中国のアニメ市場の消費力データを有し、アニメ・コミック・ゲーム(ACG)の分野で、中国市場を狙う企画から販売促進まで一連のサービスをワンストップで提供。2016年に日本支社(株)MYC Japanも設立。

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