『5時から9時まで』相原実貴さんが語る少女漫画の変化と魅力

8月12日(日)16時0分 NEWSポストセブン

”お坊さん”との恋愛が描かれる『5時から9時まで』はドラマ化もされた大人気作

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 女優・永野芽都(18)がヒロインの楡野鈴愛(すずめ)を演じるNHK朝の連続テレビ小説『半分、青い。』は、平均視聴率20%越えを記録する相変わらずの大人気ぶりだ。放送がスタートした時には高校生だった鈴愛も波瀾万丈の青春時代を過ごしたあと、一児の母に。とくに少女漫画家を目指して師匠や仲間たちと切磋琢磨する“東京・胸騒ぎ編”では「漫画を描くって、なんて大変なんだ…」「ひとつの作品を作り上げるにはどれだけの労力がかかっているのか…」と多くの視聴者が鈴愛の奮闘ぶりに釘付けだった。


 現実の少女漫画家たちは普段何を考え、どのように作品を生み出しているのだろうか。大企業の社宅に住む気弱な高校生・初(はつみ)が幼馴染らとの恋愛や、社宅内でのさまざまな問題に悩みながらも立ち向かう『ホットギミック』や、英会話学校を舞台に、27才の講師・潤子のお坊さんとの恋愛関係から同僚や生徒たちのさまざまな恋模様が描かれる『5時から9時まで』など次々と大ヒットを飛ばし、日本中の女子たちをキュンキュンさせている人気少女漫画家の相原実貴先生にインタビューを敢行した。


——『ホットギミック』の舞台は社宅の団地。『5時から9時まで』では、恋のお相手として、お坊さんから女装男子まで多種多様なヒーローが登場します。これらの個性的な設定はどのように考えているのでしょうか。


相原:『ホットギミック』では、“現代版ロミオとジュリエット”が描きたかったんです。たまたま、当時住んでいた家の近くに、ある企業のでっかい社宅がありまして。姉が、ママ友から「あそこは最上階から会社内での身分が高い順に住んでいるらしいよ」と聞いてきて、そこから色々考えました。社宅内では、夫の地位で階級が決まる。高校生の幼馴染の恋愛もので、最上階に住む彼と、下の階に住む主人公という、カーストの違う2人だったらどうなるのかと。


—— 一方の『5時から9時まで』は?


相原:「仕事をとるか恋愛をとるか結婚をとるか…全部ってダメなの?」というテーマを描きたかったので、恋もキャリアも叶えたい主人公・潤子のお相手は、縛り付けが一般の男性よりも厳しそうな「お坊さん」にしました(笑い)。新しくて自由な女と、古くて保守的な男との対比を出したかったんです。お坊さんのビジュアルが好きだったというのもありますが(笑い)。


——『ホットギミック』の連載開始は2000年。長きに渡って少女漫画家としてご活躍なさっている相原先生から見て、少女漫画はどう変化していますか?


相原:主人公の年齢が上がっても読者から受け入れられるようになった。『ホットギミック』と“5時9時”ではまさにスタート時の主人公の年齢が10才違うんです。『ホットギミック』では17才の女子高生だったヒロインが、“5時9時”では27才に。27才でも“女の子”として登場することに読者が違和感を持たなくなった。


——個性的な登場人物が受け入れられるようになったというのも変化ですね。



相原:“5時9時”では主人公が社会人なので、キャラクターにより幅を持たすことができたこともありますが、社会の変化も感じます。“5時9時”の人気キャラに、“女装男子”がいるんですが、10年前だったら、「気持ち悪い」と受け入れてもらえなかったと思う。でも今は、新宿や原宿の街を歩けば、たくさんの“女装男子”に遭遇しますよね。


 また、“年の差恋愛”も当たり前に受け入れられる。今こそ若い女の子と、うんと年上の男性のカップルが出てくる作品って普通ですけど、昔はドラマでもやらなかったし、読者にも受け入れられなかった。でも、今は、俳優さんでも「格好いいおじさん」が増えてるし、「おっさん好き」も市民権を得ています。


実は昔から年上好きも、たくさんいたと思うんですけれど、公言できる場所がなかったのではないでしょうか。それが、SNSが広まったことによって、『#おっさん好き』と入れると「わたしも」「わたしも」と同じ趣味の人が集まってくる。話しやすくなったんでしょうね。きっと。


——反対に、10年たっても変わらないと思うことは?


相原:10年もたっていれば、いろいろ自由になっているはずなのに、「やっぱり、結婚してたほうがいいよね」「子供もいたほうがいいよね」と、女同士で「透明な囲い」を作り合っているように思えます。


——それはどのような場面で感じますか?


相原:今日たまたま、インタビューに来る途中で寄ったサロンで、隣のお客さんがずっとある男性アイドルのかたの事件の話をしていたんです。20代前半くらいの、キレイな女性たちだったんですが、「あれ絶対女の子の売名だよね」「20時すぎて、男の部屋に行っちゃいけないよね」って盛り上がっているんです。


 男性が、「また女が騒いでる」って言うならまだわかるのですが、被害者の、それも未成年の女子高校生を非難する内容を言ってるのが女性なんだ!ということに驚いて…。あと、イケメン俳優が女の子と抱き合っている写真を週刊誌に撮られたという話もしていて、そのお相手について、「すごくかわいかったからOK」って言うんです。


 ああ、じゃあかわいくなかったらダメなんだ、とこれもまた驚きました。女性同士でルールを決め、縛りあっている感じがするんですよね。そういうのを聞くと、申し訳ないですけど「ああ、面白いな、どうやって漫画で表現しようかな」って思っちゃう(笑い)。


——この10年で少女漫画そのものをとりまく状況も大きく変わりました。とくに顕著なのはアニメ化やドラマ化、映画化などの「メディアミックス」が増えていること。“5時9時”は2015年、石原さとみ山下智久主演でドラマ化されました。産みの親としてはどう見ましたか?



相原:いや、お二人ともお美しくて素晴らしかった。特に洋服に関してはみなさんがおしゃれで「そうか、このキャラってこういう服も着るんだ」と勉強になりました。映像のときは、自分の作品とは別物として、全部ドラマ用にお任せしていて。逆に一視聴者として楽しみに見ていました。


——相原先生の少女漫画の“原体験”となる漫画とは?


相原:たくさんあって絞りきるの難しいのですが『半分、青い。』にも出てくる、くらもちふさこ先生も好きです。みんな、いちばん最初に読むのは『いつもポケットにショパン』といいますが、私は高校2年生くらいのときに『東京のカサノバ』を初めて読んで。そこからくらもち先生を好きになって、作品を読んでいくようになりました。でもいちばん印象に残っているのは、『キャンディ・キャンディ』です。初めて読んだのは小学校1年生の頃かな? うちは親が漫画を読む習慣がなかったので、親戚のお姉さんのところで、読ませてもらったのが最初です。主人公・キャンディの初恋の相手のアンソニーが大好きなんです。


 バラの品種改良が趣味で、新しく作ったバラを片手に「君の名前をつけたよ」という気持ち悪さなんて最高(笑い)。アンソニーは物語の中盤で死んでしまうのですが、子供ながらにもショックが大きすぎて、しばらく立ち直れなかったです…。アンソニーの死後、キャンディがテリーという新しい恋人を作ったときは「この裏切りもの!」って真剣に腹が立ちました(笑い)。


——少女漫画を愛し、第一線でずっと描き続けている先生が考える「少女漫画の魅力」とはどんなものですか?


相原:“恋愛”って人間を動かす、根幹の部分だと思うんです。だから私は恋愛を描きたいんです。恋愛を思いっきり描けるのは少女漫画だけです。しかも、少女漫画は現実にない素敵なものやキラキラした体験をたくさん見せてくれる。お仕事や勉強で疲れて帰ってきた読者が、フワッと幸せな気持ちになるような少女漫画を描きたいと常に思っています。


【相原実貴(あいはら・みき)】漫画家。6月10日生まれ。静岡県出身。1991年『別冊少女コミック』(小学館)12月号に掲載された「Lipコンシャス!」にてデビュー。2018年6月現在は『Cheese!』(小学館)にて『5時から9時まで』を連載中。

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