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アイドル・notall、“CDゼロ円”を支えるSNS時代のファンたち

オリコン8月13日(日)11時30分
画像:notallリーダーの佐藤遥 (C)ORICON NewS inc.
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notallリーダーの佐藤遥 (C)ORICON NewS inc.
 4人組女性アイドルグループ・notall(ノタル)が1日、「CD売るの辞めました。」というセンセーショナルなタイトルのシングルCDをリリースした。その名のとおり価格は“0円”。入手方法はライブイベント、協力店での無料配布や、着払いでの配送がメインとなる。あの手この手でCDの複数買いを促す施策が一般的な今のアイドルシーンにおいて、収益の柱を切り捨てる一見無謀な挑戦だ。その真意に関心を抱き、ORICON NEWSはnotallのリーダー・佐藤遥だけでなく所属事務所社長、制作(A&R)に直接話を聞いた。CD産業が先細りを続けるなか、自分たちだけの売り方を探し求めるメンバー・事務所スタッフの強い決意と、それを支えるファンとの興味深い関係性を探る。

■現場で痛感、CD複数買いの限界

 2014年6月にデビューし現在4年目のnotallは、他のアーティストと同様、これまで有料でCDをリリースしてきた。オリコンのデイリーシングルランキングでもたびたびTOP10入り、日本各地でのワンマンや海外公演も成功させるなどアイドルとして順調に成長してきただけに、今回の決断には重みが増す。

 なぜ“0円”なのか。この大胆なかじ取りに所属事務所の頃末敬社長は「以前からずっと温めていた案だった」と、付け焼き刃の施策ではないことを強調した。日本ならではのCD文化にnotallも育てられたと敬意を表しつつも、一方で「今後も(CDの収益に頼るモデルで)同じように戦っていくべきかというのは、うちだけじゃなくどこも同じ課題を抱えている」と決断の背景を明かす。

 制作の細谷準平氏も、握手・撮影会など、ファンの複数枚買いを前提にしたこれまでのイベントで「もっと自然なかたちでCDを手にしてほしい」と痛感したという。「広がりという意味では、そういったイベントはやはり閉鎖的な空間なんですよね。その場では枚数がはけて盛り上がっているようにみえても、一歩外に出ると実際そこまで世間に広がっていない、知られていないという現実があって。それで、そもそも何のためにCDをリリースするんだっけ?って考えに回帰したんです」。

 続けて「(CDは)自分たちのやってる音楽を広める手段の一つであるべきなのに、いつしかランキング上位を狙うこと自体が目的化してしまった」とも。配信やストリーミングが聴き方の主流になりつつある現在、CDの役割を、音楽を広める“無料のメディア”と位置づけることで新たなリスナーの獲得につなげたい考えだ。

■CDを拡散させるファンの貢献 SNS時代が生んだ絆

 無料配布と言えば一瞬耳ざわりは良いが、0円のCDは通常の物流に載せ店頭に置くことが難しい。それだけに、何もしなければ既存ファン以外に新曲が届かず終わってしまう。そこで一役買うのが、notallとファンの極めて独特な関係値だ。

 彼女たちは「世界の皆と一緒に育てる、次世代型ソーシャルアイドル」をコンセプトに、グループ名から楽曲制作・衣装デザイン・グッズまで活動に関わる全てをネット・SNSを通じた公募から採用。各国のクリエイター、ファンが参加するグループ公認のプロジェクトがいくつも起ち上がり、デビューから一貫して彼らが活動のクリエイティブ面を支えてきた。これまでの応募総数は3万点を超え、完成したCDには案が採用された“ソーシャルプロデューサー”の名前がずらりと並ぶ。その存在は300人を超えた。

 リーダーの佐藤は「notallはライブ中の写真撮影がOKで、撮った写真をファンの方がSNSにあげ、それをCDジャケットに採用したり、グッズのイラストも描いてくれたり、(ファンが)常に一緒に広める活動をしてくれています」と誇らしげに語る。頃末氏も「我々はずっと“共創マーケティング”ということで実践をしてきました。作品応募がnotallを知るきっかけになってファン層を広げてきた部分もあるので、(ファンの意識に)クリエイターっていう軸が一つある感じですね」と説明し、なかなか稀有な互助関係のもとに活動が成り立っている。

 そんな刺激的な環境で3年間鍛えられてきたファンたちは、0円の試みにもかなり好意的だ。早くもCDを広めるべく自主的に動き出した人たちもいる。リリースしてまだ間もないが、ファンとスタッフで“営業”した結果、すでに全国十数県で40〜50件のお店(CDショップから飲食店までさまざま)に新曲を置いてもらうことに成功した。現在では、企画の趣旨に共感した店側からCDを置かせてほしいという要望も増えているという。

 SNSをきっかけに育まれたnotallファンのこうした参加意識には、従来の「音楽を与えられる側=消費者」というファンの立ち位置では終わらせない、という気迫すら感じさせる。この規模で“棚”を確保できたことは、販路として今後へ大きな財産にもなる。「0円CDはnotallだから決断できたこと。これまで新しい取り組みをファンと一緒に積み重ねてきた基盤があるからこそです」と頃末氏が胸を張るのもうなずける、なんともたくましいファンが支えているのである。

■CDを広告メディアに ー課題となる収益モデル

 とはいえ、CD自体は複製数に応じて作家に著作権印税が発生する契約、プレスも正規のコストで行っている。今まで利益を生んできたものが100%経費に転じてしまったわけだが、これを配信・ライブ・グッズなどプロジェクト全体でいかにカバーし収益化するかが目下の課題だ。細谷氏は、CDがメディアとして価値を持てば、パッケージの中にnotallとコラボした企業広告を打つモデルも可能であるとし、次のシングルで実現を目指したいと意気込む。

 このプランが新たな収益モデルとして音楽業界に風穴を開けられるか、現段階で未知数ではある。とあるレコード会社関係者は「“無料”となるとランキング集計も対象外になりますし、何より全国のショップを中心にCD産業全体への打撃は避けられない。関係者をそうした死活問題から守ることも大切ですし、おいそれと賛成しづらい実情があります」と語り、懸念の声も少なからずあるだろう。現状、このnotallの“無料化”に対し同業者からは「しばらくは様子をみてみたいって感じですかね(笑)」(細谷)と好奇の眼差しが注がれているそうで、まずはお手並み拝見といったところだ。

 CDを“出さない”のではなく“売らない”というnotallの挑戦。CD文化を否定せず、あえて価値の再構築を選んだのは興味深い。売り出し方という点で、得てして画一的になりがちな音楽業界。SNS時代だからこそ結ぶことができたファンとの絆を武器に、notallが音楽シーンに新たな光明を灯せるか、期待したい。

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