秋野太作 桃井かおりに学んだ「地でやる」という自由な演技

8月13日(月)16時0分 NEWSポストセブン

俳優の秋野太作

写真を拡大

 映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづった週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』。今回は、俳優・秋野太作が、『俺たちの旅』で三枚目を演じたことの思い出、初めて桃井かおりとドラマで共演したときに共演者たちと話し合ったときの言葉をお届けする。


 * * *

 秋野太作は一九七五年にテレビドラマ『俺たちの旅』(日本テレビ)に出演、中村雅俊田中健と共に主人公グループの一人・通称「グズ六」を演じた。


「これは非常に楽しかった。若い人ばかりで自由な雰囲気なのよ。いつも思うんだけど、上手い下手じゃなくてみんなはつらつとやるのが大事なんだ。偉い人がいないって、ありがたいよ。監督も脚本家も若くて、みんな『いよいよこれから』というところで歯車が噛み合ったと思う。


 あの時もどこか隙間というか、ズレを演じたんだ。三人レギュラーがいる時は、キャラクターがくっついてると面白くない。二人は二枚目で格好良さを一生懸命に出してくるのが読める。中村雅俊は漱石の『坊っちゃん』みたいに来るだろうし、新人の健ちゃんは美男だから二枚目系統で来る。そこは動かせないんだ。そうなると僕のポジションがそこから離れなきゃならない。


 つまり、格好良くない人間を生きるということ。そのためには喜劇味というものが必要になってくる。役柄に面白味をつけるということだよね。


 そういう役をやれば人気が湧くわけはないけど、そこをやるわけだよ。そうするとファンはつかないけど作っているほうは認めてくれる。人気とか憧れの対象とか、二枚目とか三枚目とか、そういうのはどうでもいいんだ。役者を始めて最初から興味があったのは人間。それでこの世界に入ってきたから、格好いいことして人気者になることには興味はなかった」



 七九年には『俺たち〜』と同じく鎌田敏夫脚本の『ちょっとマイウェイ』に出演する。主演は桃井かおりだった。


「桃井さんは演技者としてユニークな人だよ。嘘をつかないというか、普段と何も変わらない。そういう人って、いるようでいなかった。でも、地でやっているようで、ちゃんと表現になっている。ただ地でやっているだけの人は今いっぱいいるけど、それとは違うんだよね。


 普通は台本を読んで役をイメージして演じるんだけど、あの人はそういうイメージを持たないで、やりたいようにやる。そういう人と絡む場合は、こっちが計算した芝居をすると逆に物凄く浮き立つ。こっちの嘘がバレちゃうんだ。だから、一、二本撮った時に、何か妙な感じでみんなが彼女と合わないんだ。


 その時、共演者みんなで集まって話し合った。それで僕が生意気にも『皆さん、主役の芝居に合わせた方がいいんじゃないですか』って言ったんだよ。みんな『え?』という顔をしていたけど、その時に味方してくれたのが緒形拳さん。『こいつの話は聞いた方がいいよ』って。『必殺仕掛人』の時に二人でいろいろやってきたから、信用してくれていたんだ。


 それで、三話目からみんなで桃井さんに合わせて地を出しながら自由に演じることにしたら、芝居を楽しめたんだ。


 鎌田さんのホンって、脚本通りに演じても面白くならない。セリフを変えるという意味ではなくて、芝居にプラスアルファをすると凄く生きてくる。だからこれも上手くいったと思う」


●かすが・たいち/1977年、東京都生まれ。主な著書に『天才 勝新太郎』『鬼才 五社英雄の生涯』(ともに文藝春秋)、『なぜ時代劇は滅びるのか』(新潮社)など。本連載をまとめた『役者は一日にしてならず』(小学館)が発売中。


■撮影/横田紋子


※週刊ポスト2018年8月17・24日号

NEWSポストセブン

「桃井かおり」をもっと詳しく

「桃井かおり」のニュース

トピックス

BIGLOBE
トップへ