『MIU404』も大ヒット 脚本家・野木亜紀子の「魅力の源泉」

8月14日(金)16時5分 NEWSポストセブン

社会派のテーマをエンタメに昇華して好評(公式ホームページより)

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 6月よりスタートしたドラマ『MIU404』(TBS系、金曜夜10時)が、7話連続で視聴率2桁をキープして好調となっている。脚本を手掛けるのは、野木亜紀子。『空飛ぶ広報室』、『逃げるは恥だが役に立つ』、『アンナチュラル』などヒットドラマを次々と生み出し、今もっとも注目される脚本家のひとりだ。


 そんな野木の最新作である『MIU404』は、綾野剛星野源のW主演による刑事ドラマで、架空の臨時部隊「警視庁刑事部・第4機動捜査隊」の活躍を描いている。


 第4機捜は、普段は覆面パトカーで地域をパトロールし、110番通報があれば事件現場に急行して初動捜査に当たる役割を負っている。あくまで“初動捜査”を担当する部隊であるため、24時間を過ぎれば、専門の課に捜査を引き継がなければならない。タイムリミットが設定されているからこそのスピーディーな展開が楽しめる作品だ。


 そんな『MIU404』の大きな魅力のひとつとして、社会問題をめぐる描写が挙げられるだろう。あおり運転、トランクルームで寝泊まりする人々、ブラック企業などを描いてきたが、特に話題になったのが、搾取される外国人労働者たちをテーマとした第5話「夢の島」だ。


 劇中で「外国人問題って視聴率取れないんだよね。そういうの、みんな興味ないよ」と皮肉めいたセリフがあったが、だからこそ、あえてそこに踏み込んだエピソードに「よくぞ」と称賛の声が寄せられた。


『移民クライシス 偽装留学生、奴隷労働の最前線』(角川新書)などの著書があるジャーナリストの出井康博氏も、同作について〈留学生や実習生の実態に加え、日本語学校で働く若者の葛藤や苦しさが実によく描かれています。犯人に『外国人は日本に来るな!』と叫ばせた最後の場面はとりわけよかった。映像の力は凄い。志と勇気ある製作者に拍手を送ります〉(7月28日のツイートより)と絶賛している。


日本の歪な構造が見えてくる


 野木亜紀子は、映画学校を卒業後、ドキュメンタリー制作会社に就職したという経歴を持っている。社会問題への関心の深さは、もしかすると取材の日々の中で培われたものなのかもしれない。


 ドラマに詳しいライターの西森路代氏は、野木作品の魅力をこのように分析する。


「野木亜紀子さんは、たくさんの人に向けたわかりやすい部分と、社会的テーマに取り組んだ複雑な部分を同時に書くことができるクリエイターです。それによって幅広い層の視聴者が、それぞれに面白さを見いだせるのが作品の魅力ではないでしょうか。


 例えば『逃げ恥』であれば、“ムズキュン”な恋模様を描く一方で、家庭内にある性別役割分業について考えさせたり、女性を抑圧する“呪い”の存在を明らかにしたりと、社会的な問題も自然に盛り込んでいました。


『アンナチュラル』も、一話完結の法医学ミステリーとして楽しめると同時に、その中で“法を守るとはどういうことか?”や“社会の中に女性蔑視がナチュラルに潜んでいるのではないか?”ということも描かれていました」


 西森氏は、『MIU404』は劇中の犯罪を通して、“日本の歪(いびつ)な構造”が見えると指摘する。


「『MIU404』は、伊吹(綾野)と志摩(星野)のバディ以外にも、後輩エリート刑事の九重(岡田健史)、ベテラン警部補の陣馬(橋本じゅん)、女性の隊長である桔梗(麻生久美子)などのキャラクターが立っていて、刑事たちの人間ドラマとしても楽しく見られるようになっています。


 でも実はその上で、各話に登場する犯罪者も、社会的な弱者であったり、社会的におかしいことに憤ってやむなく犯罪を犯してしまったりといった事情を抱えており、背景が緻密に描かれています。そのため劇中の犯罪から、日本に実際に存在する歪な構造が見えるようになっています。ほかの作品も同様ですが、やはり、幾重にもなった観方(みかた)のできるドラマであることが魅力だと思います」(西森氏)


 社会に対する問題意識とエンターテインメントを両立させる手腕こそが、野木作品の持ち味だ。“ドラマ離れ”が叫ばれる昨今。それでも名作は生まれ続けている。


●取材・文/原田イチボ(HEW)

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