コロナ慣れして無頓着な人とリスク急増に怯える人の「分断」

8月14日(金)16時5分 NEWSポストセブン

新型コロナウイルス感染防止を呼び掛けるため、大相撲7月場所の土俵上に掲げられた懸賞旗スタイルの告知旗(時事通信フォト)

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 災害や事件、事故などに遭ったとき、本当は深刻な状況なのに心が疲弊しないために物事を過小評価してしまう「正常性バイアス」を人間は発揮することがある。警報が出ているのに避難しない、危険なので近寄らないでと言われているのに見物や撮影に出かけてしまう人には、正常性バイアスが働いていると言われる。新型コロナウイルスについても、悪い意味でコロナがある生活に慣れ、無頓着になる人が続出している。ライターの森鷹久氏が「コロナ慣れ」してしまった人たちについてリポートする。


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「大手企業に勤める夫は、8月に入り再び在宅勤務になりましたが、私は変わらず出勤のまま。では、職場の対策は万全かというと、むしろひどくなりつつある。悪い意味で『コロナ慣れ』の状態です」


 埼玉県在住の岡島万里子さん(仮名・30才)は、都内にある大手人材サービス会社のコールセンターに勤務。4月の初め、別の部署ではあったが、同じコールセンター勤務の同僚から新型コロナウイルス感染者が出たという。


「感染者と同じ部署の人たちは全員自宅待機、濃厚接触者とされた人は順番に検査を受け、結果が陰性であってもそこから2週間は経過観察。その上で症状がなければ職務復帰可能、という話でした。私たちも、もしかしたらうつっていないかと恐ろしい気持ちでいっぱい、仕事を休んだり、辞めた人もいました」(岡島さん)


 ゴールデンウィーク明け頃までは、スタッフは戦々恐々としながらもなんとか仕事に励んでいた。そして、お互いの席の間にダンボール製の衝立が設置された。


「上司は、これで安心して仕事ができる、と得意顔でしたが、換気も十分じゃなく、広い一室に100名近くがいるので全然安心できない。でも、みんなだんだんその状況に慣れてきたのか、衝立を超えて話すことも多くなっています。別の上司は、コロナは風邪みたいなもの、みんな若いしコロナになっても大丈夫、と笑っている……。職場の入り口に以前はあった消毒液や除菌シートも、いつの間にか無くなっています。いつ感染爆発が起きてもおかしくない状況です」(岡島さん)


 東京都内の飲食店勤務・諸岡弘晃さん(仮名・20代)も、コロナ慣れした職場と上司、客の意識の低さに悩まされている。


「客の体温を測り、手に消毒液を吹きかけていたのは7月の頭くらいまで。外が暑くなると体温が37度超えになる客が続出するし、消毒液も、用意する代金もバカにならない。真夏日に真面目に体温を測って客を断っていたらきりがないし、消毒もおしぼりで十分だということで、社長の指示でヤメになりました」(諸岡さん)


 諸岡さんの店は、首都圏で数店の飲食店を経営する会社の傘下。社長の命令は絶対だ。諸岡さんと店長が自作で設置した客席の間の「飛沫感染予防シールド」も、視察に来た社長が「邪魔臭い」と取っ払ってしまったという。


「感染しても老人しか死なない、若い奴は経済を回すことが大事、が最近の社長の口癖です。客席も、以前は一席飛ばしにして密の解消をはかっていたんですけど、それじゃ儲からないということで、今は満席になるまで客を入れていますし、満席になると折りたたみ椅子を出してまで営業しています」(諸岡さん)


 シールドを共に製作し設置した店長も、今では「コロナにかかかっても死なない」と楽天的であるという。


「店も社長も、言いたくはないんですがお客さんも完全に麻痺していますね。僕も最初は店をやめようとまで思っていましたが、だんだん慣れてきました。都から新たに出た時短営業要請にもうちは応じません。たまにふと我に帰り、危ないなとは思いますが…。同じような店は増えていると思います」(諸岡さん)


 新型コロナウイルスの存在に慣れる、とあえていうならば、それはウイルス対策が日常に溶け込んだ状態のことを指すのであって、対処療法しかできないウイルスを気にしない生活のことではない。当初は危険を感じていたのに、だんだんと感覚が麻痺しているのか、それとも、目の前の危機があることを考えようとせず、状況を過小評価しようとしているのか。おそらく、そのいずれもの感覚が、日本だけでなく世界中に蔓延しているはずだ。


 再び日本全国で感染者が急増する中、大都市部ではそれぞれの自治体から飲食店などに対し、再度の時短営業要請、休業要請が出された。しかし、補償額が少ないことなどから、要請に応じないという店も少なくない。生きる為にはやるしかない、という気持ちは理解できるし仕方が無い側面もあるだろう。ただ、対策が甘い、対策を全くしない、というのは社会に対して無責任すぎる。今一度「ウイルスと生きていく」という現実を、見つめ直したい

NEWSポストセブン

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