【芸能コラム】生活保護、出産…。社会の問題と向き合う漫画原作ドラマ 「健康で文化的な最低限度の生活」「透明なゆりかご」

8月14日(火)15時30分 エンタメOVO

「健康で文化的な最低限度の生活」 (C)関西テレビ

写真を拡大

 興行ランキングをにぎわせる大ヒット映画から視聴率が話題となる人気テレビドラマまで、今や日本の映像文化は漫画原作なしには成立しない。その中でも特に注目を集めるのは、やはり華やかなエンターテインメント作品。だが、一口に「漫画原作」といってもその内容は多種多様で、中には社会的な問題と向き合う作品もある。



 フジテレビ系で毎週火曜午後9時放送中の「健康で文化的な最低限度の生活」は、柏木ハルコの同名漫画が原作。東京都内の福祉事務所に勤務する新人ケースワーカー、義経えみるを主人公に、生活保護をめぐるさまざまな問題を浮き彫りにする。

 生活保護の問題と聞くと、すぐに思い浮かぶのは不正受給だが、本作ではより幅広い視野で生活保護を取り巻く状況を見つめ、人間ドラマとして掘り下げてみせる。

 第4話(8月7日放送)では、DVが原因で離婚し、生活保護を受けながら求職活動を行なうシングルマザーの葛藤と、彼女に寄り添おうとするえみるたちの苦悩が描かれた。

 ドラマ化に当たっては、複数のエピソードが並行して進む原作を整理して、1話完結のスタイルに構成。原作の持ち味を損なわず、テレビドラマらしい、見やすい仕上がりとなっている。主演の吉岡里帆をはじめ、山田裕貴川栄李奈井浦新、田中圭といった俳優陣の好演もあり、重い題材にもかかわらず、さわやかなムードにあふれているのも特徴だ。

 一方、NHK総合で毎週金曜午後10時放送中の「透明なゆりかご」は、町の小さな産婦人科を舞台に、妊娠や中絶といった出産をめぐる光と影に向き合った物語。第4回「産科危機」(8月10日放送)では、出産直後に妊婦が死亡した事件をめぐり、医師や看護師、残された夫が葛藤するさまが、繊細なタッチで描かれた。

 原作は沖田×華の『透明なゆりかご 産婦人科医院看護師見習い日記』。ギャグ漫画を思わせるシンプルな絵ながら、看護助手のアルバイトをしていた作者自身の経験に基づき、生命と真摯(しんし)に向き合った物語は心に深く残る。

 独特の雰囲気が持ち味の作品だけに、ドラマ化に当たっては、そのテイストをいかに実写で再現するかに腐心したはず。だが、主演の清原果耶以下、瀬戸康史、原田美枝子、水川あさみら、俳優陣の人間味豊かな演技、巧みな脚本、繊細で柔らかな映像と音楽により、原作同様の温かさにあふれた作品となっている。

 生活保護や妊娠・出産の問題は、今日的なテーマであるにもかかわらず、当事者以外には理解されにくく、逆に関心があっても、第三者が当事者に深い話を聞くことは難しい。その点、この2作品はテレビドラマという形を取ることで、それらの問題を広く世間に知らしめる好機となった。その裏にはもちろん、入念なリサーチに基づいて描かれた原作の存在がある。そう考えると、改めて日本の漫画文化の懐の深さを思い知らされる。

 これらの問題に少しでも関心がある人には、ぜひドラマを見ることをお薦めしたい。さらに、ドラマを見て興味が湧けば、原作にも手を伸ばしてみてほしい。原作もドラマも優れた作品であり、双方に触れることで、それぞれの魅力がより引き立つと考えるからだ。(井上健一)

エンタメOVO

「漫画」をもっと詳しく

「漫画」のニュース

トピックス

BIGLOBE
トップへ