西武独走、それでもファイターズを楽しむおばあちゃんの知恵袋(うそ)

8月16日(木)11時0分 文春オンライン

 8月14日、お盆休みの札幌シリーズ、ロッテ戦初戦(18回戦)にたった今、敗れたところだ。「有原vs有吉」のアリアリ対決に負けた。ちょっとファイターズは重症だ。さっぱり打てない。みんな心なしか身体が重そうに見える。疲れが出ている。本来なら相手投手陣がバテているところをガンガン打って、打ち勝つのが夏の戦い方だ。なのにこっちが先にバテてしまっている。5連敗中だったロッテに競り負けたんだからこれは本物じゃないか。


 しかも、同じ日に首位西武が0対6からの大逆転サヨナラ勝利だ。オリックスはこれで対西武3連続サヨナラ負けらしい。2位ファイターズは6ゲーム差と完全に置いていかれた。もはや3位ソフトバンク(4.5差)のほうが接近している。おっかしいなぁ、終戦記念日は明日なのに。大田泰示、石川直也、杉谷拳士の離脱がジワジワ効いている。ほんのちょっと前は追撃ムードだったが、ガクッと急降下だ。


 勝敗は時の運だから、軽々なことは言わないようにしよう。明日から流れが逆になるかもしれない。移動ゲームで金曜からメットライフドームの「蒸し風呂」3連戦だ。これがどういう幸運か3つ取れてしまうかもしれない。「移動ゲーム」「蒸し風呂」と疲れやすい条件が重なり、レッドゾーンまで振り切れて、なぜか元気になってしまうような現象だ。まずあり得ないことだが、何があるかわからないのだ。泣き言だけは口にしたくない。


俺たちは結果のファンじゃない。


 まぁ、そういうことでなくても、苦しいとき、勝てないときほど応援するに決まってるじゃないか。勝ってるときだけ応援するんだとしたら、それはファイターズのファンじゃなくて、結果のファンなんだ。今週は僕が指南しよう。首位西武に6ゲーム離されて、熱心なファンでさえうっかり「終戦?」と思ってしまいそうなところを積極的に楽しむ方法だ。ミスをした選手、壁にぶつかってる選手を「イラネ!」と叩いていても楽しくないだろう。第一、愛がない。


 まず、首位と6差。ここから考えよう。西武の独走だ。しかも西武は今日の試合、初回に6点取られたところから「高校野球」だ。浅村、山川がヘッドスライディングを見せたりしてコツコツ返し、最後は「友情・努力・勝利」の少年ジャンプ的サヨナラ勝ちだったという。ムード最高だ。これとやり合うにはファイターズも「高校野球」を買って出る必要がある。ビリビリしびれながら、みんなでひとつの方向を向く。その感動で自分もチームも成長していく。野球の原点だ。栗山英樹監督は『熱闘!甲子園』(テレビ朝日)に特別出演し、第100回記念大会を視察している。「プロ野球で高校野球をやる」はそのときぶち上げた構想だ。


 首位と6差。誰が考えたって大型連勝が要る。メークドラマだ。起爆剤になるドラマが欲しい。楽しむ方法その1、栗山監督が何を仕掛けるか。これは見ものですよ。あの人、何かやろうとするに決まってるじゃない。既に16日のロッテ戦(この原稿のアップ日だ!)は、移籍してきたばかりの藤岡貴裕先発が準備されてるらしい。2軍でもアップアップしてる藤岡を1軍で使うのだ。大いなる賭けだ。賭けははずれることもある。はずれたらはずれたで「不発か〜」とみんなで頭かけばいいじゃない。栗山さん、すぐに次を仕掛けるよ。これはファイターズファンだけが特権的に「我がこと」として面白がれる案件だ。秋まで色んな手を考えてくれる。このまましょんぼり暮らしたってつまんないよ。面白いものを見よう。どうやって栗山さんがチームを「高校野球」へ持っていくか、そのテンションを形成するか、手腕を楽しもう。



ロッテからトレードで日本ハムに移籍し、入団会見で笑顔を見せる栗山監督と藤岡貴裕 ©時事通信社


 僕はシーズン最後(9月30日から)の西武3連戦に、函館で中止になった分が加わって4連戦ということになると思っている。楽しむ方法その2、果たして何ゲーム差でそこまで持って行けるだろう。ここで決戦を挑むんだ。


 そして重要なことは(楽しむ方法その3!)その決戦の成果がポストシーズンの戦いにどうつながるかだ。最終4連戦でひっくり返して優勝がもちろん望ましい。3ゲーム差以内ですべり込み、ホーム球場の利を生かして逆転優勝、これが理想形だ。が、ダメだったとしても手応えをつかめばいい。CSで西武を打ち負かす根拠を手にする。ピークの設定は今じゃない。ずいぶん先だ。今は死んだフリをして力をたくわえればいい。



「最初に戻って考えてみる」おばあちゃんの知恵袋


 苦しいとき、勝てないときは最初に戻って考えてみる。これは千歳船橋のおばあちゃんから教わった生活の知恵だ。例えば開幕前、NHK『サンデースポーツ』の順位予想はどうだったかとおばあちゃんは尋ねている。と、大野豊氏→6位、伊東勤氏→6位、和田一浩氏→6位と評論家は全員、最下位予想である。唯一、タレントの岡田圭右(ますだおかだ)さんだけが5位だった。大谷翔平が抜け、増井浩俊、マーティンが抜け、谷元圭介、大野奨太が抜けたチームに上がり目はないというわけだ。だけどねおばあちゃん、ファイターズ頑張って2位にいるんだよ!



 僕は2016年日本一チームの解体だなと思ったのだ。そして、今年は新しいチームの土台をつくるシーズンになるだろうと考えた。新しいエース、新しいクローザー、新しい中継ぎ陣、新しい外野陣、新しい二遊間、新しい正捕手……。固まれば向こう何年困らないような新しいチームのベース。評論家が軒並み最下位予想の年にチャレンジすべきはそこじゃないかと思った。だから失敗したっていい。失敗したってチャレンジしていればいい。チャレンジしないのが最悪だ。チャレンジしなけりゃ失敗しない代わりに何も得るところがない。


 ということで楽しむ方法その4、これから最終の西武4連戦まで、その土台づくりの進捗を見ればいい。新しいエースは上沢か有原か、はたまたマルティネスか。新しいクローザーは石川直也が戻ってくるのか、浦野の復権か。ライトは大田泰示が戻るのか、松本剛や淺間が奪い取るのか。セカンドはどうなる。結局、田中賢介なのか。渡邉諒はあれっきりか。石井一成はあれで引き下がる気か。横尾は守る場所を奪えないのか。太田賢吾はもうノーチャンスか。


 僕が夢見るのは2018年のチームが、個々の選手の成長に掛け算されて、たくましく変貌することだ。今は首位西武だけでなく、どことやっても苦しい試合になる。でも、そこから逃げないでほしい。(結果のファンはともかく)ファイターズのファンは逃げないからさ。「大野豊さんは何位の予想だったんだい?」とおばあちゃんは言っている。ダメでもともと、気が楽じゃないか。野球はここからが面白いんだよ。


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(えのきど いちろう)

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