『異世界魔王と召喚少女の奴隷魔術』村野佑太監督が語る7話で触れられた「俺TUEE系」ラノベのタブーとは

8月18日(土)13時0分 アニメイトタイムズ

好評放送中のTVアニメ『異世界魔王と召喚少女の奴隷魔術』。アニメイトタイムズでは、この作品の魅力を伝えるべく、スタッフ&キャストのインタビュー連載記事を毎週放送後に掲載しています。7話の放送直後となる今回は監督の村野佑太さんに登場していただき、アニメ化についてのこだわりを聞きました。 
ラノベの印象を覆されたすごくストレートな作品
——原作を読まれたときの感想を教えてください。

村野佑太さん(以下、村野):実はラノベって全く読んだことがなくて、言ってしまうと少し偏見もあったんです。最近のは少し奇をてらいすぎている作品が多いんじゃないかとか。

でも、今回この作品を読んだときに、僕のイメージとは全然違っていて、すごくストレートな作品だなという印象がありました。

気をてらって目立とうとするのではなく、原作者のむらさき先生が単純に面白いと思うことをそのままぶつけている作品だと思ったので、自分がもしアニメを作ることになったら、それは生かしていきたいなと思いました。——実際に監督を任されたわけですが、映像にしたときに面白くなるというイメージはありましたか?

村野:絵的にはもちろん面白いものになると思ったんですけど、それ以上にディアヴロが主人公としてすごく面白いと思ったんです。俗に言う「俺TUEEE系」の作品で、肉体的に非の打ち所がないんだけど、精神的にはどこか脆い。主人公に成長の余地があるところが、物語を紡ぐ上ですごくやりがいのある作品だなと思いました。——たまに、女の子たちが何でこの人を好きなんだろうって思う作品もあるのですが、ディアヴロはあまりそうは思わなかったんです。

村野:理由があって女の子たちがついてくるんだろうなっていうのはありますよね。人間味に説得力があるので、そこは作中の描写でもしっかり描こうと気をつけています。

——アニメ化するに当たってのスタッフィングに関して、特にこだわったところはありますか?

村野:キャラクターデザインを金子志津枝さんにお願いさせていただいたんです。多くの作品でデザインをされているんですけど、とてもぬくもりのある柔らかいタッチの絵を描かれる方で、亜細亜堂(アニメーション制作会社)もそういった柔らかいキャラクターを得意としているので、深夜帯の美少女モノの中でもひときわ愛らしいキャラクターが描けるのではないかと楽しみにしていました。—— 鶴崎貴大先生の絵の良さを残しつつ、アニメの絵になっていますよね。

村野:やはりアニメだと動かさないといけないので、原作の魅力を失わずにどこまで省略できるかが大事なんです。そこはキーとなるので、コミカライズの福田直叶先生の省略の仕方なども参考にしながらアニメのキャラクターにしていきました。

——実際にそれを動かす総作画監督としては、西岡夕樹さんが入られていますね。

村野:西岡さんは物凄く繊細な線でキャラクターを描く方で、表情に深みが出るんです。それぞれのキャラクターを描くにあたって気をつけることについては、何度か話しました。

——どんなことを気をつけていたのですか?

村野:レムとシェラのそれぞれの特徴、アイデンティティの部分をただの飾りにはしたくないよね、という話をしました。

たとえばレムならばネコ耳としっぽがあるんですけど、それをアニメーターさんにそのまま任せてしまうと、カチューシャみたいな動かないネコ耳になっちゃうときがあるんです。怒ってるときは耳が立って、しょぼんとするときは逆に垂らしてくださいとか、ちゃんと感情表現をするものとして描いてくださいというお願いをしていました。シェラのおっぱいに関しても同じですね。デザインとして大きいだけでなく、大きいなりの動かし方をさせることで個性を出して、それをキャラクターの存在感につなげています。——その他で、美術の良さはこれまでも話に上がっていました。

村野:美術に関しては、ディアヴロの目を通して見えた外の世界ってどんなだろうと美術監督と相談しました。ディアヴロの本来の姿は坂本拓真であり、家に引きこもっているゲーマーなんです。それが突然異世界に飛ばされたとき、彼の目にはリアルな草花がどういう色を持って見えるんだろうと話したんです。

部屋の中と違って外に出ると色々な光が差し込んで反射しているから、草もただの緑とかではなく、そこに黄色やピンクとかいろんな色をちょっとずつ入れたんです。そういう自然物を魅力的に描くことで、引きこもっているだけでは気づかなかった世界の魅力的な部分を描くことになるのかなって。——実際そこに気づいていなくても画面から伝わるものって、絶対にありますからね。

村野:ちゃんと雲が流れて風を感じる。風は目には見えないですけど、雲が流れていることで、ディアヴロの頬に当たる風が見ている人に伝わる。草が揺れている絵や環境音にはこだわりました。

——それにしてもいまだに異世界に飛ばされるというのがよく理解できていないところでもあるのですが……。

村野:僕も最初わからなくて先生に伺ったんですよ。この世界はゲームの中なのか、似てるだけの別世界なのか。その時すごく長い説明が返ってきて、なるほど!とは思ったんですけど、結構難しいことだったのでアニメでは触れないほうがいいなと思いました(笑)。

——音楽に関しての手応えはいかがですか?

村野:発注するときに、大作ゲームっぽい音楽を入れてくださいとお願いしたんです。魔王プレイ中のディアヴロの頭の中に流れるのはそういう音楽だろうし、視聴者に対しても実際にゲームをやっているような気持ちになる音楽を入れられればなと思ったので。

あとはディアヴロってどちらかというとダーク寄りなヒーローなので、主人公サイドをダークな感じに、逆に敵をヒーローっぽくしたりしたんですけど、結構うまくいったと思います。

 
「俺TUEE系」ラノベのタブーに触れられた7話
——さて、前半のクライマックスである7〜8話ですが、シェラの話でしたね。7話を振り返ってみていかがですか?

村野:実は「俺TUEEE系」ラノベのタブーに触れているところがあって、一度主人公が精神的にどん底に落ちるんですよね。アニメでは原作描写よりも更に落ち込ませています。

——冒頭から坂本拓真の幼少期が出ましたからね。

村野:そのトラウマがぶり返してしまって、Aパートのラストでヒロインにカッコ悪いところを見せてしまうんです。そこって「俺TUEEE系」からするとタブーらしくて、先生からも危惧されたんですね。

ただ、やっぱりそれを乗り越えて、終盤に向かってディアヴロが少し変わらないと、物足りない物語になると思ったんです。弱みのない主人公ではなくて、弱みを乗り越える主人公こそ応援したくなるんだろうとコンテが上がったところで先生にお見せしたら、「異世界転生物でなかなかこういうことを書く作品はないんじゃないか」と気に入ってくださったので、手応えはありました。——そういうマナーもあるんですね。

村野:やっぱりヒロインを救ってカッコいい自分を見せるというのが、作品の基本としてあるので。ただこの物語はディアヴロもそうだし、レムもシェラもスタートはみんな一人ぼっちなんですよ。

仲間という存在がいなくて、話数を重ねる中で絆が生まれて仲間を獲得していって、最終話のある答えに辿り着くようにしたかったので、一番落ち込んだときに支えてくれるのは誰なのかというのを見せたいなと思ったんです。なのでここは、タブーに触れつつも描いて良かったなと思います。——前半は、おっぱい越しにポーションを作っていたのに……。

村野:ちゃんと息を抜けるところも作りつつ……(笑)。放送が22時と聞いたときは冷や汗が出ましたけど。

——他には、アニメならではのシーンはありましたか?

村野:ラストでディアヴロの隷従の魔術とキイラの笛の魔術がせめぎ合うシーンがあったのですが、原作ではディアヴロが命令したらシェラは隷従の首輪の力でスパッと答えてしまうんです。

でもアニメではそこに重きを置きたいなと思って、魔術によってシェラが思いを打ち明けたのだけではなく、そこまでで築いてきた仲間との繋がりが、シェラに取り付いた魔術を解放させた風に見せたかったんです。

コンテでもここをメインに据えようと思ったので、カタルシス的にも一番の見せ場になったと思います。——ちょっと前のシーンで、服を溶かされていたのに……(笑)。

村野:僕の趣味ではないですよ(笑)。シェラ可哀想だなと思ってコンテを描いていました。でもヒロインがピンチになったときに颯爽と駆けつけるのが一番燃えるところなので、シェラには頑張ってもらいました。

アニメイトタイムズ

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