アートを10倍楽しむためには「企画展」ではなく「常設展」を見よ!

8月18日(土)11時0分 文春オンライン

 海にも山にも、どの地域にも、探してみれば美術館や博物館は意外なほどたくさんあるもの。お出かけ先ではぜひ周りを見渡して、観るべきものを探してみてほしい。


 でも、都会の大きな美術館なんかじゃないと、見応えあるものなんて展示されていないんじゃないか? そう思う向きもあるやもしれないが、杞憂だ。



国立西洋美術館内観


 たしかに話題の大規模展覧会は、都会の有名美術館の企画展示室が独占しているのが実際のところ。ミケランジェロにレンブラント、フェルメールや印象派の精華せいぞろいなどと、耳目を引く展示が目白押しである。


 大手メディアがスポンサーとなって、大々的に宣伝されるそれら企画展もありなのだけれど、いい作品を観る確実な方法は他にもある。「常設展」へ行くことだ。そうすればちょっと地味、でもハズレなしのアート体験がいつでもできる。


甲府にミレーの、高知にシャガールの名品がずらり


 美術館の本来の役割と使命は、美術品の収集、保存、研究、展示をすること。つまり良心的な美術館であれば、展示ばかりに力を入れるのではなく、アイデンティティを賭してコレクションを形成している。それらをいい状態で観てもらうために、常設展示室だってしっかり用意しているものだ。



 特色ある常設展示をしている美術館は、各地に存在している。たとえば横浜みなとみらい地区にある横浜美術館は、マグリットやマックス・エルンストら現実を超えた不思議な世界を表現するシュルレアリスムの作品群を多数所蔵する。また、歴史的な名作写真作品のコレクションでも知られ、専用の展示室まで用意されている。


 甲府市の山梨県立美術館の自慢は、19世紀の農村風景を描いたミレー作品が常時展示されていること。しかも、《種をまく人》《落ち穂拾い》といったミレーの代表作を持っており、教科書などで見覚えのある作品を間近で観ることができる。


 また、高知市の高知県立美術館といえば、シャガールだ。初期から晩年まで、さまざまな時代の油彩5点が堂々と並ぶさまは、壮観のひと言である。



国立西洋美術館には、いつでも会えるモネが


 常設展の質量で抜きん出ているのは、東京上野の国立西洋美術館だ。「松方コレクション」と呼ばれる日本屈指の西洋美術コレクションをもとにして、補強を重ねてきたのが同館収蔵品。広大な常設展示スペースで、それらを惜しげなく観せてくれる。



 時代順に整然と展示がなされているので、ひと巡りするだけで西洋絵画史が丸ごと頭に入る感覚があって、お得な気分になれる。


 14世紀に描かれた《聖ミカエルと龍》にはじまり、ルーベンス、クールベ、マネら時代を画する大家の絵が続き、ピークは印象派の巨匠モネの作品を集めた部屋。ここにはモネの代表作たる《睡蓮》の優品が堂々と飾られている。




 さらには、ゴーガン、セザンヌ、ゴッホ、ピカソの作品までが一挙に味わえる。ふらり立ち寄れば西洋美術の粋に出合える、とっておきの場所としてぜひ覚えておきたい。


あらゆる面で「お得」な常設展


 展示の充実度で負けないだけじゃない。常設展示は、大々的に開かれている企画展よりも、観覧条件がはるかに優れている。


 まずは価格がリーズナブル。引き続き国立西洋美術館を例にとれば、いま企画展として開催中の「ミケランジェロと理想の身体」展は、料金が1600円。常設展示だけなら、これが500円だ。ルーベンスもマネもモネもピカソも観られて500円とは、コスパ抜群ではないか。



 そして何より、常設展はたいてい空いている。人気の企画展はときに、会場内が立錐の余地もないほど混雑してしまう。入館するまでに行列なんてこともザラ。常設展なら、誰にも邪魔されず名作と、それこそ一対一になって時間を過ごすことだってできる。


 何かを鑑賞するかたちとしてどちらが正しいのかは明らか。ぜひ常設展示室で、濃密な時間を過ごされたい。



(山内 宏泰)

文春オンライン

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