芥川賞作家・津村記久子「なんで『西部警察』はよくて『うる星やつら』はダメやったんやろう」

8月19日(日)11時0分 文春オンライン

 芥川賞作家は普段どんなテレビを観ているのか? そしてテレビは小説執筆に影響するのだろうか? 自らを「テレビっ子ではない」と語る津村記久子さん。それでも幼稚園の頃からテレビをよく観ていたそうで……。全3回の前編では、小さいときに大好きだったという『西部警察』から中学のときにハマッた深夜映画のことまで、てれびのスキマさんが伺います。(全3回の1回目/ #2 、 #3 へ続く)




「テレビっ子」っていえるほど観てないです(笑)


—— 今日はテレビについてのお話を伺いたいんですが、作中でもよく芸人さんのお名前が出てくるのでお笑いとかもお好きなのかなと思っていました。


津村 一般的な大阪の人っていう程度で。「テレビっ子」っていえるほど観てないですけどね(笑)。


—— 最新作の『 ディス・イズ・ザ・デイ 』は、日本のプロサッカー2部のサポーターたちのお話ですが、今回のW杯はご覧になっていますか?(※取材日は決勝トーナメント1回戦終了時)


津村 観たり観なかったりですね。決勝トーナメントからは観たいです。録画してるんで、結果言わないでくださいね(笑)。予選リーグはちょこちょこしか観てないですね。


—— 特に日本代表を応援するっていうのはないですか。


津村 なるようにしかならん感じがあったから(笑)。どの試合も私が気にかけた方が負けるんで肩入れしすぎないように心がけます。だから、ほんまに気にかけてることを逆に観なかったりしますね。「観たいけど観たらあかん」みたいな感じで。


—— テレビで観るサッカーと、会場で観るサッカーとの違いは感じますか。


津村 会場のほうが観やすいですね。やっぱりどの場所におっても全体が観られるから。テレビやとクローズアップと全体が行き来するじゃないですか。私は鈍いんで一瞬考えないとボールがどこにあるかわからなくなる。たぶん0.何秒とか遅れるんですよね。だからスタジアムの方が観やすいですね。


北九州でJ3を見て、フェリーで帰る


—— 『ディス・イズ・ザ・デイ』の執筆が終わった今でもスタジアムに行かれるんですか。


津村 明後日、北九州に行きます。J3の鹿児島ユナイテッド対ギラヴァンツ北九州。しばらく行けてなかったんですけど(※西日本豪雨のため行けなかったそうです。)


—— 以前から北九州にはよく行かれているんですか。

津村 大阪から小倉ってめちゃくちゃ行きやすいんですよ。行きは新幹線で2時間ぐらいなんですけど、帰りはフェリーで。門司港から大阪の南港までフェリーが出てて、十何時間かけて行くから、中で泊まれる。新幹線だと1万4000円ぐらいかかるけど、フェリーは個室で8730円とかなんです。泊まってるうちに大阪に帰ってこれるのですごくいいですよ。



心霊写真とか怖い話が好きだった子どものころ


—— 『ディス・イズ・ザ・デイ』では「(日常は)ずーっと一人で冷たい広い川を渡ってる感じ。(略)試合があってくれるっていうことはさ、そういうとこに飛び石を置いてもらう感じ」という、好きなものを糧に生きてる人にはとても共感する表現があります。


津村 「とりあえず試合があるわ」とか「家で今からおやつ食べながら試合観よう」って思ったら、立ち直ったりしますよね。



—— 子供のころはテレビは観てましたか。

津村 すごい観てたと思います。『あなたの知らない世界』がほんとに好きでした。私の好きなものが全て詰まってましたね。心霊写真とか怖い話とか。


『うる星やつら』はダメで『西部警察』はOKだった両親


—— 毎年、夏休みのお昼にやっていた番組ですね。


津村 同じ「お昼のワイドショー」の『テレビ公開捜査』も好きでしたね。人探しに興味あったんですよね。なんでやろうと考えるのが好きやったんちゃいますかね。


 あとはアニメを観て……、あ、『西部警察』が好きでした! 幼稚園の頃に日曜に『西部警察』を観るのがほんまに楽しみでしたね。話も好きやったし、刑事も好きやったし、石原軍団も好きやったし、すべてが好きでしたね(笑)。


—— ご両親って厳しい方でしたか。


津村 そんなには。でもアニメは観るなっていう作品もありましたね、『うる星やつら』とか。今から考えると、銃とか撃つ『西部警察』がOKなのに、なんで?って思いますけど(笑)。


—— 小学校のクラスではどういうタイプの子でしたか。


津村 地味な子供でした。うるさくて先生に怒られるんやけど立ち位置は地味な。友達はいるにはいるし、いじめられたとかはないんですけど、大人びた同級生には侮られてる子でした。


関西ローカルの深夜映画で「サブカル」に


—— その頃はどんなものを観ていましたか?


津村 高学年くらいでトレンディドラマが流行ってたんですけど、ドラマには興味がなかったですね。『グーニーズ』とか洋画のビデオを借りて観るのが好きやったんです。あと、中学の時は関西ローカルでものすごく細かい映画をやってたんです。夜中に『アンダルシアの犬』とか(笑)。


 それで図書館行ったら古い映画の本は借りられずに置いてあるから、そういうのを読みながら「あぁ、今日はあれやるんや」って。だから、サブカルっぽくなったんですよ、そのへんから。


—— その深夜の映画番組は、最初はたまたま見つけたんですか。


津村 読売テレビで深夜の1時から3時ぐらいに、月〜金で毎日やってたから自然に目に入ってきましたね。今ではなかなかテレビではやらないような文芸映画、単館系の映画とか白黒映画をやってましたね。ほとんど内容は覚えてないですけど、そこからなんか嫌な子供になり始めて(笑)。



ダウンタウン」より「雨上がり決死隊」世代


—— お笑いはどうですか?


津村 中1ぐらいからめっちゃ観てました。毎日一緒に帰ってる友達のお姉ちゃんがサブカルの人やって。その影響で『コックと泥棒、その妻と愛人』みたいな映画のことを知ったり、古田新太さん、牧野エミさん、桂小枝さんでやってた『怒涛のくるくるシアター』(バラエティ番組)とか観てましたね。テンション(田口浩正と小浦一優によるお笑いコンビ)とかも出てたんですよ。だから、今でも田口浩正さんとか見たら、「あっ、テンションの人や」って思うわけです。


 あとは「吉本印天然素材」の前の段階で、雨上がり決死隊とバッファロー吾郎とFUJIWARAとかが組んでた「しねしね団」というコントグループもその番組で観てましたね。その時のビデオを繰り返し見過ぎて「天然素材」の頃にはあまり執着がなくなってました。なんか嫌な子ですね(笑)。



—— お笑いライブは行っていたんですか。

津村 中学の時は行ってました。(心斎橋筋)2丁目劇場に友達に連れられて。でも、みんな出待ちをしたがるんですよね。私、出待ち嫌いなんですよ、外でひたすら待ってるのとかすぐ退屈してたから(笑)。ライブだけ楽しんで帰ったらいいのにっていうのが通用しなかったので、徐々に足が遠のきましたね。


—— 世代的にはダウンタウン全盛の頃でしょうか?


津村 さすがに『4時ですよ〜だ』は観てました。でも、ダウンタウンが直撃した世代ってちょっと上、ちょっとだけずれるんですよ。私たちは雨上がり決死隊ぐらいからなんですよね。


—— 中学3年の頃、バルセロナ五輪からオリンピックを見始めたそうですね。


津村 『コビーの冒険』ね(笑)。バルセロナ五輪のマスコットキャラクターのアニメ。塾に行く前に、コビーを毎日10分観てたんですよね。


—— テレビでオリンピックを観るのはどんな感じでしたか。


津村 みんなが結果を私と同時に知るっていうのが不思議でした。めっちゃ当たり前の話なんですけど。一番印象に残ってるのが男子マラソン。森下広一さんが2位やったんですけど、生放送やと結果が全員同時にわかるっていうことをそれまで意識したことがなかったので、その感じがおもしろかったですね。


 あと、オリンピックでは開会式が今でも好きですね。名前を知らんかった国の選手が1人だけで出てきたり、スタッフがめっちゃ手振ってる。アメリカとかロシアの大選手団に挟まれて、小さな国の人たちが、ニコニコしながら出てくるのがすごい好きでそこばっかり観てます(笑)。



つむら・きくこ/1978年大阪府生まれ。2008年『ミュージック・ブレス・ユー!!』で野間文芸新人賞、09年「ポトスライムの舟」で芥川賞、11年『ワーカーズ・ダイジェスト』で織田作之助賞、13年「給水塔と亀」で川端康成文学賞、16年『この世にたやすい仕事はない』で芸術選奨文部科学大臣新人賞、17年『浮遊霊ブラジル』で紫式部文学賞を受賞。最新作にサッカー2部リーグのサポーターたちの群像を描いた『 ディス・イズ・ザ・デイ 』。​



写真=深野未季/文藝春秋



(てれびのスキマ)

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