大阪の作家・津村記久子が語る「『探偵!ナイトスクープ』の七並べの回のような小説を書きたい」

8月19日(日)11時0分 文春オンライン

 大阪出身の芥川賞作家・津村記久子さん。津村さんの小説にはお笑い芸人の名前がよく出てきます。特にバッファロー吾郎さんが好きだという津村さんに、『M-1』のことから、関西で絶大な人気を誇る『ちちんぷいぷい』や『探偵!ナイトスクープ』のことまで伺います。(全3回の3回目/ #1 、 #2 はこちら)




「バッファロー吾郎」は「エジソン」「ヘレン・ケラー」みたい


—— 『八番筋カウンシル』の文庫解説を芸人の小籔千豊さんが書かれてましたけど、小籔さんはもともとお好きだったんですか。


津村 自分が芥川賞をとった直後に、会社帰りに電車で寝てて夢に見たんですよ。小籔さんが芥川賞を獲って『文學界』でエッセイを書いているという夢。で、その後に私の本を読んでくれてはったという話をどこかで聞いて。


—— 混濁してますね。


津村 そうそう。むちゃくちゃ混濁して(笑)。その夢で小籔さんがすごく真剣に純文学の未来を憂いてる記者会見をしてたんですよね。


—— あと作中にはバッファロー吾郎さんもよく名前が出てきますね。


津村 バッファロー吾郎好きですね。「バッファロー吾郎さん」っていうよりも、「バッファロー吾郎」ですね、「エジソン」とか「ヘレン・ケラー」みたいな感覚なんで。


毎年チェックする『オールザッツ漫才』


—— どういうところが好きなんですか。


津村 今すごく観れてるとかやないけど、10代の頃はすべてが好きでしたよ(笑)。(バッファロー吾郎が優勝した)『キングオブコント』第1回の決勝で言うと、「熊にまたがった市毛良枝さんがこっちに向かって来ています!」「違う、あれは市毛悪枝さんだ!」とかっていうのがもうほんとに好きなんです(笑)。「市毛悪枝」さんとかすごいなあと。


 瞬間的な笑いではもう圧倒的にバッファロー吾郎がすごかった。お笑いやととりあえず、『オールザッツ漫才』(関西ローカル、年末のお笑い特番)は毎年観てます。それ観ないとね、友達の話題についていかれへんから。ダイアンの西澤さんがやってる太秦の出番の空き時間を潰す俳優の岸大介と、守谷日和さんの女キャッチャーの話をずっとしてます。


—— それも社交なんですね(笑)。


津村 好きで観てるんですけど、友達と話すのが楽しみなんですよね。『M-1』でも決勝進出者が出揃ったら、ワクワクする。それでミキが出てきたら「おもしろいなー、でも去年(2016年)銀シャリが優勝したの考えたらすごい早いなあ」って勝手なことを友達の家で一緒に観ながら喋るのが好きで。



友達と期待しているのは「和牛」と「ミキ」


—— 感想戦みたいな感じで。


津村 そうそう。年末の漫才番組も録画して、「中川家と銀シャリとメッセンジャーって、すごい私たちの大好物が並んでる!」みたいな感じで。その部分だけをDVDに録画していってちょっと見てもらうみたいなね。そういう話をせずにはおれんです。高校の時からの友達なんですけど、そういう話をするのって楽しい。SNSとかで共有したいとか思わないんですけど。


 やっぱり『M-1』でとろサーモンが勝ったら感動しますしね。とろサーモン、周りの人らもずーっと前から観てて、久保田さんが「クズ」みたいなキャラで浸透してるから、みんなが様式美みたいに「よかったなあ、村田(※原文ママなんで敬称略ですみません)」ってまず言うとか、そういう約束事がすごいおもしろいですね。



—— あはは。


津村 もちろんその後に久保田さんも祝いますよ。さすがにやっぱりみんな大阪の人は『M-1』の結果とかにものすごく興味がある。東京の人と喋って、意外とそうでもなかったりするとちょっと驚きますね。


—— 最近好きな芸人とかっていますか。


津村 あんまり追えてなくて、友達とすごい期待して観てるのは和牛とミキですかねえ。すでに決勝まで勝ち上がってる人たちですけどね。


長年つるむおじさんが羨ましい


—— 『ディス・イズ・ザ・デイ』にも『探偵!ナイトスクープ』出てきましたけど大阪のローカル番組ってどんなのを観てますか。


津村 『ちちんぷいぷい』(平日午後の情報番組)をとびとびで観てますよ。MBSの。


—— 司会のアナウンサーの方がすごい大阪では人気だそうですね。


津村 角(淳一)さんはもうちょっと出てないんですけど。今は5人ぐらいで司会をまわしてはります。西(靖)さんとかヤマヒロ(山本浩之)さんとか。ヅラを告白しはった人ね。


—— あぁ。


津村 『ちちんぷいぷい』は目の付け所がすごく優れてると思います。「昨夜のシンデレラ」って、盛り場の道歩いてるおじさんに声かけて、「どういう集団です?」みたいなことを聞くコーナーとか、すごい楽しいです。


—— それお昼にやってるんですか(笑)。


津村 昼です。たとえば、梅田の東通りにいたお二人に「どういう関係で?」と聞いたら、「20年前に会社で仕事してた」みたいな感じで。おじさん同士は何十年前に仕事したとかでも結構長いことつるむなって思ったんです。すごい羨ましくって。


 サッカーのスタジアムでもおじさん同士ってすごいおもしろいんですよ。縦に並んで「肉まんいる?」って、食べ物を分け合おうとしたり、「また来年ね」って固い握手を交わしてたり。そういうのが「昨夜のシンデレラ」には端的に映ってる。おじさん同士は意外とすぐに仲良くなるっていう。「中高年男性の孤独」とかいうけど、人と仲良くなるのがうまいおじさんもいるのかなと思いますね。


—— 『ちちんぷいぷい』ってワイドショーかと思ったら、そういうコーナーもやったりするんですね。


津村 コーナーが結構充実してて、あんまりワイドショー的な役割は求めてないですね。



『ドキュメント72時間』は内容が予想できんかった回を残す


—— ある種ドキュメンタリーですよね。


津村 そうですね。それこそ『世界ふれあい街歩き』に出てくる世界のオモシロ素人の日本版みたいな。『世界ふれあい街歩き』は世界を日本的な視点で編集してるからおもしろいんでしょうけど、よくあんなおもしろい素人さん出てくるなって思って。どうやって探してるんでしょうね。



—— ドキュメンタリーもご覧になるんですね。


津村 『ドキュメント72時間』とか観てますね。録画しては消し、録画しては消しを繰り返してるんですけど。最近残したので覚えてるのが、「カナリア諸島に来た漁師」、「宮崎の路上ピアノ」とか「高田馬場のゲームセンター」。内容が予想できんかった回の方が残しますね。


『探偵!ナイトスクープ』の「七並べ」的な世界を書きたい


—— 関西の人気番組『探偵!ナイトスクープ』はいかがですか。


津村 あんまり観られてないですけど、すごいおもしろかった回は覚えてますね。朝日放送を流してるときに『ナイトスクープ』の番宣観て、すごい気になるやつは観るんです。「70過ぎたお母さんがなぜやたらと朝帰りをするのかを調査してくれ」っていう依頼(「朝帰りする71歳の母」)を気になって観たんですよ。その71歳の女性がそこで何をしてるのかというと、友達とトランプの七並べをしてたんですよね。


—— 七並べ(笑)。


津村 友達と集まって(笑)。めっちゃ楽しそうに七並べ。夜を徹してずっと七並べをしてる。いろいろと語り合うとかは全くなく、ただただ近所の友達と七並べをしている。


—— ストイックに(笑)。


津村 そう、めっちゃ楽しかったですよ。その回はもう大好きなので録画しておいてますね。もう4年も前の回ですけど。小説になりそうですよね。理由を知りたい。そこでなんか「孫が……」なんて話を一切しないのが潔いですね。何回も観返しました。なんか幸せじゃないですか。それこそ七並べの様子を12時間ぐらい録画したのをずっと流してたいです(笑)。最近で一番好きなのはその回かなあ。


—— おもしろいですねえ。インタビューの最初に「テレビっ子じゃない」とおっしゃってましたけど。


津村 めっちゃテレビっ子でしたね(笑)。


—— 最後に、なんか唐突に普通のインタビューみたいになっちゃうんですけど(笑)、今後書きたいテーマはありますか。


津村 急に(笑)。いやいや、ホントそれこそさっきの「七並べ」的な世界が書きたいですね。自分がすごく退屈な住宅街を通って仕事に行くのが苦痛で仕方ないときがあって。だから次はいっそその住宅街をモデルにした話を書こうと思ってます。その住宅街で夜中にみんなが起きてて何考えてるかみたいな。W杯でもそうだけど、みんなが夜中起きてワーッと言ってるじゃないですか、同時に。W杯が終わって寂しいので、まあ規模は小さくなりますけど、そういう世界を一回書きたいなと思ってます。



つむら・きくこ/1978年大阪府生まれ。2008年『ミュージック・ブレス・ユー!!』で野間文芸新人賞、09年「ポトスライムの舟」で芥川賞、11年『ワーカーズ・ダイジェスト』で織田作之助賞、13年「給水塔と亀」で川端康成文学賞、16年『この世にたやすい仕事はない』で芸術選奨文部科学大臣新人賞、17年『浮遊霊ブラジル』で紫式部文学賞を受賞。最新作にサッカー2部リーグのサポーターたちの群像を描いた『 ディス・イズ・ザ・デイ 』。



写真=深野未季/文藝春秋



(てれびのスキマ)

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