熱中症危機に晒される部活動 大人たちの同調圧力も危険因子

8月19日(日)16時0分 NEWSポストセブン

熱中症の危険があると教員が私費でクーラーを導入したが

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 東京都内と名古屋で観測史上初の40度超えを記録している2018年は、気象庁も「災害」だと認めるほどの猛暑が続いている。消防庁によれば、7月23〜29日の一週間に熱中症で救急搬送された人数が全国で1万3721人、そのうち39人が死亡した。部活動中に熱中症となり救急搬送されたといったニュースも今年は多く、安全のために課外活動を中止したり、時間や場所を変更した学校も多いと言われる。ところが現実には、周辺の大人たちによる奇妙な同調圧力によって、危険に直面させられている生徒や教員も少なくない。ライターの森鷹久氏がレポートする。


 * * *

 埼玉県下の某高校に勤務する松本雄介教諭(仮名・30代)は、この夏すでに二回も倒れ、うち一回は救急搬送までされた。松本教諭は野球部の副顧問だ。


「子供たちにも、あまりの暑さで嘔吐したり、気分が悪くなって倒れたりする子がいるんです。35度を超えている日に、グラウンドで練習なんて異常です。しかも日焼け対策に皆長袖長ズボン、帽子まで着用しなければならず……。はっきり言えば、もうこんなことは、子供にやらせるべきではないし、どの先生も同じ思いです。ただ、言い出しっぺになりたくないから、こうしてズルズルと、子供たちを過酷な環境下に置くことになってしまっている……」(松本教諭)


 グラウンドの隣では、サッカー部、硬式テニス部の生徒らもこの炎天下の中、一日数時間の練習を行っている。救急搬送されたり入院するような子は“まだ”出てはいないが、気分が悪くなり保健室で休んだり、体調を崩して補修や特別授業を休む生徒が続出していると訴える。


「私たちの学生時代、ここまで暑くはありませんでした。なのに“我慢すべき”と、学校の上層部は譲りません。我々だって本当にきついのですが、教師が生徒を引っ張っていかなくてどうする……などと言われて」(松本教諭)


 体調不良者が相次いだために、学校はついに部活開始時刻の“前倒し”を決めたというが、これも「焼け石に水」だという。


「部活の開始時刻が朝七時からと決定しましたが、八時にはすでに30度を超えていることもあるのです。上層部が“涼しいうちに部活を”などと言っていますが、実態を知らなすぎる。こんな暑さのなか運動をして、午後はみんなぐったりです。学習する時間も取れないほど、体が疲弊する」(松本教諭)


 千葉県内のとある私立高校では、バスケ部顧問の笹川幸男教諭(仮名・40代)が「スポットクーラー」を私的に購入し体育館に設置した。夏の体育館内は45度を超えることもあるというから、バスケ部の生徒だけでなく、バレー部や卓球部の生徒も涼を求めてやってくる。他部の生徒からは「バスケ部はいいな」と羨ましがられていたが、ある日、バレー部、卓球部、バドミントン部らの顧問から「クーラーを撤去するように」と連名の書面を突き付けられた。


「平等ではない、私物を持ち込むな、そもそも電気代は学校が払っている……などと言われて、やむなく撤去しました。もっともそうな内容の書面でしたが、子供のことを一切考えていないことは明らかです。彼らは、部活動の時間はずっと体育館にいるわけではなく、数十分体育館に来て指導した後は、クーラーがばっちり効いた教務室で休んでいる。さらに驚くことに、バスケ部以外の生徒の親御さんからも“差別だ”と指摘されました。自分のお子さんなのに、心配ではないのか。みんなで我慢すれば乗り越えられる、といった精神論かもしれませんが、暑さは精神論でどうにかなるモノじゃないし、我慢すれば死ぬのです」(笹川教諭)


 世界中で「猛暑」が観測されているが、原因は地球の温暖化以外に見当たらない、などとも議論されている。わが国では、再来年の夏にはオリンピックが開催される。近いところでは夏の甲子園大会だろうか。暑さを我慢し、克服することが「美徳」とされてきたかもしれないが、心頭滅却しようが、火が涼しいなんてことは絶対にない。何より子供たちの、人の命を第一に考えれば、これらの美徳なるものがいかに愚かで、バカげているかは容易に理解できるはずだが……。


「だれかが“もう止め!”と言えればいいのですが言えない。言える立場の人は現場を知らないし、東京五輪だって“暑さを克服しよう”などといっている政治家までいる。精神論の押し付けで、人の命がなくなったらどうするのか…。彼らにはそんな責任感はないのでしょうけど…」(松本教諭)


 戦時下を彷彿とさせるような「炎天下の運動」強要。古い感覚に塗れた、これらを良しとする世界では、生徒は褒められようと懸命に努力をする。努力する姿は美しく、彼らの意気は高く評価されるべきだが、わざわざ灼熱の中でやらされる理由はないし、何より危険で、バカげた指導者の言いなりになって体を悪くしてしまえば、得られるものは何もない。

NEWSポストセブン

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