原発はヒューマンエラーが必然的に発生することが明らかに

8月28日(月)7時0分 NEWSポストセブン

平成史について語り合う佐藤優氏(左)と片山杜秀氏

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 保守派の人たちによる日の丸と「君が代」を守りたいという焦りから法制化された「国旗国歌法」。思想史研究家の片山杜秀氏と元外交官・作家の佐藤優氏が、この法案成立の頃から堅調になってきた、原発事故をめぐる人類のあり方への思想について語り合った。


片山:国旗国歌法案成立の前年には、公明と新党平和に分裂していた公明党が復活しました。創価学会は自らの中間団体としての機能を見直したのでしょう。


佐藤:公明党再結成は創価学会の政教分離見直しを意味します。これを機に創価学会と公明党の距離が一気に近づき、いまに繋がる路線が確立した。


片山:再結成翌年の1999年9月に東海村JCO臨界事故が起きました。創価学会と原発事故2つのキーワードで思い出すのが、1974年に公開された映画『ノストラダムスの大予言』です。資本主義や社会主義とは違う第3の道を歩まなければ、人類は滅亡する。あの映画は創価学会の価値観に裏打ちされていたと思いますね。


佐藤:それは、日蓮仏法をもとに新たな文明を築くという創価学会の「第三文明」という考え方ですね。


片山:そうです。劇中で主演の丹波哲郎が「原発に絶対安全はない」と国会で演説する。原発事故を予見した映画でもあったんです。


佐藤:東海村の原発事故は、完全なヒューマンエラーでした。労働者がバケツで溶液を移したら青い光が出てきたという。本当に恐ろしい話でした。


片山:私も恐怖を覚えました。特に私たちは子どものころから人類滅亡の終末論をすり込まれた世代だからなおさらでした。しかもヒューマンエラーで核爆発が起こるというシナリオもさんざん語られていた。


佐藤:2011年の福島第一原発事故でも同じ過ちが繰り返されました。予備電源のプラグ形状が合っていれば、被害は最小限で食い止められていた。あれもヒューマンエラーだった。


片山:初歩的な危機にも対応できないなんて労働者の資質や教育はどうなっていたのかと思います。福島原発事故で、いや東海村の事故で、原発はヒューマンエラーが必然的に発生することが明らかになりました。


佐藤:下請け、孫請け、ひ孫請けの労働者を使うという原子力産業の構造も大きな問題です。『闇金ウシジマくん ザ・ファイナル』でも原発という名前こそ出しませんが、5000万円の借金を抱えた人間を2年で身体がボロボロになる特殊な清掃現場に送り出す。


片山:原発労働者の地位が低すぎるんです。特殊な現場で働いているのだから高給にして労働英雄のように称えてもいい。


佐藤:同感です。元原子力安全委員長の佐藤一男さんは、1984年に刊行した『原子力安全の論理』で原子力産業の問題点を喝破しています。人間はコンピューターに比べて、計算も遅くて、記憶力もない。でも総合的な判断力は人間に優るものはない。だからアクシデントを防ぐには人間を鍛えるしかない、と。


片山:予見的な書ですね。東海村JCO臨界事故は、原子力産業のひずみを我々に見せつけました。3・11の12年前ですよ。歴史は必ず未来への予兆と警告を発する。受け止めが足りませんでした。


●かたやま・もりひで/1963年生まれ。慶應大学法学部教授。思想史研究家。慶應大学大学院法学研究科博士課程単位取得退学。『未完のファシズム』で司馬遼太郎賞受賞。近著に『近代天皇論』(島薗進氏との共著)。


●さとう・まさる/1960年生まれ。1985年、同志社大学大学院神学研究科修了後、外務省入省。主な著書に『国家の罠』『自壊する帝国』など。共著に『新・リーダー論』『あぶない一神教』など。本誌連載5年分の論考をまとめた『世界観』(小学館新書)が発売中。


■構成/山川徹 ■撮影/太田真三


※SAPIO2017年9月号

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