野党追及の「第2の加計」に元社長含め朝日OBが続々再就職

8月29日(火)16時0分 NEWSポストセブン

加計学園問題への追及は鋭かったが…

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「国政を揺るがす両問題を最初に報じた後、関連各省の記録文書の存在などを報道し続けた」──。7月、日本ジャーナリスト会議(JCJ)は朝日新聞の「『森友学園』への国有地売却と『加計学園』獣医学部新設問題を巡るスクープと一連の報道」を今年のJCJ大賞に選出した。ところが、そんな名誉ある朝日の“ジャーナリスト精神”の斬り込み方は、取材対象組織の“体質”によって温度差があるように見える。


「国家戦略特区」を適用させるという手法で、52年ぶりの獣医学部新設を進めている加計学園をめぐっては、その認可過程での「加計ありき」疑惑で、長く一強を続けた安倍政権を揺るがす問題に発展した。


 その加計学園より一足早く、国家戦略特区で医学部新設が認められ、この4月に開校したのが、国際医療福祉大学成田校だ。


 1995年に設立された国際医療福祉大(以下、国福大)は、看護学部や保健医療学部などを有していたが、成田市と共同で、2013年9月に国家戦略特区として国際医療学園都市構想を提案。2016年8月に、文部科学大臣が新設を認可し、開校に至っている。なお、医学部の新設は、東日本大震災の復興支援の特例により2017年開校された東北医科薬科大学医学部を除けば、38年ぶりとなる。実はこの認可のプロセスにも、疑問が呈されている。


◆ずいぶん大人しい?


 民進党の「加計学園疑惑調査チーム」座長の桜井充参院議員はこう言う。


「加計疑惑と同様に、国際医療福祉大も認可までのプロセスに“国福大ありき”の流れが見えます。医学部の設置事業者の公募が始まるのは2015年11月ですが、それより前の2015年10月に行なわれた『東京圏国家戦略特区会議第1回』の議事次第で、国家戦略特区担当の石破茂内閣府特命担当大臣(当時)らとともに、国福大の高木邦格理事長の代理で矢崎義雄総長が出席者として明記されていた」


 国福大には、2014年2月まで内閣官房社会保障改革担当室長を務めた元厚労省社会・援護局長が、教授として在籍している。


「同大は文科省や厚労省OBの天下りを受け入れている。そういう意味でも加計学園と同じように政治案件として認可が進められたと認識している。今後、さらに追及していく」(桜井氏)


 野党は「第2の加計」とみて疑惑追及の姿勢を打ち出すが、メディアの反応は薄い。


 加計問題では、文科省に「総理の意向」と記録された文書があること、さらに文書作成当時に文部科学事務次官だった前川喜平氏が「文書は本物」だと証言したインタビューなどスクープを連発し、疑惑追及の急先鋒となった朝日新聞も、「第2の加計」には追及が緩いように見える。


 朝日が国福大の認可について報じた記事は、加計を巡る文科省の内部文書に「成田市ほど時間はかけられない」とあったことを受け、〈同じように特区で実現した国際医療福祉大の医学部新設を指すとみられる〉(5月30日付)という説明や、6月28日付記事で、〈安倍政権は、東京圏特区に含まれる千葉県成田市に、国際医療福祉大が医学部をつくることを認め、今春開学した。獣医学部設置を認めた際も、医学部の手続きを参考に進められた〉と触れた程度だ。


 加計問題については、社説で〈国家戦略特区の認定手続きをいったん白紙に戻し、プロセスを踏み直すべきだ〉(7月25日付)、〈国民の知る権利を踏みにじる行い〉(8月11日付)と厳しく追及してきたことと比べると温度差がある印象だ。


 そうしたなかで注目すべきは、国福大に“天下り”しているのは、元官僚だけではなかったことだ。


◆“吉田調書辞任”社長が「特任教授」に


「国福大には、朝日の大物OBが教授や理事として“再就職”している。さらに今春から、木村伊量(ただかず)前社長も『特任教授』として同大学院の乃木坂スクールで公開講座を週に1度行なっている」(朝日新聞関係者)


 同大では、朝日新聞の論説委員だった大熊由紀子氏が2004年、国際福祉大学院の医療福祉ジャーナリズム分野の教授に就任。2005年に退任した箱島信一元社長も2007年から大学の理事(非常勤)を務めている。


 今春から「特任教授」になった木村氏の活動については、〈わたしたちはどこへ向かうのか〜近代への旅・現代文明への問い〜〉なるテーマの講義を9月から計15回行なうとして受講者を募っている。前出・朝日新聞関係者は言う。


「朝日が疑惑を追及する『国家戦略特区』で医学部を新設した大学ですから、あまりにタイミングが悪いというしかない」


 木村前社長は、2014年に朝日新聞の慰安婦報道や福島第一原発の吉田調書報道の誤報を認め、会見で謝罪。責任を取る形で辞任した。


 その木村氏が特任教授となったのは、加計学園疑惑が国会で追及され始めた4月である。その翌月、朝日による「総理の意向文書」のスクープで国家戦略特区問題に火がつき、5月31日には民進党が「国家戦略特区撤廃法案」を提出する動きを見せるなど、特区という枠組みそのものに対して、疑念が高まっていった。そして8月10日、文部科学省の大学設置・学校法人審議会が加計の獣医学部の認可判断を「保留」する方針を固めたことが報じられた。


 国家戦略特区による獣医学部の設置に“待った”がかかったことで、野党はすでに認可されたケース(国福大)の検証にも乗り出している。報道機関にとって取材対象であることは間違いないが、その大学に、日本を代表する新聞社の元幹部や論説委員が退職後に続々と職を得ていれば、取材がやりにくくなることは容易に想像できる。大学側の「マスコミ対策」に取り込まれているのではないかという見方をされても仕方ないだろう。


◆「その件については話していない」


 メディア法が専門の服部孝章・立教大学名誉教授はこう話す。


「メディアの責任ある立場にあった人が、大学に再就職をしたからといって、それだけでとがめられるわけではない。だが、安倍首相とメディアの距離感が問題視されている現状に鑑みれば、『岩盤規制に穴を開けた』と首相自身が豪語している大学で、新設医学部が開校したのと同じタイミングで“客寄せ”と見られかねない特任教授に木村氏が就任している。どのような実態にあり、問題があるのかないのか、朝日新聞は積極的に調査をして発信すべき。巨額の税金が投じられる大学ビジネスだからこそ、非常に重要です」


 朝日自らこの再就職について取材、調査し報じるべきという指摘だ。加計学園と同様に、国福大にも税金が投入されている。成田市は国福大に対し、50年間無償で土地を貸与し、さらに、医学部新設に必要とされる予算160億円のうち、成田市が45億円、千葉県が35億円を拠出した。


 国福大は、本誌・週刊ポストの取材に「特区に関しては公平公正に申請し、厳しいルールのもとに認可されており、その過程に一点の曇りもありません。厚労省などからの再就職はありますが、医学部開設と関連して入っていただいたことはあり得ません。朝日OBの方の力を借りたということもありません」(総務・広報担当理事)


 木村前社長、大熊氏にはコマ数に応じ報酬を支払っているが、箱島元社長は無給だという。ちなみに、同大学院には元読売新聞の幹部2人も教授として名を連ねている。


 戦略特区で誕生した大学に勤めていることについて、木村前社長に直撃すると、「その件についてはどこにも一切話していないので(大学の)広報に問い合わせてください」と回答を拒否。朝日新聞はこう答えた。


「弊社出身者の勤務先について個々に把握しているわけではありません。また、出身者が在籍している組織だとしても、弊社の報道姿勢に影響はありません」(広報部)


 元朝日新聞ソウル支局特派員の前川惠司氏は、こう呆れる。


「どこに再就職するかは個人の自由ですが、新聞社は社会の公器。認可プロセスの検証で問題が出たならば学校に社長経験者が2人もいたままではモラルを問われても仕方がないでしょう。朝日の現役にとっても迷惑な話になると思います」


 前出・服部名誉教授は、別の視点からこう話す。


「加計問題では、国家戦略特区の選考過程で行政が歪められたかどうかということばかりに焦点が当たっているが、規制に穴をあけて設置させた大学で、学生の質が保たれるのかについては、検証が十分なされていない。獣医学部や医学部は国家資格が求められる人材を育てる機関である以上、むしろそちらの方がチェックされるべき本質的な問題。朝日は国福大での検証報道に乗り出すべきではないか」


 加計疑惑について安倍首相が「李下に冠を正さず」と反省を口にしたことについて、朝日は〈焼き肉、ゴルフ、居酒屋、またゴルフ……。それにしてもいかに頻繁に、冠を正してきたことか〉(7月25日付、天声人語)などと皮肉ってきた。自らに向けられた疑念はどう晴らすのか。


※週刊ポスト2017年9月8日号

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