犯罪加害者の父熱演の佐藤浩市 親心を感じさせる撮影の裏話

9月7日(金)11時0分 NEWSポストセブン

「父親」を語った

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 わが子が殺人の罪に問われた時に親としてどう受け止めるのか──。映画『友罪』に続き、佐藤浩市は9月21日放送のドラマ『Aではない君と』(テレビ東京系)で再び薬丸岳原作の作品に出演して、加害者になった子供の父を演じている。


「加害者の父という立場は共通していますが、映画では贖罪という言葉に自分の隠れ場を見つけて逃げ込んだ父、ドラマでは打ちのめされながらも息子と向き合い続け、息子が犯した死体遺棄事件やこの先背負う人生からも逃げないことを覚悟した父として、役と向き合いました」


◆長男も俳優になった


 佐藤も息子を持つ父として、男親と子供の関係性について語る。


「無防備なくらい子供に向き合える母親と、父親は違うと思うんです。父親は愛を注ぐ一方で、家族のあり方や自分の社会的な役割などを考えてしまうもの。ドラマでは中学生の息子が犯した罪を前に、“子供の思考”を理解できていたのかを自問する。そして、理解しているつもりができてはいなかったとわかり愕然とする。これが親子だし、このドラマが持つ深さかなと感じますね」


 自身も演じながら、父としてのあり方を自らに問い直したという。


「よかれと思って親は行動するけれど、どこか子供の自尊心を無視している場合もあったかもしれない。そうした反省は子供が大きくなってから気付くこともいっぱいある。実の息子がこの作品をどう観るかなという思いはあります。まぁ、ウチはもう同業者だから“親父はこのシーンをどういう想いの中で演じたのかな”と観ちゃうんでしょうけれど」



 昨年俳優デビューを果たした長男の寛一郎とは、互いの芝居について語り合うこともあるのだろうか。


「ありますよと言ってしまうと、どんな内容か訊かれて煩わしく感じると思うのでね、彼が(笑い)。僕自身もかつて同じ質問をされて、本当は話していても“いいえ”と言っていましたし。面倒くさいとも恥ずかしいともちょっと違うけど、人様に言うことじゃないというか……なんかね、そういうことなんですよ」


 きまり悪そうに照れ笑いを浮かべたが、三國連太郎を父に持つ自身の境遇と重ねた親心なのだろう。


 撮影では、息子役の俳優への親心を感じさせるエピソードがあった。終盤、事件に関わった息子が作った炒飯を父親が口にした途端、息子が泣き始めるシーンがある。涙の理由や、食べるという行為を通じて作品の核心に迫る重要な場面だ。


「台本には『慟哭』とあり、息子の異変に“どうした?”と声をかけることになっていた。でも(息子役の)彼のお芝居には感情の吐露にまだ気恥ずかしさが感じられて、僕は台詞が出てこなかった。だから4〜5分そのまま泣かせたんです。


 佐藤さんはどうして台詞を言ってくれないんだと戸惑ったでしょうね。今の子には歓迎されない愛の鞭(笑い)。でも、あなたのお芝居でこちらの芝居が成立する、人はひとりでは成り立たないという世の条理に気付いてくれたらと。それを含めての親子で物を食う、というシーンですから」


 佐藤浩市が食べる姿は心に刺さる。一心に食べ物と向き合う姿が、背景やその意味を饒舌に語りかけてくる。



「心情や心象を伝えるのに、『食う』という作業に勝るものはないと思っています。食べる時は、観る人に真剣に食べていると伝わるようにしたい。


 僕が役者を始める前にね、『座頭市』シリーズで勝(新太郎)さん演じる市が、白湯をかけた茶漬けに沢庵を食うのを見た。抜群に美味そうで、沢庵が好きじゃなかったのに食うようになったんです。美味そうにメシが食えない役者はだめだと思った。劇中の炒飯はそれほど美味くなかったんだけど(笑い)」


 旧知のスタッフが「浩市さんの作った炒飯は美味しい」と言うと、表情を緩めて“佐藤浩市の炒飯”を明かしてくれた。


「コロッケとかメンチカツとか、夕べの残りを入れて、味付けもソース味とかいろいろ。酒のつまみも冷蔵庫のありもので作りますが、その時々に自分の流行がある。以前は山わさび、今はアミエビで、何にでも使う(笑い)。坊主がちっちゃい頃は簡単なものを作ってやったけど、父の味ってほど大層なものじゃない。芝居と一緒で得意分野はないです」


 ニヤリとはぐらかしつつ、その優しい眼差しに男親としての深い愛を滲ませた。


●さとう・こういち/1960年生まれ、東京都出身。1981年に『青春の門』で映画デビューを果たし、第24回ブルーリボン賞新人賞受賞。映画、ドラマ、CMと幅広く活躍。『忠臣蔵外伝四谷怪談』(1994年)、『64-ロクヨン-前編』(2016年)で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞、『ホワイトアウト』(2000年)、『壬生義士伝』(2003年)で同最優秀助演男優賞を受賞。9月21日(金)夜9時〜、テレビ東京開局55周年特別企画ドラマスペシャル『Aではない君と』(薬丸岳原作)で犯罪加害者の父という難役を演じる。現在、2019年公開予定の映画『ザ・ファブル』『記憶にございません!』を撮影中。


■撮影/野村誠一 ■取材・文/渡部美也


※週刊ポスト2018年9月14日号

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