有働アナの自虐発言はハラスメント世代にとって複雑?

9月7日(金)7時0分 NEWSポストセブン

『NEWS ZERO』の会見に白いスーツで挑んだ有働アナ

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 作家の甘糟りり子氏が、現代の「ハラスメント社会」について考察する。今回は、『NEWS ZERO』(日本テレビ系)のメインキャスターを務めることになった有働由美子アナの発言について。


 * * *

「若いアナ、キラキラした人たちと置屋の女将みたいな感じですが…」


 10月からメインキャスターを務めるニュース番組の製作会見で、有働由美子さんは共演する日本テレビの若いアナウンサーと自分を比べてそう語ったという。そのニュースを読んだ時、なんというか冷たくて柔らかいもので頬を叩かれた気がした。あぁ…、と思った。


 ダメでしょ、これは。でも、わかる、わかりますよ、その気持ち。


 女性の価値は「若さ」と「美しさ」だとなんの疑いもなく思い込んでいる男性への楽な対処法は、わかりやすく「中年女の自虐」を差し出すことだ。そういうばかばかしい価値観を理解している心の広さ、自分はその対象ではないと自覚している謙虚さ、その二つを演じることでその場をやり過ごせるわけ。


 私にも数え切れないほど覚えがある。だってめんどうくさいから。こっちだってそんなばかばかしい価値観にエネルギーを使って抗うほど暇ではない。だからその場限りの自虐でお茶を濁す。そのお茶の濁し方が雑であればあるほど「もののわかったいい女」扱いしてくる人だっているぐらいなのだ。


 有働由美子さんは49歳、私はその5歳上だから同世代とはいい切れないが、見てきた景色はだいたい同じようなものだろう。若い頃は、ただ若い女の子というだけで無意味にちやほやされ、当たり前のようにお酒のお酌を強要され、セクシュアルハラスメントなどという言葉も概念もなかった。


 飲み会はもちろん職場でも、ちょっとしたボディタッチで文句をいえる空気など微塵もなく、男性の中にはコミュニケーションの一つ、ぐらいにとらえている人もいた。そんな世の中で社会人になり、仕事を続けているうちに若い女の子ではなくなった。



 多少のジャンルが違えど私や有働さんが働いているマスコミ業界は、残念ながら、外から見えるほどリベラルなところではない。表面ではそう見せていたとしても、たいていの人が自分の身の回りだけは別の物差しを用意している。そういうところで仕事を頑張っていると、知らない間に楽な対処法が身についてしまうのだ。かつて顔を引きつらせていた女の子も、都合よく自虐的な中年女の仮面をかぶるようになる。


 先ほど、有働さんと5歳年上の私を「同世代といったら失礼かもしれないが」と書こうとした。これも中年女の自虐である。とにもかくにも若い方に価値があるという発想を、柔軟に受け入れている余裕を見せようと見栄を張った。「同世代といったら正確ではないが」と書くべきである。


 そう、同世代といったら正確ではないけれど、有働さんや私たちの世代が、こうした自虐をやめない限り、無邪気な(これ、嫌味ですからね)おじさんたちの意識は変わらない。おじさんと書いたけれど、必ずしも性別が男性とは限らない。似たような思考を持った女性も含めての「おじさん」である。


 注目度の高いニュース番組のメインキャスターを務めようとする人が、同じ仕事をするプロフェッショナルたちを前に「置屋の女将」なんていうのは、やっぱりダメだと思う。職業に序列はない。でも種類はある。お酒のお酌をしたり性的な空気を醸し出すことのプロと、ニュースを伝えるプロは違う。


私たちの世代が仕方なく受け流していった空気が、やっと今、変わろうとしている。女性一人一人の大きな、あるいは小さな勇気が塊となって、世の中の価値観を覆そうとしている時期だ。有働さんには、そういう空気を1ミリも漏らさずに伝えてほしいと期待している。

NEWSポストセブン

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