パワハラまがいの熱血監督や鬼上司が通用しなくなった理由

9月9日(日)7時0分 NEWSポストセブン

リーダーが熱くなればなるほどフォロワーは冷めてしまうもの

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 日大アメフト部をはじめ、同じく日大のチアリーディング部、女子レスリング、ボクシング、そして女子体操とスポーツの世界で相次いで発覚するパワハラ問題。いずれも旧態依然としたリーダーの熱血指導や自己保身が裏目に出た格好だが、「いまリーダーシップのあり方を根本的に転換しなければならない」と指摘するのは、同志社大学政策学部教授の太田肇氏だ。


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 次々と表沙汰になるスポーツ界のパワハラ問題だが、高校以下の学校における部活や教育現場でも、教師による生徒への体罰が後を絶たない。


 残念なのは、問題を起こしたリーダーの多くが教育や指導に情熱を燃やし、それを生きがいにしてきた人だということである。情熱をもって打ち込んでいるからこそ、選手や生徒が期待どおりの成績を残せなかったり、やる気のない言動をしたりすると許せないのである。


 かつてなら少々の行き過ぎがあっても、熱血指導者として評価されてきたかもしれないが、いまではいくら実績があったとしても許されなくなった。そのことがまだ自覚できていないのだ。


 職場でパワハラを起こすのも、たいていが古いタイプの管理者像、上司像から抜け出せない人たちである。やたら元気で威勢がよく、人前で自分の存在感を見せつけたがり、自分がこれだけがんばっているのだから部下も同じようにがんばるのが当然だと考える。そして、部下がちょっとでも思い通りにならないと相手の人格を否定するような物言いをしたり、怒鳴ったりしてしまう。


◆チーム力を高めるのは、一歩引いたリーダー


 冷静に考えてみたらわかるように、リーダーとフォロワーは立場が違うのだから、リーダーが自分と同じ「熱さ」をフォロワーに求めるのは無理がある。


 しかもリーダーがフォロワーにぶつける情熱と、フォロワーの情熱とは連動しないばかりか、反比例することが多い。リーダーが熱くなるほど、フォロワーは冷めてしまい、「どうぞ勝手にやってください」という気分になる。リーダーはむしろ一歩引いたほうがフォロワーに自発性が生まれ、成果もあがるケースが多い。


 アマチュアスポーツの世界には、それを裏づけるようなエピソードがたくさんある。


 高校野球の強豪、智弁和歌山高校の高嶋仁監督(8月下旬に引退を表明)は、前任の智弁学園高校時代には鬼監督として恐れられ、あまりの厳しさから選手に練習をボイコットされた経験もある。


 それを機にスパルタ式の指導をあらため、春夏合わせて3度の全国優勝という実績を手に入れた。ラグビーの大学選手権で9連覇を達成した帝京大学ラグビー部の岩出雅之監督や、正月恒例の箱根駅伝で4連覇中の青山学院大学陸上競技部の原晋監督も、従来の体育会型指導を選手主体に切り替えてからチーム力が上がり、偉業に結びついたという。


 岩出監督はいう。「上意下達のチームでは、ある程度の実績は残せても、それ以上の実績は出せない」と。



◆熱血が通用する時代は終わった


 スポーツ界にかぎった話ではない。


 精神科医の原田正文氏は、いまの日本では親が子どもを管理し支配する傾向が強くなっていることをデータによって示すとともに、それが思春期に行き詰まる子を増やしているのではないかと指摘している(『完璧主義が子どもをつぶす(ちくま新書)』より)。


 大学で学生を見ていても、中学・高校時代にスパルタ教育を受けてきた学生は、おしなべて知識の量は豊富なものの、自分の頭で考えたり、自分から行動したりすることができない傾向がある。


 仕事になると、それはいっそう深刻な問題だ。


 部下はいつも強制や命令をされていると、最低限の仕事しかしなくなる。しかもIT化やアウトソーシングによって、そのような仕事の大半が消えつつある。残った仕事の多くは自分の頭で考え、自分の意思で行動しなければ成果があがらない性質のものである。実際、世界を席巻しているIT・ソフト系の企業や、優れた人材が殺到している優良企業では、ハラスメントはもちろん、熱血指導やマイクロマネジメント(重箱の隅をつつくような細かい管理)とも無縁だ。


 要するにスポーツや教育においても、仕事でも、求められるレベルが上がったいま、従来のような熱血監督や熱血教師、鬼上司は通用しなくなったのである。それは、「リーダーシップ」のあり方が、いま根本的な転換を迫られていることを意味している。


◆これからのリーダー像とは


 では、これから目指すべきリーダー像とはどのようなものか。


 1つ目のタイプは、プロフェッショナルとしてのリーダーである。彼らは組織行動論、すなわち心理学や行動科学などの専門知識を応用し、フォロワーの潜在能力を引き出すとともに、それを組織力、チーム力に結びつける。スポーツ界、教育界、産業界を問わず、欧米のマネジャーにはこのタイプが多い。


 2つ目のタイプは、つねに選手のため、生徒のため、部下やチームのためを考え、徹底的に尽くすリーダーである。最近はやりの名称を使うと「サーバント・リーダー」ということになる。企業では、顧客に近いところにいる現場の社員が最も偉いというメッセージを込めて、逆ピラミッドの組織図を描く人もいるくらいだ。


 3つ目のタイプは、最低限の役割だけを果たし、あとはフォロワー個々人に、あるいはチームに任せるリーダーである。「委任型リーダー」と呼ぶことができる。フォロワーが自立していて、必要な知識や技術も備えている場合には、このタイプがベストである。


 それぞれタイプは異なるが、共通するのは「フォロワー・ファースト」の姿勢である。自分が目立ちたい人、主役になりたい人はこれからのリーダーには向いていないといえよう。

NEWSポストセブン

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