ヤクザ専門家対談、長引く山口組分裂抗争は今後どうなるか

9月10日(火)7時0分 NEWSポストセブン

六代目山口組の司忍組長(写真/時事通信フォト)

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 日本最大の暴力団、山口組の分裂は、ヤクザ社会にどのような変化をもたらしたのか。六代目山口組から神戸山口組が分裂して4年、その間に神戸山口組から任侠山口組が再分裂し、いまや3つの山口組が並存している。それにより、山口組以外の組織にも大きな地殻変動が起きていた。溝口敦氏(ジャーナリスト)と鈴木智彦氏(フリーライター)のヤクザ取材エキスパート2人が読み解く。


鈴木:しばらく静かだった山口組抗争ですが、8月21日に六代目山口組の中核団体である弘道会系組員が神戸市内の関連施設前で銃撃されたことで再び燃え上がった印象です。組員は身体に3発も被弾しながら、一命は取り留めたようですが。


溝口:神戸山口組の中核団体である山健組の関与が取り沙汰されていますが、山健組の中田浩司組長は兵庫県警の問い合わせに対し、「うちじゃないと思う。どこがやったか分からない」と答えたそうです。暴力団社会では誰もその通りには受け取りませんが。


鈴木:10月には山口組分裂の最大のキーマンと言うべき六代目山口組・高山清司若頭が出所してきます。高山若頭の出身母体である弘道会のトラブルを出所する前に解決しておかないと、高山若頭が出てきたときに今まで何もしなかったのかって処分されるんじゃないかと親・弘道会の直参組織はみなビビっている。それほど高山若頭は恐れられていますから。


溝口:とはいえ高山が出所したとして、それが分裂抗争終結の糸口になるというのは考えにくい。というのは、神戸山口組は高山に対して心底頭に来てるところがあり、すでに「我々は六代目山口組に戻らない」ということを組織の決定事項として発表している。では、任侠山口組はどうか。任侠は一時「六代目山口組が構造改革するならば戻ってもいい」と言っていたが、それは叶いそうもないためこちらも難しい。


鈴木:かといって六代目山口組が力ずくで再統合に動くというのも考えづらいですよね。


溝口:高山自身、この前警察から事情聴取された際、「神戸山口組とは付き合いの長い入江禎副組長を窓口に話し合う、任侠山口組には使者を送る」と言っていたそうです。だから、当分はこの3つの山口組状態が続くだろうと見ています。


鈴木:本来なら分裂した組織がそのまま存続できるということ自体、ヤクザのセオリーではあり得ないはずなのに、現実として起きてしまっている。ただ、このままだと3つともじわじわと衰退していくしかないでしょう。


溝口:そうでしょうね。


鈴木:ヤクザは抗争をして初めてシノギができる。「腹をくくったらこれだけ殺し合うのか」「こいつら残酷だな」という恐怖感を世間に振りまいて、初めて暴力団は成立します。


溝口:飲食店に「みかじめ払えよ」というときでも、抗争をしていないと迫力がない。抗争に勝てば金が湧くっていうのは、そういうこと。暴力団の迫力は喧嘩に勝ってはじめて得られる。


鈴木:抗争というのは、ボクシングみたいに、みんなが見ているリングで殴り合いをしているようなもの。分裂して対立構造が可視化している、つまり、すでにリングに上がっているのに殴り合いを始めないんだから、だんだんナメられるようになる。他団体にも「もう山口組の後見は要りません」というところが増えています。今まで「山口組がうちの組織の後ろ盾です」と言っていたのが、西側の組織は「いや、もういいです」と言い始めている。


溝口:山口組が分裂したことによって、京都の会津小鉄会や関東の松葉会のように他団体も分裂してしまいましたよね。


鈴木:いずれももともと後見に六代目山口組を置いていて、その威光が崩れたことでガタガタして分裂してしまったわけですよね。


●みぞぐち・あつし/1942年、東京生まれ。早稲田大学政経学部卒業。ノンフィクション作家。『食肉の帝王』で2004年に講談社ノンフィクション賞を受賞。主な著書に『暴力団』『山口組三国志 織田絆誠という男』『さらば! サラリーマン』など。


●すずき・ともひこ/1966年、北海道生まれ。日本大学芸術学部写真学科除籍。ヤクザ専門誌『実話時代』編集部に入社。『実話時代BULL』編集長を務めた後、フリーに。主な著書に『潜入ルポ ヤクザの修羅場』『ヤクザと原発』『サカナとヤクザ』など。


※週刊ポスト2019年9月20・27日号

NEWSポストセブン

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