山口組抗争、共存関係の警察としては分裂したままの方がいい

9月11日(水)16時0分 NEWSポストセブン

指定暴力団山口組分裂抗争についての緊急会議。2016年(写真/時事通信フォト)

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 六代目山口組から神戸山口組が分裂して4年、その間に神戸山口組から任侠山口組が再分裂し、いまや3つの山口組が並存している。日本最大の暴力団、山口組の分裂は、ヤクザ社会にどのような変化をもたらしたのか。溝口敦氏(ジャーナリスト)と鈴木智彦氏(フリーライター)のヤクザ取材エキスパート2人が読み解く。


溝口:山口組が分裂したことによって、京都の会津小鉄会や関東の松葉会のように他団体も分裂してしまいましたよね。


鈴木:いずれももともと後見に六代目山口組を置いていて、その威光が崩れたことでガタガタして分裂してしまったわけですよね。


溝口:山口組が弱体化していくということは、ヤクザ全体が地盤沈下していくということです。山口組が日本の暴力団の代表なんですよ。中国のマフィアに聞いても、一番名が通ってるのは山口組ですし。


鈴木:ヤクザの2人に1人は山口組。頭抜けすぎた一強ですからね。それゆえに、山口組が割れたときに仲裁できる団体がなくなってしまったということでもある。


溝口:戦前は、警察署の署長が仲裁に入ってようやくまとまったという話もあるんですよ。今、警察が暴力団の仲裁に動くなんてありえませんけどね。


鈴木:警察は、暴対法や暴排条例で暴力団が弱体化してきたから、最近、「四課(暴力団を取り締まる組織犯罪対策部のこと)とか要らないんじゃないか」と言われている。弱体化しているのは警察のおかげではあるんですが、たまには抗争をしてくれないと存在価値がなくなってしまうし、予算もつかないしで困るんですよね。だから、警察としては分裂したままのほうが都合がいい。


溝口:それは確かだね。ときどき暴力団が事件を起こして危機感を煽ってくれないと困る。暴力団と警察は共存関係ですから。


鈴木:暴力団がいなくなって一番困るのはマル暴ですからね(笑い)。しかし今は暴力団が抗争で人を殺したら無期懲役が原則。事実上の終身刑ですから、警察の思惑通りに抗争するヤクザはなかなかいない。


溝口:それに、今は殺しても出頭しないケースが増えています。任侠山口組の織田絆誠組長のボディガードを射殺した山健組系のヒットマンのように、逃げ続けているのが多いわけです。今回の弘道会を襲ったヒットマンもそうでしょう(※8月21日に六代目山口組の中核団体である弘道会系組員が神戸市内の関連施設前で銃撃された)。もしかしたら、彼らはもう一度襲撃に使われるかもしれない。ヒットマンの“使い回し”です。


鈴木:昔は親分のために自分で考えて勝手に殺しに行く、っていうのがヤクザのやり方だったんですけど、今の若い衆に聞くと、チームを組んでプロジェクトにしないと動けないそうです。この人を殺します、あなたが実行犯です、サポートはこの人です、お金はコレ、殺した後はこう逃げましょうって全部プロジェクトとして設定しないと動けないと。“指示待ち組員”ですよ(笑い)。


溝口:しかしそれだと組織的犯行であることがバレやすいから、ますます実行できないでしょう。


鈴木:そして抗争が難しいとなれば、これまでのように大きい暴力団、マンモス組織が上に君臨するという暴力団社会の在り方は成り立たなくなりますね。


●みぞぐち・あつし/1942年、東京生まれ。早稲田大学政経学部卒業。ノンフィクション作家。『食肉の帝王』で2004年に講談社ノンフィクション賞を受賞。主な著書に『暴力団』『山口組三国志 織田絆誠という男』『さらば! サラリーマン』など。


●すずき・ともひこ/1966年、北海道生まれ。日本大学芸術学部写真学科除籍。ヤクザ専門誌『実話時代』編集部に入社。『実話時代BULL』編集長を務めた後、フリーに。主な著書に『潜入ルポ ヤクザの修羅場』『ヤクザと原発』『サカナとヤクザ』など。


※週刊ポスト2019年9月20・27日号

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