ベイスターズファンが今噛みしめる「耐えて勝つ」ということ

9月12日(木)11時0分 文春オンライン

 ラミレスは監督就任時、こう語っていた。


「やはり負けが込んでくると『ああ、やっぱりか』という空気になってしまう。それは選手もファンも、同じです。僕が現役でチームにいた2012年、2013年も負けが込むと、どうしてもチームの雰囲気がネガティブになっていた。監督になった今、上に行くために必要なものはその空気をどうにかして変えることだと思っています」(webSportiva 2016年1月1日付記事より)


 “ああ、やっぱりか”


 このチームを応援すればするほど、僕らはそんな諦めの良さをいつの間にか身につけてしまう。それは今年だって何度も頭をよぎったこと。春先の大型連敗、8月の5連敗、9月頭にまた5連敗。“やっぱりまだ優勝できるようなチームじゃないよね”。その度にそうやって物分かりのいい振りをして、何とか自分を納得させようとする。


 さらには、今永が丸に投げた最高のスラットに球審が手を挙げてくれたら初戦は獲れたはずなのに、というタラレバの気持ち。絶対に勝ちたかったエース登板の試合で負けた辛さと絶望感を、そうやって判定に転嫁することで鎮めようとする。


 でも、今年のベイスターズは僕らが諦めかけた途端に「まだ終わっていないよ」と言わんばかりの戦いを見せてくれる。昨日(11日)の試合、ここ最近ずっと淡白だった打線が嘘のように繋がって14安打10得点。なかなかヒットの出ない大和が果敢に2塁を狙えば、乙坂はセーフティーバントを仕掛け、倉本はヘッドスライディングで内野安打をもぎ取った。さらに復帰初戦の伊藤光は技ありのレフト線ギリギリのツーベース。極めつけはソトのスコアボード破壊弾に得意の「アッチ向いてホイ打法」を含む3本塁打と、梶谷の天才的バット使いの値千金ホームラン。2ケタ安打は8月29日、2ケタ得点に至っては実に8月9日以来。久しぶりに気持ちのいい勝ち方だ。



9月11日の巨人戦で3本塁打を放ったソト(C)共同通信社


 ずっとしんどい戦いをしていると思う。8月は打率.238(リーグ5位)で防御率は4.61(リーグ最下位)。得失点差は−17まで達した。それでも14勝13敗、どうにかこうにか勝ち越したのだ。9月のチーム打率に至っては.204、得点圏打率.206(いずれも10日まで)。数字を見ればガタガタだけど、何とか2位に踏みとどまっているのは昨日のようにここ一番の試合を落とさないこと、勝っても負けても次に繋がる試合をしようとしていることに尽きるのではないか。



古葉竹識の座右の銘「耐えて勝つ」を思い出す



 最近のベイスターズの戦いを見ていると「耐えて勝つ」というワードが自然と頭に浮かんでくる。1987〜89年に監督を務めた古葉竹識の座右の銘であり、ファンからサインを求められるといつも色紙に書いていたというこの言葉。当時リリースされた応援歌『古葉、大洋よ覇者となれ』(唄・大石吾郎)にも“男は耐えて、勝つことを ゲームの度に示すのさ”と歌詞があるほどだが、正直あの頃のホエールズファンにはあまり響く言葉ではなかった。


 “大洋はカープとは違うしね”


 “それよりスーパーカートリオ復活しないかな”


 “また田代がレギュラーで出てくれないかな”


 時に豪快な勝ち方をするが負ける時はあっさり淡白。チームもファンも諦めの早いことこの上なし。耐えて勝つって言われても大洋じゃ無理じゃね? 笛吹けど踊らず。古葉イズムはほとんど浸透せずチームはあえなく崩壊し、むしろ後任の須藤監督時代の方が泥にまみれたしぶとい野球を見せていた。


 しかしあれから30年余りの時を経た2019年、今ほど一試合一試合「耐えて勝つ」ことの大切さを噛みしめられるチーム状況もない。一昨日(10日)の巨人戦だってそうだ。頼みの今永とエスコバーが打たれて1−4の劣勢。9回裏2アウト。このまま負けたら目も当てられないって時に飛び出した柴田のホームラン。負けるにしてもあっさり終わらない。そんな柴田の粘りの姿勢、そして連日連夜のリリーフ陣の奮闘ぶりと昨晩の猛攻は、実はひと続きにあると思っている。


 古葉監督は当時、こんな発言を残している。


「チームとしての意思を、いかに徹底させるかが、僕らの仕事です。中途半端な気持ちでやっていては、それなりの野球になってしまう」(月刊ホエールズ1987年2月号より)


 戦力は明らかに劣っている、故障者も多い、揃いもそろって調子を落としている。キツい状況はあれども「自分たちは絶対に勝つんだ」という姿勢。色々と言われるラミレス監督だけど、名将・古葉竹識がいみじくも語り、それでも成しえなかった「チームの意思を徹底させる」そして「ポジティブな空気を作る」ことについては、この4年間心血を注いできたのだろう。それは今の順位とゲーム差に表れているし、特に夏場以降のベイスターズはまさしく耐えて耐えて、耐え抜いて勝ちを掴み取っている。


 残り11試合、選手たちはもう気持ちで戦う段階だろう。伊藤光が戻ってきた。奇跡的な回復ぶりを見せた宮崎も今日一軍に復帰するという。そして「2位でも3位でもなく、優勝を取りにいきましょう!!」(9月12日付SANSPO.COMより)。昨日そう檄を飛ばしたキャプテン・筒香の、98年10月6日の佐伯ばりのガッツポーズをもう一度。巨人と4ゲーム差、直接対決は残り4。最後まで、諦めない。




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(黒田 創)

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