MGC3位・大迫傑が語った“敗因”「前半の気持ちの余裕が最後の5キロに出る」

9月16日(月)11時0分 文春オンライン

 東京オリンピック代表内定の切符は、わずか5秒の差で届かなかった。しかし大迫傑は、どこかすっきりとした表情でメディアの待つミックスゾーン(取材エリア)へ姿を現した。


「トレーニングはしっかりとできていたので、自信はありましたけど、最後は正直なところ力負けです。それを真摯に受け止めて、今後しっかりとやっていきたい」



スタート直前の大迫(右端) ©杉山拓也/文藝春秋


 どれほど落ち込んでいるのだろう。そんな心配をよそに大迫は、淡々と、ときに記者の目を正面から見つめながら、自らの敗因を語った。


「設楽選手が(先頭に)出るのは予想していましたし、もう1人選手が続くようならついていこうと思っていました。でも、設楽選手だけだったので、ついてくことはしませんでした。結果的に追いつきましたし、そこは想定内でしたが、それでも前半はちょっと心の中で焦りがあったんだと今は思っています。ラスト1000mぐらいから仕掛けられたらいいなと考えていんですけど、中村選手がスパートをかけた時はもういっぱいいっぱいでした。もう少しあそこでついて行ければよかったんですが、前半の気持ちの余裕が最後の5kmに出るのがマラソンだなと改めて感じました」



設楽悠太の飛び出しに大本命の大迫は……


 スタート前、四強と言われていたのは、日本記録保持者の大迫傑(NIKE)、前日本記録保持者の設楽悠太(ホンダ)、アジア大会金メダリストの井上大仁(MHPS)、福岡国際マラソンで14年ぶりの日本人優勝を果たした服部勇馬(トヨタ自動車)。その大本命と目されていたのが大迫だった。


 スタート直後、設楽が飛び出し、一時は後続に2分以上の差をつける独走を見せたが、35km付近から失速。37km過ぎで2位集団に捉えられると、記者たちの間からは大きなどよめきが起きた。その後は集団を引っ張る選手が目まぐるしく変わり、中村匠吾(富士通)、服部、大迫による三つ巴の戦いになると、息をもつかさぬ展開に、記者たちの誰もがモニターに釘付けになった——。



大迫が初めて悩みを明かしたあの日


 今年3月3日に行われた東京マラソン。異常な寒さに襲われたレースで、大迫は30km過ぎで棄権を選択した。その3カ月後の6月、自身初の著書である 「走って、悩んで、見つけたこと」 の打ち合わせの席で、彼はずっと棄権をしたことは自分の弱さではないかと悩んでいたことを明かしたのだ。


「あれは合理的な判断だったのか、それとも僕が弱かったのか、ついていく力がなかったのではないかと悩んだんです。でもコーチとも話をして、色々なことがあったなかで妥協なく練習を積めたことや、スタートラインに立つまでの努力をしてきたことを自覚して、頑張ったんだということを認めざるを得なかったんです」



 これまで確固たる信念や思いを語っていた彼が、初めて見せた弱さだった。それと同時に「今はしっかりと練習ができて、いい状態で走れています。結局ハードな練習を積み重ねることでしか、自信は戻ってこないんです」と晴れやかな顔で語っていた。


 東京マラソンから6カ月。悩んだ時期を乗り越え、自らを追いこみ、ハードな練習を積み重ねてきたであろうことは、レース前に彫刻のように鍛え上げられた体を見て感じていた。実際、レースでも大迫は好走を見せた。ラスト勝負なら勝てる、そう思う人も少なくなかった。だがわずかに及ばなかった。





「誰に勝ちたいという気持ちはありません」


 以前、大迫はこんな風に語っていた。


「もちろん走るからには1番になりたい。だけど誰に勝ちたいという気持ちはありません。もしレースで負けたとしても、僕は100%の力で走ったけれど、その時点での1位と2位の選手の100 %が自分より上だったということだけ。僕と同じように他の選手もすごく頑張ったのは想像できますし、そう考えると1位と2位の選手はすごいなっていう思いだけです。マラソンは自分との戦いで、僕は僕が出せる100%の力を出して走るだけです」


 3位ではあったものの、MGCは大迫にとっては悔いのない走りができたのではないか。だからこそ、すでに気持ちを切り替えているのではないか。そう感じさせる姿だった。



待つのか、また自己ベストを狙うのか


 同じく四強と称された設楽と井上は呆然とした様子でミックスゾーンに現れ、言葉少なく去っていった。大迫だって同じような状態でもおかしくはなかったのだ。


 だが、日本代表の残りひと枠をかけたファイナルチャレンジへの挑戦を問われると、「コーチと相談して待つしかないのか、また自己ベストを狙っていくかはしっかりと考えていきたいと思っています。今回の大会でプレッシャーがなかったといえば嘘ですが、それをうまく力に変えていく方向で頑張るしかないと思っています」と語り、その目はすでに次のステージへと向けられていた。



 明暗が分かれた一発勝負のMGC。試合後「悔しい思いは常に僕を強くしてくれます」とツイートした大迫。次のレースでどんな強さを見せてくれるのかが待ち遠しい。




(林田 順子)

文春オンライン

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